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2020年2月16日 (日)

あらためて新型肺炎が流行して公演中止は起こるか

1回目2回目と続いて、これが3回目のエントリーです。

千葉で発見、と言われていましたが、まとめサイトでは
・NTTデータへの派遣社員
・派遣先は泉岳寺の日本生命三田ビル
・市川から浅草橋乗換えで泉岳寺
らしいので、事実上都内です。そのNTTデータでは「感染者の当社拠点ビルにおける行動履歴と、14名の濃厚接触者が保健所によって特定されております」とリリースされています。この14名はまあ外出禁止でしょう。

もっと対応を徹底している事例としてGMOインターネットグループの対応が評判です。9割近い社員約4000人を在宅勤務、やむを得ず出社を認める場合でも条件付です。

日経の記事で、その後更新されたそうですが、ヤフーは100人以上集まる会合への参加を禁止したようです。これが当初は「仕事で訪れるセミナーや、休日のコンサートなどのイベントも対象だ」となっていたのが、「プライベートでの参加は規制していない」となったようで、報道も混乱気味です。そこも含めて紹介しているブログを引用しておきます。

ヤフーは14日、新型コロナウイルスによる肺炎の影響を避けるため、約6500人の全社員に対し、公私にわたり100人以上が集まる会合への参加を原則禁止した。仕事で訪れるセミナーや、休日のコンサートなどのイベントも対象だ。期間は未定としている。

出典:ヤフー、100人超す会合参加を禁止 新型肺炎対策で(日本経済新聞 2020年2月14日18時25分)

※2/16朝追記→上記日経の記事について、本記事公開直後の2月15日17時13分に内容が更新されています。更新後の記事では「プライベートでの参加は規制していない。」という記述が追加されており、もともとの報道が不正確だったのか実際の通達そのものが変わったのかはわかりませんが、「コンサート」という言葉は削除されました。これ以降の本記事の趣旨には影響ありませんが、「所属企業によってコンサート参加が規制される」というリスクが後退した(?)ことに関してはほっとしています。

在宅勤務は準備の整った、仕事が在宅でも支障がない職種に限られます。サービス業は本人がいないとどうにもならないことが多いです。でも、リスクとして上演側ばかり注目して、外出禁止令を出すなら国だと考えていたので、勤務先が外出禁止令を出すかもしれないリスクは見落としていました。ちなみにGMOグループの対策指示には「公共交通機関の利用禁止(代替として自家用車やタクシーの利用を許可)」があるので、日常の利用まで制限されないかもしれませんが、ここまで言われているのに遊びに行って感染したなんて、想像したら縮こまりますよね。

そこで芝居でありそうなシナリオを考えてみます。ぱっと思いついた案でこのくらいでしょうか。
(1)国を含む自治体レベルで外出制限発令が出る
(2)劇場側に感染者が出る
(3)劇場側のキーマンに感染者が出る
(4)上演団体側(スタッフ含む)に感染者が出る
(5)来場者が発症して追跡調査を受ける
(6)来場者側に何らかの外出制限発令が出る
(7)感染が原因で公共交通機関が止まる
(8)海外からの来日拒否

(1)になったらお手上げなので従わざるをえない。この場合、客が動けなくても上演だけ行なって返金対応しない、という強行手段を取りたい団体もあるかもしれませんが、公立の劇場は真っ先に従うことになるので、公立劇場で上演予定の団体は公演中止まで見据えた準備が必要です。

(2)だとNTTデータの例のように、消毒のため数ステージ中止、という可能性があります。この場合は大型台風やインフルエンザと同じようなそのステージだけキャンセル扱いになると思います。消毒作業をどのように行なうのかわかりませんが、あまり感染が広がりすぎると消毒作業待ちでもう数ステージが潰れる可能性もあります。でも客としても劇場がそうなったら行きたくないですよね。すると次以降の上演予定団体まで影響が長引く可能性もありえます。

(3)で制作担当や劇場の小屋主だったりすると、作業が止まる可能性があります。しかも他の制作担当や小屋付きスタッフや上演団体制作者が濃厚接触者扱いになる可能性も大です。公演中止まで視野に入れる必要があります。

(4)が出たら勇気を持って中止しないといけません。公演前14日なら諦める。公演中でも以降のステージは潰す。強行して上演したことが発覚したら今後の活動ができなくなります。借金で首が回らなくなるかもしれませんが、それも含めて準備を。

