2019年2月12日 (火)

松竹製作「二月大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

<2019年2月11日(月)夜>

息子の初陣を案じてあえて陣中に駆けつけ主人に様子を尋ねる妻だがそこには敵方の武将の母も現れて仇討ちを狙う「熊谷陣屋」、親の仇を討つために踊りを披露する名目で屋敷に入った兄弟が踊る「當年祝春駒」、派手好みで旦那もいれば情夫もいる芸者に入れ込んで貢いだ行商人だが袖にされ「名月八幡祭」。

幕見席の通しで観劇。熊谷陣屋は、チラシのあら筋は読んで臨んだけど、まったく不覚なことにしゃべっている台詞の1割も言葉として理解できなくて、あら筋の内容すら観て取れなかった。芝居観すぎて疲れていたのは確かだけど、あまりのわからなさにひょっとして病気かと自分でも驚いた。有名な古典だから筋も台詞も知っている人は多いだろうけど、純粋に日本語として聞き取れている人はどのくらいいたのか。

代わりに楽しんだのが名月八幡祭。わかりやすい筋立てに、歌舞伎には珍しく照明と効果音を使ったクライマックス。堅気の新助を演じる松緑の明晰な台詞と最後の笑い声、それをかばう歌六の大人振り、芸者の美代吉を演じる玉三郎の色っぽさ(相手に気を持たせるうちわの使い方が素晴らしい)、そして情夫という名のヒモ男が最高に似合う仁左衛門。見どころが多い。新歌舞伎っていいものだ。

當年祝春駒、難しいことを考えずに単に音と動きのきれいなことを追えばそれでもよいのかと思えたら、楽しめた。

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渡辺源四郎商店シェアハウス「過ぎたるは、なお」こまばアゴラ劇場(ネタばれあり)

<2019年2月11日(月)朝>

青森県の、とある施設。かつて2人の息子を育てた母が入居している。入居している人たちは、仲よく過ごす人もあり、部屋で引きこもる人たちもあり。そこに新しい入居者がやってくる。

実にあらすじの書きにくい話だけど、重い話を別の話で包んで、1時間半ないと思えない密度。さすが長年やっているだけのことはある仕上がり。

実は早くになくなった母の代わりに導入されたロボットで、プルトニウムを燃料に半永久的に動くはずだったのに、エネルギーに欠陥が見つかり処分されるところを施設に入り、という背景はそのまま原発事故の敷衍。それを、少しずつひっかかる情報を提示しながら引張り込む。そこに、他のロボットが待つ恋人の話とか、育てた息子達が思惑をもって面会にやってきてからのいきさつを混ぜて、人間とロボットの「人間らしさ」の話に一気に振る幅の広さ。さらに、災害の話とか、ロボットの扱われ方の話とか、ガリガリ君の歴史(笑)とか、情報をちら見せして世界の奥行きを広げる手腕。青森は処理場があるだけにより実感のある話題だろうけど、重い話への重い抗議も間接的に示して芝居らしさも失わないバランス感覚は、さすが長年やっているだけのことはある。

終演後の話だと、畑澤聖悟と工藤千夏が交互に書いて、相手が書いた部分も勝手に書き直して、という手法で書かれたとのこと。どこがどちらの書いたものなのか気になる。役者はひとりくらい青年団出身の人が混ざっていると思ったけど、全員地元の人らしい。大千秋楽だったとはいえ至近距離に耐える演技。凝っているようでいてシンプルな舞台を飽きさせずに使って、まったく文句なし。もっと早くから観ておけばよかった。

遠征の都合で連休のときにしか上演できないとはいえ、東京では追加含めて4日間6ステージしか上演しないのだから、贅沢な話。ただし次回はGWを使ってスズナリで6日間8ステージ。

<2019年2月13日(水)>

感想を清書。

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タカハ劇団「僕らの力で世界があと何回救えたか」下北沢小劇場B1

<2019年2月10日(日)夜>

かつて漁業が主要産業だった町。誘致合戦に勝抜いて素粒子研究のための研究所が稼働を始めるのを記念して、科学イベントが開催される。そこにトークイベントの参加兼取材で作家がやってくる。取材先の学校では、科学らしい企画を頼まれた無線部OBたちが企画に頭を悩ませていた。が、そこで無線に、ラジオのジングルが聞こえてくる。かつて無線部のメンバーが自主的に流していたもので、それを知っている人間は当時の無線部のメンバー以外にはありえない。そこで話は、唯一この場にいない、かつてのメンバーについての話となる。

