2026年1月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

2026年1月13日 (火)

Bunkamura主催企画製作「クワイエットルームにようこそ」THEATER MILANO-ZA

<2026年1月12日(月)夜>

離婚してフリーライターを仕事にしている佐倉明日香は、同棲している放送作家の恋人と喧嘩した挙句に大量の睡眠剤を酒で飲んだため精神病棟に入院することになる。外部との連絡は固定電話のみなのに携帯電話を取上げられて連絡先も碌にわからない。退院まで最短で2か月と伝えられて何とか耐えることを決心するが、他の入院患者も入院するだけの理由がある人たちばかり。

初日にして脚本も演出も歌もダンスも演技も段取りも準備万端整えてきた感あり。入院患者の人となりと入院理由の説明を描きながら、主人公が自分自身と向かい合っていく展開。登場人物が多いので前半がやや人物紹介の説明調になるのは致し方なしとは言え松尾スズキ芝居の弱点、後半が本番。小劇場らしい笑いを挟みつつ、暗い場面もあるものの、小説はこんなに前向きだったっけと思い出したくなるくらい前向きに仕上げてきた。宮川彬良の曲が明るいものが多いだけでなく、主人公のアバズレ度が低くなったあたりに理由がありそう。そこで乱暴なところがありがらも品のいい主人公になったのは咲妃みゆの手柄。恋人役の松下優也がネタ多めの歌をいくつもこなすところに注目。この2人の職業設定にやや時代を感じないではないものの、這い上がれ人生と歌う展開は1周回って今の時代にむしろ合っている。

小劇場面子にはキャパが大きすぎたかリピーターチケットが出ていたので余裕のある人は今からでも如何と言いたいところもミュージカルのチケット代なところが難。

東宝製作「ピアフ」シアタークリエ

<2026年1月12日(月)昼>

貧しい生まれ育ちからチャンスを掴んでのし上がったものの、愛する男がいないと駄目な歌手、エディット・ピアフ。その波乱の人生を歌に乗せて伝える舞台。

「愛の賛歌」は有名なれどここまで破滅型の人とは知らなかった。いかにも大竹しのぶに向いた芝居で、役は手の内にすっかり入っているものの、声の迫力がやや足りないのが残念で、初演かせめて再演のころに観たかった。友人を演じた梅沢昌代は今更だけどさすがでわかる、マレーネ・ディートリヒと秘書を演じたのが彩輝なおもよい感じでわかる、だけど眼鏡革ジャンの興行主を演じていた男性役者もよかったけど誰だかわからない。

松竹主催「壽初春大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

<2026年1月11日(日)夜>

自分に逆らう侍や関係者を始末しようとする蒲冠者範頼、そこに暫くとの掛声で巴御前が駆けつける「女暫」。白拍子と出会った樵の正体が実は「鬼次拍子舞」。油屋河内屋の次男与兵衛は放蕩がすぎて勘当されたものの明日までに借金を返さないといけない、窮して幼馴染ですでに結婚している豊嶋屋の女房お吉を訪ねるが「女殺油地獄」。

男版も含めて初見だった「女暫」はネタだくさんの顔見世芝居で、七之助の堂々たるふざけっぷりに拍手。踊りの良し悪しはわからないものの良さそうな踊りと揃った音楽の「鬼次拍子舞」では、節はあるもののわかりやすく語ってくれた謡が一部あって耳を引いたので(中央の人)、いつもあのくらいでやってほしいところ。「女殺油地獄」はAプロ。心の弱さがある時は甘えにある時は辛抱の利かなさになって遂に思い詰める与兵衛はおそらく現代風の役作りメソッドと相性がよさそうなれど幸四郎の役作りにぶれがあって芯が見えず惜しい。女暫でも女鯰若菜で活躍した新悟がここではお吉を好演して要注目、徳兵衛の歌六とおさわの梅花とおかちの宗之助もよい感じ、白鸚休演が残念。

ヨーロッパ企画「インターネ島エクスプローラー」本多劇場

<2026年1月11日(日)昼>

冒険心を胸に抱いた子供のころに話を聞いて以来いつかは行きたかった幻の島、インターネ島。情報を集めているうちに大学の冒険部で同期に差を付けられて、結婚したものの離婚されて、卒業後に破れかぶれで乗りだした航海。ようやく辿り着いたはずの幻の島だったが・・・。

壮大な設定と馬鹿馬鹿しさを真面目にやって期待通りの一本。探検できるような広い島という場面転換の難しい設定を強引に実現してみせるところが最高に好ましい(前方客席だと暗転中に目をこらしてみると楽しい)。劇団員になった金丸慎太郎が少年の冒険心を抱きつつ拗らせた主人公を好演、劇団員とゲストがばっちり固めて隙なし。芝居初めとして笑わせてもらった。

2025年12月30日 (火)