(5)も困りますけど、一応、濃厚接触者でない単なる客なら、上演は続行できるはずです。ただし(2)に書いたように消毒で数ステージが潰れる可能性あります。あとありそうなケースとして、大きな芝居では取材に来たマスコミ関係者が発症するというケースもあります。これは濃厚接触者扱いになるんでしょうか。だとしたら(4)のケースになって公演中止です。

(6)は先ほど引用したGMOグループやヤフーのようなケースですね。これだけなら上演はできるし、来ない客は前売チケットを捨てた扱いになるので上演側の損失は限定されます。ここでもう一段考えたいのは、一般の仕事をしながら芝居に関わっている人たちです。もし勤め先が外出を極力控えるようお達しを出したら、「こんな会社辞めても構わない」と芝居続行できる人がどのくらいいるか。これは該当する人たちはシミュレーションしてみてほしいです。

(7)がどういう形で出るかはわかりません。可能性として、消毒その他で短期間終日運行見合せなら、大型台風のような対応で過ごせます。嫌なのが、運転手や駅員が感染で足りなくなって、完全に止めない代わりに終電を早めるような対応を取ることになった場合です。19時から3時間半の大作を上演予定だったのが、22時以降の運転を取りやめるとなった場合、大型台風による予定運休と同じ対応を夜のステージにすべて適用(つまり該当ステージの公演中止)となります。あとはツアー公演で移動に制限がつくかもしれません。

(8)はどうなるかわかりませんが、流行っているから日本への渡航は見送る、と判断する団体が出てきても不思議ではありません。外資系の会社では東アジアへの出張禁止という会社もあるそうですから、芸術団体でも見送るところが出てくることもありえます。それをたてにされたらどうしようもないので、海外ミュージカル招聘、海外スタッフ上演、などを計画している団体は、おとなしく中止して保険申請でしょう。その手の公演はさすがに保険に入っていると思いますが、保険に入っていない場合は夜逃げかな。

とりあえず思いつきでした。そういえば宝塚の出待ちとかどうしているんだろう。よく知らないけど濃厚接触扱いにならないのか。しばらく出待ち入待ちは遠慮したいと正式に歌劇団からファンに伝えたほうがいいんじゃないのか。

客としても、観に行ったものか見送ったものか、判断に迷う雰囲気になってきました。感染のペースを考えると、ここから14日経ってもう1回14日経って、発症する人が大勢出てきて、3月中旬が最初の山場になりそうです。

<2020年2月17日(月)追記>

音楽の興行の情報を見かけたのでリンク紹介です。

音楽の興行では中国方面の海外公演が中止になっているようです。芝居だと海外はヨーロッパ公演が多くて中国公演しているしているところはあまり聞きませんが、ひょっとしたら海外からの訪日公演拒否の反対、日本からの海外公演を現地が拒否してキャンセル、はシナリオとして考えてもいいかもしれません。松尾スズキの台湾公演はさっさと済んでよかったですね。

そして物販グッズが中国製造が多くて納品困難につき販売延期、もシナリオとして見落としていました。Tシャツなんかは小規模公演でも売っているところはたまに見かけますので、物販を当てにした予算を組んでいる団体は要注意です。パンフレットはさすがに、日本が誇る大小の印刷業者による国内印刷製本発送で完結していると推測していますが。

「子午線の祀り」の詩的な語り

2021年に上演が決定したそうです。前回その壮大さを堪能した身としてぜひまた観たい。単に平家物語を現代劇にしただけならそうはならなくて、あの潮の流れを天体の運行から説明する語りが付くことで、壮大さが出てくるんですよね。

ということでその壮大さのおすそ分けを。

晴れた夜空を見上げると、無数の星々をちりばめた真暗な天球が、あなたを中心に広々とドームのようにひろがっている。ドームのような天球の半径は無限に大きく、あなたに見えるどの星までの距離よりも天球の半径は大きい。

地球の中心から延びる一本の直線が、地表の一点に立って空を見上げるあなたの足の裏から頭へ突きぬけてどこまでもどこまでも延びて行き、無限のかなたで天球を貫く一点、天の頂き、天頂。

地球を南極から北極へ突き通る地軸の延長線がどこまでもどこまでも延びて行き、無限のかなたで天球を貫く一点、天の北極。

遠く地平の北から大空へ昇って遥かに天の北極をかすめ遥かに天頂をよぎって遠く地平の南へ降る無限の一線を、仰いで大宇宙の虚空に描きたまえ。

大空に跨って眼には見えぬその天の子午線が虚空に描く大円を三八万四四〇〇キロのかなた、角速度毎時一四度三〇分で月がいま通過するとき月の引力は、あなたの足の裏がいま踏む地表に最も強く作用する。