詳細後日。

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新国立劇場演劇研修所「るつぼ」@新国立劇場小劇場

<2019年2月10日(日)昼>

1962年、アメリカの片田舎であるセイラム。娘や姪たちが夜の森で踊っているのを牧師が見つけたところ、娘が寝込む。姪がかつての勤め先の主人と不倫していたが振られて解雇されたのを恨んで、近所の少女たちを集めてその妻を呪い殺すための儀式を行なっていたのだが、驚いて寝込んだままの娘のことを魔女だという噂が広がる。姪はそれを隠すために、悪魔に取りつかれたと嘘の告発を行なうが、それを信じた村人たちの誤解を逆手にとって、何でもない村人たちを次々と魔女扱いで告発していく。

超重量級の脚本を、鑑賞に耐える水準を超えて脚本に対抗しうるところまで仕上げた力作。主要な役を演じた12期生も、ヘルプの修了生も、見どころ多い。

これを書いている時点であと平日2回、3時間20分だけど、A席でも3240円だし、観られるものなら観てほしい。

詳細後日。

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劇団東京乾電池「授業」アトリエ乾電池

<2019年2月9日(土)夜>

博士号を取るために教授の自宅に個人授業を受けにきた女性。知性高いと思っていた女性に授業を始めたら、頓珍漢な答えが返ってくる。それを受けて教授は奮闘していくが。

不条理劇と言われているけど、笑えるところは笑いをふんだんにちりばめて、こうありたいと思わせる演出。腕章をつけるところまで見せたのは演出なのか脚本なのか、そこまでやるなら後からの自戒を込めた風刺劇なことは明確だけど、不条理劇のくくりに入ってしまうのか。

狭い空間いっぱいに満ち溢れる、映像で観たことがなければ怪優と評したくなる柄本明の怪演ぶり。でもこの怪しさが本職だろうと思わせる。所々にメタなアドリブも入って、あちこちで「学芸会でいい」と言っていたのがどういうものか、少しだけわかった。いい年だろうにあのテンション、と思ったら最後に息切れしたのはご愛嬌。

終演後のあいさつでも言っていたから知っていると思うけど、1時間強の芝居でも腰が痛くなった。座席のクッションはぜひ考えてほしい。あと下北沢で駅の工事が行なわれて、アトリエまでの地図画像が役に立たなかった。踏切がなくなったから、本多劇場側から元踏切を超えて一直線が親切かと。

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2019年2月 6日 (水)

神奈川芸術劇場の2019年度ラインナップがすごい

ステージナタリーから雑に引用しますけど、芝居メインで気になるところを挙げただけでこれ。

2019年度(2019年4月~2020年3月)主催公演
・「春のめざめ」演出:白井晃
・「恐るべき子供たち」演出:白井晃
・KAAT×地点「シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!」演出:三浦基
・「ゴドーを待ちながら」演出:多田淳之介
・「ビビを見た!」上演台本・演出:松井周
・新作ミュージカル「怪人と探偵」演出:白井晃
・「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~(仮)」作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
・KAAT+KUNIO「グリークス」演出・美術:杉原邦生
・「常陸坊海尊」演出:長塚圭史
・「アルトゥロ・ウイの興隆」演出:白井晃

2018年度 提携公演ラインナップ
・地点「三人姉妹」
・快快「新作」
・庭劇団ペニノ「笑顔の砦」
・DULL-COLORED POP「マクベス(仮)」
・別冊「根本宗子」「そのバレリーナの公演はあの子のものじゃないのです。(English ver.)」+新作公演
・カンパニー・デラシネラ「どこまでも世界(仮)」

そのほか主催公演
・劇団四季ミュージカル「パリのアメリカ人」

今が働き盛りの小劇場出身演出家を呼んできて、ラインナップは新作半分名作半分で、自分も演出家としてフル稼働、という白井晃の芸術監督本気ぶりが見えます。売れっ子は2-3年先まで予定が埋まっているから、芸術監督が本領を発揮できるのは就任して2-3年後からということですね。