2025年下半期決算

恒例の決算、下半期分です。

(1)R Plays Company「海と日傘」すみだパークシアター倉

(2)ホリプロ主催企画制作「ピーター・パン」東京国際フォーラムホールC

(3)松竹主催「八月納涼歌舞伎 第3部」歌舞伎座

(4)はぶ談戯「JULIO」駅前劇場

(5)パルコ企画製作主催「人形ぎらい」PARCO劇場

(6)(7)松竹主催「菅原伝授手習鑑 昼の部夜の部(Aプロ)」歌舞伎座

(8)神奈川芸術劇場プロデュース「最後のドン・キホーテ」神奈川芸術劇場ホール

(9)パルコ企画製作「ヴォイツェック」東京芸術劇場プレイハウス

(10)ネルケ×悪童会議プロジェクト「絢爛とか爛漫とか(絢爛チーム)」新宿シアタートップス

(11)東京舞台芸術祭実行委員会主催「Mary Said What She Said」東京芸術劇場プレイハウス 

(12)新国立劇場主催「焼肉ドラゴン」新国立劇場小劇場 

(13)(14)(15)松竹主催「義経千本桜 第一部第二部第三部(Bプロ)」歌舞伎座

(16)文学座「華岡青洲の妻」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

(17)EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」新宿シアタートップス

(18)ほろびて「光るまで」浅草九劇

(19)二兎社「狩場の悲劇」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

(20)松竹主催「吉例顔見世大歌舞伎(夜の部)」歌舞伎座

(21)劇団☆新感線「爆烈忠臣蔵」新橋演舞場

(22)阿佐ヶ谷スパイダース「さらば黄昏」小劇場楽園

(23)KAAT×城山羊の会「勝手に唾が出てくる甘さ」神奈川芸術劇場中スタジオ

(24)新国立劇場海外招聘公演「鼻血」新国立劇場小劇場

(25)劇団四季「恋におちたシェイクスピア」自由劇場

(26)松竹主催「十二月大歌舞伎 第三部」歌舞伎座

(27)TBS/ホリプロ/ATG Entertainment主催「ハリー・ポッターと呪いの子」赤坂ACTシアター

(28)ゆうめい「養生」神奈川芸術劇場大スタジオ

以上28本、隠し観劇はなし、すべて公式ルートで購入した結果、

チケット総額は 306600円
1本あたり(チケットあたり)の単価は 10950円

となりました。上半期の18本と合せると46本で

  • チケット総額は 477500円
  • 1本あたりの単価は 10382円

です。なお各種手数料は含まれていません。また、下半期も映画館での芝居映像見物はありません。

上半期はぎりぎり超えていなくて、下半期はチケット単価が10000円を超えて、通年でも超えました。歌舞伎をまともな席で観たのが大きいです。初めは通年ではぎりぎり超えていないと思っていたのですが計算間違いをしていて、計算しなおしたら超えていました。上半期と下半期の両方で超えることも近いでしょう。

なお「チケットの手数料について2題」と題したエントリーを書いたばかりなので、せっかくだからチケット手数料も集計してみました。

  • チケット購入手数料(通年) 15142円

でした。手数料のない当日券芝居もあれば、キャンセル流れを抑えて通常よりも手数料がかかったものもあるので、1件あたりの手数料には幅がありますが、ざっくりと3%上乗せと見てよいでしょう。単価の高い芝居が多かったので3%で済んでいます。件数も総額も多いので、この手数料がなければあと1本か2本は芝居を観る金を捻出できる額が手数料に消えたとも言えます。慣れていくしかありません。

上半期に続いて下半期も演目なり団体なりを「一度は観たい」と「もう一度観ておきたい」がテーマでした。(1)(2)(3)(6)(7)(10)(12)(13)(14)(15)(16)(17)(18)(21)(23)(26)(27)(28)です。加えて「まだ行ったことのない劇場にも行っておきたい」という裏テーマもありました。ほぼ重なりますが(1)(2)(18)(22)です。これだけ観てもなお、見逃して先送りになった芝居が何本かありますが、いろいろ観られてすっきりしました。歌舞伎とかシェイクスピアのような古典は、有名どころはこれからもなるべく一度は、できれば通しで、観るようにしたいです。

寸評ですが、さすが野田秀樹の再演の(3)、文楽の可能性を広げる三谷幸喜の(5)、自身のキャリアとこれからの決意をドン・キホーテに託したKERAの(8)、評判に偽りなしの四演目だった(12)、周年公演で全力を尽くした新感線コンビの(21)、怪しい雰囲気を振りまく(23)とベテラン脚本演出家勢が大活躍する中に、若い染五郎に刮目した(26)、脚本の力を見せてくれた何度上演されているかわからない(10)、脚本演出役者に加えて美術にも力を入れて圧倒的な完成度を見せてくれた(17)(28)でした。

ここからひと搾りすると(3)(8)(12)(17)(23)(28)になります。さらに搾って(8)(28)となりますが、下半期の1本には(28)を挙げます。これを観る前は(8)が今年の1本のつもりでいましたが、(28)を観たらああ今年の芝居はこれで締めていいと思える、それだけの完成度がありました。あれが駄目な出来ならもう1本挑戦、またはNTLiveを観に行っていたことでしょう。

ちなみに、ひと搾りしたあとの6本中では(8)と(23)だけが新作で残り4本が再演以上のものですが、小劇場の利点を生かして初演から極力早く再演に持ってきた(17)(28)の制作手腕は褒められてしかるべきです。またこの6本中半分が神奈川芸術劇場の上演で、集客はいまいちなようですが近頃気になる芝居が多いのです、長塚圭史が芸術監督をやっている間は関東の人たちは気にしておく方がよいです。

2025年振返りです。先に芝居の中身についてですが、ここ数年感じることとして、上手い。一度は観たい芝居を優先したので何が何でも上手とは言いませんが、現代口語演劇の洗礼を受けた世代の中に「おっ」と言える水準の役者が何人もいましたし、それを見て影響を受けた人もいるのでしょう。脚本の台詞や構成、演出の目標、その他いろいろ、商業演劇とタメを張るか下手な商業演劇以上という芝居を見かけました。上半期もありましたが、下半期だと(17)(18)(28)です。できる人たちの水準が昔よりも明らかに上がっています。

一方で、古典の上演については肩透かしが多かったです。着物髷物と言わず、明治の築地小劇場以来の西洋古典以来、積重ねられたはずの技術を観る機会が足りなかった。そういう芝居をあまり観ていませんし、その手の技術もしっかり身に着けたのだろうなと思わされる役者もいましたが、全員が全員そうではない。そもそも現代口語演劇自体が、現代口語で書かれた脚本を元にしています。古典には古典として残るだけのことはある台詞の重さがあって、それは現代口語演劇でさらっと言えばいいわけではなく、かみ砕いて肚に響く声に乗せないといけない。

両方あるのがいいと思うのですよね。平田オリザが現代口語演劇を目指したときは不自然な翻訳語に、唐十郎や野田秀樹が出てきて小劇場ブームが始まるころですが、唐十郎や野田秀樹は詩的な脚本と台詞なので、不自然さでは翻訳語とどっこいどっこいです。そこに現代口語演劇が出てきて、しかも本を書けるほど方法論がはっきりしていたので、そちらに向かう人が増えた。その人たちが堂々たる古典に臨む機会があればまた違うのかもしれません。新国立劇場のシェイクスピアシリーズ、新劇系と現代口語演劇の申し子たちを半々くらいでやってもらえないものでしょうか。