今まで見逃していたものもあるので上に挙げたものは全部観たいですけど、中でも渋くて上演機会の少ない秋元松代を長塚圭史に当てた「常陸坊海尊」と、大長編すぎて上演機会の少ない「グリークス」の2本は、公立劇場だからできる意欲的な企画の面もあります。わけわからん系の話が趣味の白井晃がこんな商業的興味をそそる仕立てでラインナップを並べてきたのが本当に意外で、失礼ですが見直しました。これでクビになっても思い残すことはないだろうという1年です。

なお、演出家の顔ぶれを見たときに一瞬「青年団?」と思ったことも書いておきます。雑な引用で隠れていますけどDULL-COLORED POPの谷賢一も青年団経験者です。人材があふれすぎだからさっさとユニットを作って独立していくのが最近の青年団ですが、この世代は演出部が黄金時代で、独立のはしりとも言える世代です。なので今好調な演出家を挙げたら入ってしまうのはしょうがない。ただ、それをこれだけ揃えて気にしない白井晃もすごい。

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2019年2月 4日 (月)

東京芸術劇場制作「父」東京芸術劇場シアターイースト

<2019年2月3日(日)昼>

パリに暮らす父と長女。長女が在宅の介護士を手配するも、3人雇って3人とも介護士を追い出してしまい、次女は優しいのにと長女に当てこすりを言う。ところが長女の言うことが毎回違う。どうやら父には認知症の気配があるようだが、父は自分の症状を認めない。

演技がこなれすぎていて、登場人物の名前や室内靴履きなど一部小道具以外は日本の脚本なのではないかと疑われる仕上がり。介護の問題を真正面から扱っているけど、軽い種明かしとしては、認知症の父の視点から見た場面と、長女の立場から見た場面が混在している芝居。大筋はわかっても詳細がどんどんずれて、認知症の人から見えている世界はこうなんだろうなと思わせる展開。

橋爪功の(文字通り)ボケかたに説得力があったけど、今回は追詰められる長女役の若村麻由美がその向こうを張ってさらに素晴らしい出来。脇を固めるメンバーも、相対的に出番は少ないけど手抜き一切無し。ラスト場面の柔らかさが見事だった女優は全然知らなくて、控えめに演じているのに存在感が強くて背も高くて、日本のどこにこんな女優がいたかと壮一帆を調べたら元トップだった。宝塚侮れん。

終演後のロビーで「認知症の父の視点から見た場面と、長女の立場から見た場面が混在している芝居」という点を同伴者に説明している人多数だったので、そこだけ承知して臨めばいろいろ感じるところのある芝居。まもなく介護される人も介護経験者も、年齢や経験を積んだ人ほど観てみては如何。当日券はまだあったけど、会場前方端だと見切れるので注意。大して広い劇場でもないので、選べるなら最後列端のほうがよい。

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2019年1月10日 (木)

2018-2019年冬のインフルエンザはすごいらしい

2年前には気がついただけで日程の一部を中止した公演が3本もあったのですが、この冬のインフルエンザもなかなか手ごわいらしいです。

誰かは不明ですが出演者の体調不良でパラドックス定数「トロンプ・ルイユ」が初日を飛ばしたというTweetを見かけたので記録です。インフルエンザという記載はありませんが、純粋な体調不良かどうなのか気になります。すでに人数が厳しかったか1/12(土)昼以外の公演に振替で対応。払戻の可否は記載がなく不明。なお上演日程を後ろに1日延ばして1/15(火)の夜にも追加公演あり。これは次の公演まで間が空いていたのと提携公演中とのことで柔軟な対応が可能だったか。

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2019年1月 6日 (日)