それにしても小劇場に何が驚くといって、脚本家兼演出家、たまに役者もやる人が、この時代になってもまだまだ出てくることです。新劇系だと文学座は演出家が湧いてくると言われているそうですが、何なんでしょうねこの生命力は。「日本文化はフィルタリングシステムという話」という引用ばかりのエントリーを思い出しました。佐々木俊尚の文章を再引用すると以下です。そういうことなんでしょう。

 しかし日本文化はそういうノイズに塗れた中から、秀逸なひとにぎりのクリエイターを生み出してきた。そういうフィリタリングシステムを作り上げてきたのである。全員が力をそろえてひとつの構造を作り上げるのではなく、バカや暇人が好き勝手なことをやってただコンテンツ消費をしているだけの中から、フィルタリングしてわずかひとにぎりの天才クリエイターを生み出すというただそれだけのことを、日本文化は綿々とやってきたのだ。

その一方で、誰が見ても古典の分野である文楽は三谷幸喜に脚本演出を頼み、歌舞伎は次世代への代替わりに備えて急ぐ。その中でも大看板を引受けているなと考える筆頭が勘九郎七之助ですが、これはご存じ勘三郎と野田秀樹との間で現代的な演出に応えることを求められたり、宮藤官九郎を呼んだりと、現代的な要素をたくさん吸収した上で古典にも臨んで、成功している。もっと若手だと染五郎でしょう。

当たり外れは芝居の常ですが、とにかく演目だけを見れば、いい芝居の予感を手にする目と耳と鼻を持っていれば、今の日本の芝居業界は百花繚乱です。古典と現代の融合も、あと10年くらいしたらもっと進んでいるかもしれません。

とは言え、業界事情はいろいろです。

まずはパワハラの話。去年は「2024年の公演中止のいろいろ」というエントリーを書きましたが、今年は演出家が関わる2件がありました。上半期の「主宰に愛想を尽かして演出家が逃げて公演が中止になるという珍しいケース」では演出家が現場のパワハラを見て自分から降りたケース、下半期の「佐藤信が演出降板」では演出家自身がパワハラ認定されて降りざるを得なかったケースです。こういう話が今後も出てくるか、あるいはこれが広まってパワハラが減ってくるか、あるいはセクハラその他のハラスメントも対応が進むか、どうなるでしょう。

ただしハラスメント反対という話とは別に、そもそも面白い舞台を創れてなんぼというのが芸能界です。清く正しく美しくても、出来上がった芝居がつまらなかったら意味がありません。それは2024年に「人格より前に能力と魅力が求められる業界の話」と書きました。ハラスメントの駆逐と創造性の維持向上が芸能界で両立可能なのか、引続き追える範囲で気にしたいと思います。

次に制作側の話。「劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定」や「抽選販売でほぼすべてのチケットが当選して抽選のやり直し」といったミスがありました。前者はパルコがやらかして、後者はチケットぴあがやらかしました。大手にしてこれですから、人手が足りないか、この手の失敗をカバーしていたベテランが退職してノウハウが一時的に足りなくなっているか、そのような話が連想されます。

一方で上半期には「輸送中の事故からのショーマストゴーオンその2」という事故もありました。人が無事なのは何よりですが、いろいろ大丈夫かと心配になります。

それとチケット代。去年に引続き値上がりしています。業界側から見た表現なら値上げ転嫁が順調とでも呼ばれるところでしょうか、私が考えていたよりも値上がりのペースが早いです。物価高が続いていて背に腹は変えられないところでしょうか。日本の芝居は短ければ3日、長くても数か月で次に移るので、値上げしやすいのでしょう。代わりに昼と夜、平日と土日祝日、子供や学生向け、など1つの公演に複数のチケット価格帯を導入しています。そのあたりは座席の違いと合せて「座席と上演時間帯によるチケット代の値段差の実例」、あとは「チケット代から予想する舞台の出来について(2025年末版)」をまとめました。後者を書きながら、近頃チケット代が出来の指標として役に立たなくなってきているなと気が付きました。

パワハラの件、制作のミスや事故、チケット代の値上がり。この3件は奇しくもそれぞれハラスメント防止、ベテラン退職と人口減による人手不足(推測ですけど)、物価高といった社会の大きな動きを反映した出来事でした。芸能界といえどもこのレベルの社会の変化とは無縁ではいられないということがわかります。だから2026年も似たような出来事が起きると予想します。

2026年にもうひとつ何かあるかもしれないとしたら、戦争ですね。起きるなら2027年ではないかと言われていましたが、最近騒がしいですからね。全力で回避してほしいです、世界が。

最後に個人的な話です。夏から後に体調を崩して、年末2か月は完全に駄目でした。なのにここに観たい芝居が固まっていたので、慣れた趣味に逃げて体調が駄目でも精神的には何とか保とうと自分で自分に言い訳しながら観ていたのですが、これがまた体力を使うことに跳ね返ってあまり上手くいきませんでした。チケットを前売で買った芝居がなかったら観る芝居はもっと減っていたでしょう。

これが20年前なら週末の疲れを平日で癒してみせるとうそぶいていられたのですが、さすがに無理で12月は芝居を減らして対応することになりました。ブログを書くのもなるべく短くまとめようとしたのですがこのエントリーを書くために見返していたら記載ミスがたくさん見つかりましたし、短く書くために考える時間を余計に使ってしかもあまり短くならないという散々な結果でした。暇ネタは書く気力がなくて、でもここで書かないと忘れるからと年末に掃除をしながらまとめて書いたら、結局掃除が疎かになりました。

昔と同じようにはいきません。いろいろ変わるんです。それに対応することが求められます。大は社会の変化から、小は自分の体力低下まで。1年前にも書いたことですが、それを思い知らされた年末でした。

観る本数をもっと減らすはずで、上半期は少し抑えられましたし、下半期も夏までは抑えられたんですが、年末のラッシュを上手く乗りこなせませんでした。ここは反省です。ただ、だからこそ(28)を観られた面もあります。数をこなさないと出会えないんですよね、いい芝居は。そういうことがあると反省が足りなくなるところを反省しないといけません。