2018年下半期決算

恒例の年末決算です。

(1)新国立劇場主催「消えていくなら朝」新国立劇場小劇場

(2)DULL-COLORED POP「1961年:夜に昇る太陽」こまばアゴラ劇場

(3)パラドックス定数「5seconds」シアター風姿花伝

(4)キョードー東京企画招聘「コーラスライン」@東急シアターオーブ

(5)パラドックス定数「Nf3Nf6」@シアター風姿花伝

(6)野田地図「贋作 桜の森の満開の下」@東京芸術劇場プレイハウス

(7)松竹製作「秀山祭九月大歌舞伎 河内山」歌舞伎座

(8)遊園地再生事業団「14歳の国」早稲田小劇場どらま館

(9)グループる・ばる「蜜柑とユウウツ」東京芸術劇場シアターイースト

(10)小田尚稔の演劇「聖地巡礼」@RAFT

(11)松竹製作「俊寛」歌舞伎座

(12)シス・カンパニー企画製作「出口なし」新国立劇場小劇場

(13)パラドックス定数「蛇と天秤」シアター風姿花伝

(14)東京芸術劇場主催「ゲゲゲの先生へ」東京芸術劇場プレイハウス

(15)新国立劇場主催「誤解」新国立劇場小劇場

(16)松竹製作「助六曲輪初花桜」歌舞伎座

(17)KERA・MAP「修道女たち」下北沢本多劇場

(18)青年団「ソウル市民」@こまばアゴラ劇場

(19)青年団「ソウル市民1919」@こまばアゴラ劇場

(20)神奈川芸術劇場プロデュース「セールスマンの死」神奈川芸術劇場ホール

(21)M&Oplaysプロデュース「ロミオとジュリエット」下北沢本多劇場

(22)新国立劇場主催「スカイライト」@新国立劇場小劇場

(23)Bunkamura企画製作「民衆の敵」@Bunkamuraシアターコクーン

(24)シアター風姿花伝企画製作「女中たち」シアター風姿花伝

(25)月刊「根本宗子」「愛犬ポリーの死、そして家族の話」下北沢本多劇場

(26)カタルシツ演芸会「CO.JP」スーパーデラックス

以上26本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は157780円
  • 1本当たりの単価は6068円

となりました。上半期の26本とあわせると

  • チケット総額は316000円
  • 1本あたりの単価は6077円

です。そんなつもりはなかったのにまさかの2年連続50本越え達成です。ここまで本数が増えたのは、長く芝居を観ているなら有名な芝居は一度くらい観ておきたいという発想になったせいで、その分再演ものが多くなりました。チケット単価はここ数年の中では抑えたほうですが、それにしてもこれだけ観ると総額が馬鹿にならず、それ以上に交通費が嵩むのが財布には痛いです。なお数を観すぎたためか、夏以降に断捨離を高い優先度で進めていたためか、上に並べた26本が半年以内に観た芝居という実感が持てていません。3年前くらいの感触です。

下半期の収穫は、劇場提携公演中の(3)(13)、今もって古さを感じさせなかった(8)、繰返し上演される海外古典戯曲の(15)(20)(23)、青年団の代表作である(18)(19)など再演ものが多い中、気合の入った新作で気を吐いた(17)と、笑わされた(26)になります。この中で1本選ぶなら(17)になります。できれば土曜日の昼間で余裕のあるときに観たかった1本です。

通年では、下半期の(17)、上半期に口コミプッシュを出した青年団の「日本文学盛衰史」などを差置いて、パルコ/兵庫県立芸術文化センター共同製作の「テロ」を今年の1本に選びます。セットらしいセットもなく台詞だけで緊迫感がここまで作れると示した仕上がり、多様化した現代の問題をタイムリーに取上げた内容、観客投票で変わる結末など、本来なら口コミプッシュを出すべきだった1本です。その場で判断できなかった自分の不明を恥じます。

そのほか、勝手に一部部門賞になります。

役者部門。主演男優は「アンチゴーヌ」で新王クレオンを演じた生瀬勝久。圧巻の演技で、これ1本で拍手に値します。年明け実質2本目にこれを観たので、今年の観劇ではこれを越える男優がいないかと探すのが裏テーマでしたが、見つかりませんでした。主演女優は2人。カオルノグチ現代演技を立上げて「演劇部のキャリー」で絵に描いたような小劇場2人芝居で楽しませてくれた野口かおると、(15)で圧巻の絶望を演じてのけた小島聖の2人。まったく間逆のベクトルですがあのテンションには甲乙付けがたいです。

助演は挙げたらきりがないのでばっさり減らします。男優は「秘密の花園」と(21)で不思議な演技を見せてその理由が解明できない田口トモロヲと、(15)で大ベテランながらほとんど台詞のない役を演じてしかも存在感抜群だった小林勝也。女優は、ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」で支援センター職員が見事だったチャン・リーメイと、(18)(19)で中心人物を演じて青年団内での出演機会も上昇中の荻野友里。出演した芝居が自分の好みに近かったかどうかも加味してしまいましたが、挙げたらきりがないので、この4人とします。

脚本演出部門では、上半期に劇団公演で「ヒッキー・ソトニデテミターノ」再演と、さいたまゴールドシアターで「ワレワレのモロモロ」新作を作った岩井秀人。再演多めの人ですが、観たら外れがありません。下半期の「て」「夫婦」の再演を見逃したのが悔やまれます。「ヒッキー・ソトニデテミターノ」の当日パンフのコメントも記憶しておきたい見事なものでした。

スタッフ部門は、(15)でシンプルな舞台美術に大きな幕を使って美しかった乘峯雅寛と、(17)のA4仮チラシが単体でも芝居との関連でもきっちりはまっていた雨堤千砂子(だったはず。すいません、仕舞ったチラシが見つからないので後で確認します、間違っていたらごめんなさい)。この2人を挙げます。

企画は、1年で7本上演という上演計画を立てて今なお上演中のパラドックス定数とシアター風姿花伝。もともと劇場から申し出た提携案なので計画に融通はきくとしても、これを通した劇場の太っ腹もすごい。1本あたりの上演期間が短いのが難です。ここまで5本上演されたうちの4本を観て、事件に絡めた脚本を書く野木萌葱の才能に改めて気がつきました。2019年には新国立劇場で小川絵梨子演出の新作「骨と十字架」が予定されています。

なおその新国立劇場では2019年冬には月刊「根本宗子」が新国立劇場の中劇場に進出することが折込チラシで発表されており、劇団公演か共催かわかりませんが、劇場側が攻めたラインナップを並べようとしている気配が伺えます。目を転じて民間では、三谷幸喜が今さら感ですが6月に歌舞伎座初登場です。新橋演舞場でワンピースを上演するなど、あの手この手でジリ貧に陥らないように伝統芸能もいろいろな企画を立てています。

趣味で選んで偏っているとはいえ、2年で100本も観ると何となくイメージが湧くのですが、いい上演企画には大まかに2種類あります。仮に「現代の風潮を問う芝居」と「徹底的にエンターテイメントの芝居」と名づけます。昔だともう少し文学っぽい芝居も成りたったと思いますが、今は2種類の少なくともどちらかの要素を混ぜないと魅かれません。何故かといえば日本の生活も社会もここ10年で大変になったからです。観客側から見れば余裕はどんどんなくなっています。単によくできただけの芝居に大枚はたくような余裕はなく、ましてや外れ芝居を見守るような余裕もないので、観るからにはその芝居を観てよかったと実感できるような芝居が求められています。大変になった人たちの悩みをすくい取って励ますか、大変になった人たちを楽しませて明日への活力を与えられるか。大げさに言えば、2種類のどちらの要素も含まれない芝居は自己満足と言われても仕方がない世相になっています。

下半期で例を挙げると、かつての不倫相手との一夜の話がメインでありつつバックグラウンドに社会問題を織込んで深みを出した脚本が(22)で、完全エンターテイメントだったのが(26)で、読んだ批評では吉右衛門の演技が絶賛一色でしたが上演企画そのものには継承して育てた芸の披露以上の意味があったのか疑わしいのが(11)です。歌舞伎にとって芸の継承は大げさに言えば生命線ですが、それが今時の歌舞伎マニアでない観客に訴えるところがないのも事実です。これを解決して作り手と観客とをつなげるのは演出家や芸術監督の仕事で、だからこそ古典と古典の間に三谷幸喜を呼んで活性化をはかることになるわけです。なお、現代の風潮をエンターテイメント風に問うのが今時の理想で、だいぶシリアス路線でしたけど新作では(17)が代表です。この話題は独立したエントリーを書きたかったけど間に合いませんでした。できれば改めて書きたいです。

他にも書きたくて書けなかったエントリーはあるのですが、その代わりに「2018年の東京台風直撃の対応の記録」は、長くて読みづらい文章なのが難であるものの、このブログらしいまとめでした。観客として、公演中止の対応にもいろいろあることがわかって勉強になりました。願わくは、少しでも観客に優しい対応が芝居業界で標準化されますように。

2019年は本数が増えるか減るかわかりませんが、引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2018年12月30日 (日)

2019年1月2月のメモ

1月の前半がスカスカで、見落としていないか後で再確認。ニッパチ(2月8月は興行不振の月と言われている)にチャレンジ企画を突っ込んだ結果、1月が手薄になったと読めなくもない。

・松竹製作「初春歌舞伎公演」2019/01/03-01/27@新橋演舞場:昼の部に「幡随長兵衛」、夜の部にこの前観た「俊寛」はともかく「鳴神」と「鏡獅子」で、一度観ておきたい演目が並んで迷う