昔なら上演が始まってから評判がよさそうなら観に行っていたのですが、今時は面白い芝居は土日祝日どころか平日も前売完売、そんな芝居の当日券は行列先着順ではなく前日電話予約が必須、だから見込みでチケットを押さえる必要があると思ったらリセール禁止。これで買ったチケットのおかげで芝居を観に行く元気を搾り出せたのか、長い目で見ると体調を悪化させた呪いなのかはわかりません。

そんな昔の当日券派時代は小劇場ばかり追ってきたので、それは今になって役者や脚本家や演出家から芝居の出来を見極める役に立っています。ですが演目を考えると、定番名作や古典の観劇経験が足りていないので、体力が少しでもあるうちに観ておきたい。

ただ、体調悪化と芝居ラッシュで、芝居以外に今年やりたいと考えていたことが夏以降に止まってしまったので、そちらを復活させるために芝居の本数の折合をつけないといけなくて、これが未だにまとまっていません。来年の課題です。

ブログはどうするかと言えば、雑でも短くても、暇ネタが減っても、観た芝居の寸評を書くことは続けたい。金のためでもない、誰のためでもない、何のためだかわからない、ここはそういうブログです。ああでも、芝居の寸評は木戸銭を払った一観客の立場から誠実に、そして内容は雑でも文章は丁寧でありたいです。目標ですけど。

引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

2025年12月29日 (月)

劇中劇の芝居を本当に上演して撮影するNetflixの宮藤官九郎脚本ドラマ

ややこしいのでまずは制作会社っぽいところのサイトより。

[NEWS] 大人計画×Netflix「俺のこと、なんか言ってた?」 宮藤官九郎作・演出の舞台が、 宮藤官九郎オリジナル脚本のNetflixシリーズとコラボ!! 下北沢ザ・スズナリにて上演決定!!

この度、2026年1月28日(水)~2月1日(日)、ザ・スズナリにて、劇団ウイスキーボンボン第7回公演『誰も知らない大物俳優』の上演が決定いたしました!

本作品は、宮藤官九郎が完全オリジナルの脚本を手掛けるNetflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」(2026年/Netflixにて世界独占配信)の劇中公演です。主演は、まさに“誰も知らない大物俳優”田中卓。共演は、無頼タケルノミコト、二萬田久子。その内容が事前に明かされることは無く、秘密裏に上演されるこの舞台は、ご観劇いただくお客様も内容や感想を一切劇場外に漏らしてはならない極秘プロジェクトです。お客様もこのプロジェクトの一員として秘密を共有することになります!口外不可でよろしくお願いします!!そして乞うご期待!!!

作・演出:宮藤官九郎コメント

これは僕の作品であって僕の作品ではない、駆け出しの劇作家が書いたテイの劇中劇です。
主演は役所広司に見えるけど役所広司ではないテイの男、田中卓。
共演の2人もおそらく誰かなのでしょうが、誰も知らないテイでご覧下さい。

2026年配信予定のNetflixのドラマが宮藤官九郎の脚本であり、その撮影中である。ドラマの中で劇中劇があるが、それを実際に公演をやって撮影する。そのドラマの主人公が役所広司で、ドラマ中に出てくる劇団名が「劇団ウイスキーボンボン」である。ということまでまずはわかりました。

次。大人計画の公式サイトに、ドラマ中の設定に則りつつもギリギリそうでないメタな公演サイトが載っています。宮藤官九郎が脚本演出を行なう3人芝居である。公演期間は水木金の前半3日間と日曜日に分かれている。水木金は有料で販売する。そのうち金曜日は公演収録日である。ここまでは普通です。チケット料金が13000円ですけど、宮藤官九郎の脚本演出で、3人の役者のうち少なくとも1人は役所広司ですから、まあ妥当でしょう。お土産付きらしいですが、ドラマの販促グッズか何かでしょうか。

そして日曜日は抽選ですが完全無料の回。システム利用料は負担するようですが495円ならただみたいなものです(チケットぴあでの申込にクレジットカード必須となっています)。代わりにドラマのエキストラとしても撮影に参加してもらうことが条件です。

〇特別無料招待券

2月1日(日)13:00公演は、事前抽選にお申し込みいただき、当選されたお客様のみご覧いただける特別無料招待公演です!
客席内にカメラが入り本番を全編収録すると共に、終演後にドラマ収録を行います。
ご観劇のお客様には終演後のドラマ収録もエキストラとしてご参加いただきます。
(中略)
【料金】
招待のため無料
※ただし、当選時にはぴあシステム利用料330円+チケット発行料165円をお客様にご負担いただきます。

いろいろ条件も書いてありますが、そのチケットの抽選と販売を管理するチケットぴあのサイトの方が若干詳しいみたいなので申込ボタンからそちらを見てみましょう。

「誰も知らない大物俳優」2月1日公演 特別無料招待券受付
注意事項-必ずご確認ください

※本受付は、「チケットぴあ」の販売方法とは異なる特別受付となります。チケットぴあサイトでご利用いただけるサービスは適用されませんので、ご了承ください。

※本受付は、引取方法「購入後あとから選ぶ」をご選択いただきます。ご当選・お支払い後に、チケットぴあ「Myチケット」ページにて発券場所をお選びください。ご登録の氏名/電話番号がぴあ会員登録情報と一致しない場合、お申し込みができません。予めご注意ください。

受付/結果発表日程

● 受付期間
2025年12月25日(木) 10:00 ~ 2026年01月08日(木) 23:59

● 結果発表
2026年01月16日(金) 18:00頃(予定)
結果発表後は早急に、申込状況照会はこちらより、当落結果をご確認ください。

● 結果確認方法

※申込状況照会には、受付完了画面にて表示される『申込受付番号』/お申し込み時にご登録の『申込状況照会用パスワード』が必要です。
※サポート情報として、当落結果通知メールを上記の結果発表日時に配信いたしますが、メールが未着の際は必ず、お客様ご自身で [申込状況照会] の結果発表をご確認ください。
※@pia.co.jpからのメールを受信可能な状態に設定してください。メールの再送はできません。
※インターネットの途中経路の障害や、お客様のご利用されているメールサーバ、端末の設定の問題等による遅配・未配につきましては、弊社はその責任を一切負いません。
※毎週火曜・水曜の午前2:30から午前5:30まではシステムメンテナンスとなります。