・パラドックス定数「トロンプ・ルイユ」2019/01/09-01/14@シアター風姿花伝:劇場提携連続公演の6本目

・Bunkamura企画製作「罪と罰」2019/01/09-02/01@Bunkamuraシアターコクーン:野田秀樹の贋作は観たけど、これも新しく翻案したとあるし、どんなもんだか

・こまつ座「どうぶつ会議」2019/01/24-02/03@新国立劇場小劇場:エーリッヒ・ケストナーの児童小説を井上ひさしが舞台化したものを、半世紀ぶりで再演とか

・KAAT×まつもと市民芸術館共同プロデュース「マン イスト マン」2019/01/26-02/03@神奈川芸術劇場大スタジオ:ブレヒトを串田和美演出で、安蘭けいと再びタッグ

・中島みゆき夜会「リトル・トーキョー」2019/01/30-02/27@赤坂ACTシアター:とっくに前売完売だけど、また観に行くかどうするか

・東京芸術劇場制作「父」2019/02/02-02/24@東京芸術劇場シアターイースト:面白かったです

・松竹製作「二月大歌舞伎」2019/02/02-02/26@歌舞伎座:夜の「熊谷陣屋」が吉右衛門なのでここで一度観ておきたいのと、仁左衛門も出る「名月八幡祭」が気になる

・こまつ座「イーハトーボの劇列車」2019/02/05-02/24@紀伊国屋ホール:長塚圭史の演出で、宮沢賢治の話ですよね多分

・パルコプロデュース「マニアック」2019/02/05-02/27@新国立劇場中劇場:青木豪と古田新太との話から始まった音楽劇だそうです

・世田谷パブリックシアター/パソナグループ企画製作「チャイメリカ」2019/02/06-02/24@世田谷パブリックシアター:栗山民也演出の社会派芝居

・渡辺源四郎商店シェアハウス「過ぎたるは、なお」2019/02/08-02/11@こまばアゴラ劇場:いいかげんに観ておきたい

・劇団東京乾電池「授業」2019/02/08-02/11@アトリエ乾電池:イヨネスコの不条理劇、一度観てみたかったので柄本明主演ならできればこの機会に

・新国立劇場演劇研修所「るつぼ」2019/02/08-02/13@新国立劇場小劇場:アーサー・ミラーの魔女裁判ものを宮田慶子演出で、12期生の終了公演

・タカハ劇団「僕らの力で世界があと何回救えたか」2019/02/08-02/14@下北沢小劇場B1:ナイロン100℃から松永玲子と小園茉奈の2人を呼んでいるのでメモ

・Bunkamura企画製作「唐版 風の又三郎」2019/02/08-03/03@Bunkamuraシアターコクーン:演出も役者も唐十郎に向いていそうだけど主役の2人だけが未知数

・青年団「平田オリザ・演劇展vol.6」2019/02/15-03/11@こまばアゴラ劇場:「コントロールオフィサー」「走りながら眠れ」「ヤルタ会談」「忠臣蔵・武士編」「銀河鉄道の夜(2チーム)」までが公演前半、「忠臣蔵・OL編(3チーム)」「隣にいても一人(日本版3チームと韓国版)」「思い出せない夢のいくつか」が公演後半、土日は1日4本平日でも2本か3本で、一挙8本(公式では「隣にいても一人」の韓国版を独立させて9本扱い)上演、1本あたりの公演期間が短くチームを選ぶ余地はないので観られるときに観ないといけない

・新国立劇場制作「紫苑物語」2019/02/17-02/24@新国立劇場オペラパレス:日本の小説を元にした新作オペラってことで目に留まったのでメモ

・世田谷パブリックシアター企画製作「熱帯樹」2019/02/17-03/08@シアタートラム:小川絵梨子が三島由紀夫に初挑戦

・パルコ製作「世界は一人」2019/02/24-03/17@東京芸術劇場プレイハウス:岩井秀人の脚本演出に松尾スズキ、松たか子、瑛太が参加、脇もおなじみの役者で今回一番の注目

・ブス会*「エーデルワイス」2019/02/27-03/10@東京芸術劇場シアターイースト:鈴木砂羽を主演に迎えて久しぶりの本公演

夏は夏でひどい天気だったけど、冬に吹雪で観に行けない、なんてことがないように祈っておく。

<2019年2月3日(日)追記>

4本追加。東京芸術劇場の「父」はメモから漏れて観劇先行になってしまった。

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