受付公演詳細

「誰も知らない大物俳優」2月1日公演
2026年02月01日(日) 13:00
【B】
会場:東京・ザ・スズナリ
席種: 特別無料招待券 ※整理番号付き当日引換券/公演当日要身分証明書

注意事項

【チケット】
※公演当日、お引き換えの際に券面に記載の氏名確認を行います。身分証明書(ご本人と分かるもの〈免許証、保険証、マイナンバーカードなど〉)の原本を必ずお持ちください。確認後、指定席券と引き換えてご入場いただきます。
※お席はお選びいただけません。ベンチシートや、開演直前に客席にご案内する注釈付き指定席となる可能性もございます。
※指定席券とお引換後、ドラマ収録の都合でお座席の変更をご相談させていただく場合がございます。

【ご注意】
※2月1日(日)13:00開演の無料公演をご観劇のお客様には、ご観劇内容・収録内容を第三者に開示・漏洩しないことをお約束いただき、 撮影した肖像の利用に関してご同意いただくため、【秘密保持に関する誓約及び肖像権の利用等に関する同意書】をチケットお申し込み時にご確認いただき、ご観劇当日のご入場時にご署名いただく必要がございます。
また、知り得た情報はインターネットなどあらゆる媒体に書き込まない、口外しないようお願いします。
※エキストラとしてもご参加いただきますので、収録に映り込むことを前提にお申し込みください。
※終演後のドラマ収録は最大4時間位を予定しております。19時まで劇場に居られる方のみを対象にしております。
※早い整理番号から良席にお座りいただけるという訳ではございません。
※ご入場は整理番号順ではございません。
※撮影されたすべての映像の著作権は、Netflixシリーズ「俺のこと、なんか言ってた?」の権利者に帰属いたします。無料公演に応募され出演された方の、映像に関するいかなる権利も主張されない事に同意されるものとしてご応募ください。
※撮影中に、スタッフの指示に従っていただけない場合は、退場をお願いすることがあります。
※ご記入いただきました個人情報は本公演(エキストラ参加)以外では使用いたしません。
※開演の5分前を過ぎますとご自身のお席にご着席いただけない場合がございますので、予めご了承ください。
※本公演のチケットは主催者の同意のない有償譲渡が禁止されております。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
※車イスでご来場予定のお客様は、チケットご購入前に大人計画(03-3327-4312)までお問い合わせください。
※営利目的でのチケットのご購入ならびに転売は固くお断りいたします。
※チケット券面に購入者氏名が印字されます。

【お問い合わせ】
(後略)

この後のページでもこまごまとした注意事項が続きますが、とりあえずここまで。普通に見るなら13000円払う芝居を無料で観られる代わりに、エキストラとしてこれだけの条件に同意するようチケット申込みの時点で権利関係についてはしっかり釘を刺しています。そりゃアメリカ発の会社が法律関係を押さえないわけがない。内容を漏らさないことについて秘密保持契約をするとありますが、申込時にメールアドレスは伝わることになっていると後のページに書かれていますし、申込みもクレジットカード限定です。署名と合せていろいろ追及する手段は向こうも把握して備えていますから、ばらして知らんぷりの炎上狙いは止めたほうがよいです。

最大4時間くらい、19時まで居られる人、という条件が明記されているのはいいですね。ドラマの撮影は時間があってないようなものと昔から言われていますが、次の日が仕事の人も、遠方から応募する人もいるでしょうから。

無料で観られるのだから座席が選べないのはそりゃそうだろうと思いますが、面白いのは座席変更を後で相談する件です。座高の高い人とか服装が派手な人とか頭髪がお歳を召している人とか、画面上の絵作りを考えないといけないんでしょうね。個人的な予想ではエキストラの一般客だけでなく本業の役者も客席に混じってあれこれやるんだと思いますが、それに舞い上がらないような人をなるべく真ん中に持ってくるとか。

とは言え、13000円を取ったとしても公演だけなら大赤字でしょうから、その分は撮影費用に組込まれているのでしょう。Netflixは全世界相手にするだけテレビドラマと比べて予算が文字通り桁が違うという記事を読んだことがありますから、こういうこともできるのでしょう。いい予算の使い方だと思います。反面、視聴数のノルマが厳しくて達成できないと次がない、だから初めて参加した仕事が成功せずに2回目の機会なくお払い箱になる人も後を絶たない、とも記事には書かれていました。芸能界に向いた仕組みだと思いますから別世界の話です。

次の公演の予定を立てるために調べていたら見つけた公演だったものの謎だったので、あらためて調べてどういうものなのかようやくわかったので一段落です。

ちなみにこれを書いているのは抽選の応募期間中なので応募しようと思えばできるのですが、いろいろと面倒そうなので止めておきます。それなら平日公演に応募するかというと、当たれば都合の付く日が1日だけあるのですが、それでもいろいろ面倒そうな予感がするので止めておきます。面倒そうだけど役所広司が観られるかもしれない、よりは、役所広司が観られるとしても面倒そう、と考えてしまう私はおっさんです。面倒が起きてから文句も言えませんしね。

2025年12月28日 (日)

抽選販売でほぼすべてのチケットが当選して抽選のやり直し

芝居の予定を立てるべく調べている最中に見つけました。ヨーロッパ企画の公式「お詫びとお知らせ」より。

ヨーロッパ企画第44回公演「インターネ島エクスプローラー」
ヨーロッパ企画公式サイト先行 チケット購入のお客様へ

2025年10月15日

2025年10月4日(土)~10月9日(木)に実施いたしましたヨーロッパ企画「公式サイト先行」では、多くの皆様にお申込みをいただき、誠にありがとうございました。

しかしながら、10月14日(火)に行われた抽選作業の際、先行販売を実施したチケットぴあサイトでの抽選処理作業に不備があり、本来は抽選が行われるはずだった一部公演において、希望枚数のほぼ全てが当選として処理されてしまいました。

この誤処理により、下記の公演で収容人数を超える枚数が販売されていたことが判明いたしました。誠に恐縮ではございますが、対象公演の公式サイト先行での当選を一旦無効とし、チケット代金を全額払い戻しさせていただく対応を取らせていただきます。

対象となるお客様には大変なご不便とご迷惑をおかけいたしますが、払い戻しとあわせて再受付を実施いたします。詳細は以下の通りです。

【対象公演】

公演名:ヨーロッパ企画第44回公演「インターネ島エクスプローラー」
日時 会場 対象席種
2025年12月13日(土) 15:00 栗東芸術文化会館さきら 中ホール 一般・学生
2026年1月9日(金) 19:00 本多劇場 一般
2026年1月10日(土) 13:00 本多劇場 一般
2026年3月7日(土) 13:00 札幌市教育文化会館 大ホール エクスプローラーシート

【再受付および払い戻し方法】

対象のお客様には、チケットぴあより順次メールにてご案内をお送りいたします。
メールには再受付の詳細および払い戻し手続きの方法を記載しておりますので、ご案内が届き次第、ご確認のうえお手続きをお願いいたします。

【本件に関するお問い合わせ先】

(中略)

公演を心待ちにしてくださっていた皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたこと、心より深くお詫び申し上げます。
今後は、このような事態が二度とないように、再発防止に努めてまいります。

チケットぴあ
ヨーロッパ企画/株式会社オポス

これについてはチケットぴあがやらかしたことが明記されていますので責任ははっきりしています。

原因についてはまったくの推測ですが、チケットぴあだと公演の会場単位でチケット販売を分けるのが基本で、同じ会場であれば学生向けなど特別なチケットでない限りは同じページで販売します。それなのに特定の公演回が対象となっています。おそらく割当てられたチケット数を入力する際の入力ミスで数字を間違えて入力してしまったのではないでしょうか。「希望枚数のほぼ全てが当選」と書かれている所からすると、桁を間違えてお尻に0を付けたり頭に1を付けたりしたら劇場総席数を超えて、それは何となくシステムで弾く仕組みが入っていそうですから、割当て総数を入力するところを劇場総席数を入力した、あたりでどうでしょう。だとするとヨーロッパ企画の抽選に申込んだときの倍率は他のチケットセンターも考えると5倍くらいかな、とか連想が広がりますが、まったくの推測なのでこの辺にしておきます。

それにしてもこの7月には「劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定」という事件があったばかりです。書類を確認するときは固有名詞と数字(日付含む)だけは間違いがないように確かめると言われていますので、そこは気をつけてほしいところです。

それとは別に、やっぱり人手不足が芝居の制作関係にも来ているのだろうなと思います。それは私の仕事でもひしひしと感じるところではあり、他山の石にしなくてはいけません。

余談ですが、どうせならついでに「芝居業界の笑えない失敗 制作編」で誰か1本作らないでしょうか。芝居本番のトラブルは「ショウ・マスト・ゴー・オン」みたいに作られていますが、もっと事務所寄りが舞台のもので、登場人物が制作とかマネージャーとかスポンサーばっかりで役者役が全然出てこない芝居。これは揶揄しているのではなくて、そういう形でまとめることで業界内の啓蒙に資するのではないかという提案です。それこそヨーロッパ企画が得意そうなのですが。

もっとも、芸能界で本当に笑えない失敗となると刑事事件になるのはここ数年来の事件で明らかなので、ネタは選んでほしいところです。

2026年1月2月のメモ

少し調べる範囲を広げましたが、それでもここまで多くなるとは思いませんでした。ニッパチは今や昔です。

・松竹製作「わが歌ブギウギ」2026/01/02-01/20@三越劇場:キムラ緑子が笠置シヅ子を演じます

・松竹主催「壽初春大歌舞伎」2026/01/02-01/25@歌舞伎座:午前の部に勘九郎七之助の実盛物語がありますが、午後の部は七之助幸四郎の女暫に、ダブルキャストで女殺油地獄もある

・PARCOプロデュース「志の輔らくご in PARCO 2026」2026/01/05-01/31@PARCO劇場:当日券次第です

・ヨーロッパ企画「インターネ島エクスプローラー」2026/01/07-01/25@本多劇場:近頃珍しい全国ツアーを頑張っているところが好ましい新作

・Bunkamura主催企画製作「クワイエットルームにようこそ」2026/01/12-02/01@THEATER MILANO-ZA:松尾スズキが自作小説のミュージカル化ですが原作が面白かった記憶がある

・燐光群「OIL」2026/01/09-01/18@ザ・スズナリ:石油の歴史とこれからを描いた海外芝居

・東宝製作「ピアフ」2026/01/10-01/31@シアタークリエ:大竹しのぶを観に行くかどうか

・果てとチーク「だくだくと、」2026/01/15-01/18@シアター711:近頃見かける劇団名なのでピックアップ

・エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ/キョードーファクトリー主催「ピグマリオン」2026/01/20-02/08@東京建物BrilliaHALL:主演が沢尻エリカであることとチケットを買うのが面倒そうなことを除けば演目と他の出演者は大変に魅力的

・ONEOR8「ママごと」2026/01/21-01/27@紀伊國屋ホール:何となく面白そうなのでピックアップ

・文学座研修科発表会「ロミオとジュリエット」2026/01/23-01/25@文学座アトリエ:研修科の発表会ですけどたまにはこういう鉄板演目もピックアップ

・インプレッション製作「チェーホフの奏でる物語」2026/01/23-02/02@東京芸術劇場シアターウエスト:イッセー尾形の出るニール・サイモン芝居

・大人計画×Netflix「劇団ウイスキーボンボン第7回公演『誰も知らない大物俳優』」2026/01/28-02/01@ザ・スズナリ:Netflixドラマの劇中劇を撮影するために本当に上演する、という理解であっているのか、宮藤官九郎脚本演出芝居で、千秋楽は撮影と引換えに無料という予算の使い方を心得ている企画

・アイオーン主催「ゴドーを待ちながら」「ゴドーを待ちながらを待ちながら」2026/01/30-02/15@赤坂RED/THEATER:「ゴドーを待ちながら」は小倉久寛と青年座の横堀悦夫を立てて、そのバックステージ芝居の「ゴドーを待ちながらを待ちながら」と同一期間に別々上演、演出は西本由香

・トライストーン・エンタテイメント/ディライト・エンタテイメント企画制作「いのこりぐみ」2026/01/30-02/23@IMM THEATER:三谷幸喜の新作4人芝居

・松竹主催「猿若祭二月大歌舞伎」2026/02/01-02/26@歌舞伎座:どうしよっかなー、くらいの気持ちで

・世田谷パブリックシアター企画制作「黒百合」2026/02/04-02/22@世田谷パブリックシアター:泉鏡花はあまり趣味ではないのですが演出が杉原邦生なところで念のためピックアップ

・劇壇ガルバ「The Weir」2025/02/05-02/15@ザ・スズナリ:第7回公演まで続いて一度観ておきたいのですが今回の演目はアイルランドものということで悩む

・新国立劇場演劇研修所演劇研修所「社会の柱」2026/02/10-02/15@新国立劇場小劇場:卒業公演にイプセンの1本

・国立劇場主催「令和8年2月文楽公演」2026/02/11-02/23@KAAT神奈川芸術劇場ホール:絵本太功記の通しと勧進帳ということでピックアップ

・KAAT神奈川芸術劇場企画制作「冒険者たち」「帰ってきた冒険者たち」2026/02/11-02/23@KAAT神奈川芸術劇場中スタジオ:長塚圭史が神奈川県内を取上げる劇場プロジェクトに、らしからぬ出演者を集めて再演と新作の2本を同一期間に別々上演

・劇団青年座「鵺が疾る」2025/02/15-02/23@東京芸術劇場シアターウエスト:野木萌葱の新作で演出は黒岩亮

・スラステ「WIVES and HUSBANDS」2026/02/18-02/23@駅前劇場:THE ROB CARLTONの村角太洋を作演出出演に招き、羽野晶紀やインディ高橋の新感線メンバーも呼んで

・範宙遊泳「われらの血がしょうたい」2026/02/21-03/01@シアタートラム:演出を額田大志に任せての再演芝居

・文学座研修科発表会「真夏の夜の夢」2026/02/20-02/22@文学座アトリエ:研修科の発表会でもこちらは本科夜間部の上演で、鉄板演目だからピックアップ

・新国立劇場オペラストゥディオ「ウィンザーの陽気な女房たち」2026/02/20-02/22@新国立劇場中劇場:名前だけ聞いたことのある演目をこういう機会に覚えたい

・GAMARJOBAT「ピストルと少年」2026/02/20-02/23@紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA:台詞のない1人芝居らしく、表題作は二部で、一部に他の短編も組合せて上演らしいのでピックアップ

・劇団アンパサンド「歩かなくても棒に当たる」2026/02/20-02/25@東京芸術劇場シアターイースト:近頃見かける劇団名なのでピックアップその2

・MONO「退屈忍者」2026/02/27-03/08@吉祥寺シアター:タイトルからして目を惹きます

これだけ数が多いのに一度観ておきたい系の演目や団体が多くて困りますが、さすがに数は増やせませんので何とか厳選したいです。

チケット代から予想する舞台の出来について(2025年末版)

世の中の物価上昇に伴ってチケット代も値上がりしています。関係者だって物価上昇を埋合せられるように稼がないといけないので、それは致し方ありません。

それで2004年に書いた(ブログの移動に伴い2011年に再掲載した)「再録:チケット代から予想する舞台の出来について」を、今の感覚に直してみようと思います。

前回はその公演の一番高い席を基準にしていたのですが、昨今だと土日祝日公演が高い、夜公演が安い、子供割がある、学生割引がある、など1つの公演の中でもチケット代がばらつきます。なので基準は「その公演で一番標準的で割増も割引もないと考えられる平日昼間公演の大人料金で一番高い席の値段」を基準とします。実際にはその公演で一番安い料金を基準に上乗せを決めていると思いますが、そこはあまり穿つことなく素直に考えます。

また前回と同じく、伝統芸能や宝塚や海外来日モノの日本公演はまた別の基準になりますのでひとまず脇に避けます。

・無料:
観てはいけない。

・ - 3500円(旧2000円までの価格帯):
旗揚げしてすぐの場合。旗揚公演に限っては出来のいい可能性はあるが、数回公演してもこの値段だと手を出さない方が賢明。

・ - 6500円(旧3500円までの価格帯):
ある程度公演を重ねた劇団。規模の大きい劇場には向かない作風の劇団、ある程度売れた人たちが本公演とは別に上演したい場合、芸能人としてそこそこ売れていても舞台経験の浅い人が舞台を始める場合、長年公演しているが全然おもしろくない(動員数が伸びない)のでこれ以上の値段をつけることができない劇団、の4パターンが主。玉も石も多い、小劇場という言葉が一番似合う層。

・ - 8000円(旧5000円までの価格帯):
ある程度の評価を得られて、中規模以上の劇場で上演するに耐えうる質を維持している劇団が多い。コアな少数ファンを当てにした、つまらなくて売れない劇団もたまに混じる。スタッフワークのレベルも上がる。昔ならエンタメ要素必須の価格帯でも、近頃だと小劇場社会派系地味芝居でもこのくらいのチケット代はある。

・ - 13000円(旧8000円までの価格帯):
昔の小劇場から売れた劇団、あるいはその関係者を巻込んだプロデュース公演でいまとなっては事実上商業演劇になっている一群と、芸能系の商業演劇群とが混在しているレベル。小劇場系だとはずれが最も少ないと思うが、それでもはずれるときははずれるし、芸能系は言わずもがな。脚本家か演出家か役者に人気者が含まれ、スタッフワークは確実で金がかかっている。

・ - それ以上:
人気者を前面に押出しての価格帯。スタッフワークは確実で金がかかっており、その点ではチケット代について納得させてくれる。ただしスター頼みの面も大きく、芝居の出来を保証するものではない。役者目当てでない場合は、チケット代が高い分だけ外れたときの怒りも大きくなる。

こんなところではないでしょうか。以前は旧6500円までの価格帯を設けていましたが、「つなぎ」と書いていたくらいその当時でもあまり見かけないチケット代の価格帯でした。ですから割と強気なチケット代も珍しくなくなってきた昨今、上下の価格帯に吸収されて消えました。

以前はまったく観なかったので書かなかったこととして、ミュージカルがあります。できる役者が限られる、演目に海外翻訳物が多い、生演奏が入ることもある、と金の掛かる要素が多いため価格帯が高値安定しており、13000円スタートくらいでしょうか。16000円とか見かけますし18000円でも驚きません。こちらはチケット代から出来を判断することは不可能で、演目と出演者で判断することになります。

ちなみに、劇団四季のチケット代はなかなか相場に近いです。ただあちらは、ロングラン演目だと減価償却費だか契約当時の為替だか何か理由があって、一般レギュラー価格が13000円のところ、新作だと13500円になっています。会員価格だと1000円引きになりますが、今後もチケット代はじわじわと上がるのだと読取れます。

そしてここまで書いておいて何ですが、チケット代から出来を推測するのは近頃は成立たなくなってきているなと思います。

2004年当時は売る側としても提供できるものに見合った値段というのを意識していたような、チケット代の格とでも呼ぶべきものがありました。小劇場とか老舗新劇劇団とか商業演劇とか、互いの領分がもっとはっきり分かれていて、そこにチケット代の相場がありました。そこは2025年現在、存在しません。小劇場から芸能界に進出して活躍する人が増えて、小劇場と新劇劇団との間で脚本家や演出家レベルでの交流が盛んになり、テレビの影響力低下と海外ネット系オリジナルドラマや映画の作成が日本にも入って、ごちゃ混ぜです。

スタッフワークも、IT系ツールの発展で映像と音響はかなりのところまで作れて、機材よりも腕前とやる気次第になっています。なんだったら小劇場なのにLEDパネルまで導入する芝居が出てくるくらいです。

あとは役者の腕前も、平均値は今より数段下でした。だからこそ達者な役者のいる劇団は人気となり、大きくなり、人気の役者が抜けて終わる、というサイクルでした。そこを底上げしたのが、ここ30年近くの現代口語演劇の膾炙によって自然体の演技のイメージが広まったことと、海外のメソッドの流入でしょう。若くても上手い人は本当に上手いし、その数も増えています。小劇場と芸能界の両方でです。

余談ですが、その分だけ、昔の小劇場で「怪演」して名を上げたような役者が減っている気もしますが、あれは劇団の作風が「怪芝居」であることとセットです。探せばどこかにいるのでしょうし、近頃の自分の興味でなかなかその手の芝居は観られていないのですが、それでも「怪芝居」の数自体が減っているように思われます。

閑話休題。それらの結果として、安いチケット代の面白い芝居のレベルと、高いチケット代の面白い芝居のレベルとが拮抗しています。面白さの1点だけを問うなら昔だって拮抗していたでしょうが、それは脚本家兼演出家兼主宰のセンスで引張り上げられるだけ引張り上げた結果だったでしょう。それが今だと役者もスタッフも商業演劇と大差ないケースも出ています。違うのは上演劇場の広さだけです。

あとはSNSの広がりもあります。SNS宣伝の上手下手はありますが、だとしても昔よりも口コミの重要性が遥かに高い。

結果として、チケット代から出来を予想する意味が減りました。それは芝居の出来を予想する手掛かりが減ったことになりますから、観客にとってはかえって難しくなったと言えます。

上演側に取っても難しくなっていて、自分たちの芝居の観客層をよく把握して、口コミが広がる層を考えて、上手く嵌まったときにチケット代が足かせにならないようなところまで思いを馳せる必要があります。

それでも昔に比べたら今の芝居環境の方が面白いものが多いです。チケット代が上がっても外れ芝居はなくなりませんが、外れたときの不満要素は昔よりも減っていますし、面白い芝居の面白さは昔よりも上がっていますから、観客にとっては今の方が豊穣と言えるでしょう。作る側は昔よりも大変でしょうが、そこは納得の上で取組んでもらいたいです。

チケットの手数料について2題

その1。今年は事前にチケットを買ってから芝居を観に行くことが増えました。昔なら当日券で観られていたであろう芝居でも、当日や前日の電話予約をしていないと販売もされないことが増えたからです。

そうすると芝居や販売方法ごとにチケットセンターの手数料が掛かるのですが、これは馬鹿になりませんね。キャンセルするときも手数料は掛かりますから、チケット代を丸ごと損するよりはいいですが、それにしたって高い。

割と最近まで当日券派だった自分の方が少数派であるとは思いますが、年間の回数が多いと無視できない金額になります。

その2。それでも当日券で観に行くことはあります。その中で新国立劇場の芝居を当日券で観たのですが、何と当日券のチケット代に330円の手数料が乗ってきます。今年からのようです。これが非常に納得がいきません。

大人の事情を推測するに、後ろのチケットシステムを全面的にチケットぴああたりに委託していて、その契約で1枚発券ごとにいくらと決まっているのだと思われます。だからその分を正直に請求しているのでしょう。

しかし主催公演の当日券を劇場の窓口で買って手数料というのはまったくもって釈然としません。そんなのは前売いくら、当日いくらとチケット代に差を付けて、そこに吸収させてしまえばいいことです。前売で買ってくれたお客様向けに500円安くする(当日券を500円高くする)くらいは昔から行なわれていたことで、それは幕を開けるまで出来が読めない芝居の世界には向いていたシステムでした。そうやって丸めてしまえばそんなものだと納得するのに。

ひょっとしたら国の機関の一部として、そのような値付けは好ましくないとされているのかもしれません。だとしたら無理かもしれませんが、まあ何と言うか馬鹿真面目なところが新国立劇場というものだなと思います。

«座席と上演時間帯によるチケット代の値段差の実例