そのときその足の裏の踏む地表がもし海面であれば、あたりの水はその地点へ向かって引き寄せられやがて盛り上り、やがてみなぎりわたって満々とひろがりひろがる満ち潮の海面に、あなたはすっくと立っている。

もうひとつありますね。

月の二・二分の一の力しかない太陽の引力のことを別にすれば、
誰もがプトレマイオスの天動説を信じてコペルニクスの地動説を誰も信じていなかった十六世紀西欧の劇詩人がいったように、
月の力で大海原は息づき、
海に向かって月の力に従うなということは無駄であり、
つまり潮の満ち干を司るもの、それは今でも月の女神である。
すなわち大空に跨って眼には見えぬ天の子午線を月の女神が音もなく過って行くと、
その真下で海は息づき始めようとする。
だが海水という液体がその形を変えようとするとき流体の内部で働く抵抗のゆえに、
また海を囲む陸地が作るさまざまに複雑な地形との関係において、
子午線を過って行く月を見上げながら海は、
なかなかすぐにその引力に応じて動き出そうとしない。
しかしやがてその地点に向かってあたりの海水は引き寄せられて盛り上がり、
引き寄せられる海水がもし狭い海峡を通るのであれば、
海水は激しい潮流となってその海峡をこちらへ走りぬけてこねばならぬ。
細長い日本列島の上に広々とひろがる天球を月が東から西へ、
角速度毎時一四度三〇分で東から西へ移動して行くにつれて、
さっき海峡を東へ走りぬけた潮は次には西へ流れ、
一日に二度めぐってくる潮の満ち干につれて、
一日に二度潮は海峡を東へ走りぬけ、
一日に二度潮は海峡を西へ走りぬける。

芝居では語り手が読みますが、台詞とかト書きというより散文詩と呼んだほうがしっくりくる文章です。こういうソリッドな文章が書けるようになりたいですが、何に注意したらこういう文章になるんでしょう。

2020年2月11日 (火)

歌舞伎座はマスクで接客中

新型肺炎の流行が危ぶまれる昨今ですが、二月公演の歌舞伎座は客案内のスタッフがマスクで接客していました。ご理解くださいと開演前のアナウンスでも流しています。幕見席で観たのでロビーの状況は不明ですが、おそらく同じだと思います。

ざっと計算して1ステージ2500万円、1ヶ月で12億5000万円のチケット代、そこにお土産や食事が乗る自前劇場の公演なので、なりふり構っていられない、という態度でしょう。とてもよいと思います。あの人数のマスクがよく確保できたな、という驚きもあります。マスクで感染は防げないとか言われていますが、対面で会話する機会の多い職業ならあったほうが多少なりとも感染率は下げられると思います。従業員にも客にも、安全アピールする意味もあるのでしょう。

他に日生劇場は1階に消毒用アルコールが置いてありました。東京芸術劇場も少なくとも地下の駅連絡通路のところには消毒用アルコールが置かれていました。ちら見ですが、使う人は使っていました。

歌舞伎座がやっているくらいだから他も真似したっていいだろう、といいたいところですが、マスクや消毒用アルコールが品薄なのがつらいところです。

てがみ座「燦々」東京芸術劇場シアターウエスト

<2020年2月10日(月)夜>

幕末。子どものころから絵筆を取らせて絵を描かせていた、葛飾北斎の娘、お栄。母の勧めで結婚するが、初夜から夫を置いて火事観察に出かけてしまうほど絵が好きで、絵師を目指すも夫からは反対され、実家に戻る。だがその絵も、北斎にも兄弟子にも版元にも、近所のおかみさんにも未熟を指摘される。絵師になりたいのに書きたいものが何か迷うお栄は、機会があるごとに絵を描き続けるが・・・。

再演だけど初演未見。女が絵師になるための苦労、というよりは、周辺人物も含めて、描きたくてどうしようもないけど描けない芸術家の苦悩と挫折と成長、を描いたように見えた。その点「絢爛とか爛漫とか」を思い出すけど、今回のほうがより主人公を応援したくなる展開。一人複数役が普通だったため、蕎麦屋の夫婦が長屋の人、の展開が観ていてわからなかったのがもったいない(アフタートークでわかった)。

良い役者が多かったけど、版元の福本伸一と、複数役をこなした中で石村みかを挙げておく。スタッフワークはむき出しの木と不織布がそっけないようでいていろいろ変化をつけていた美術に、真面目に見たら江戸っぽくないのに気にさせなかった衣装とヘアメイクがよい仕事。まだ詰められる箇所はたくさんあるけど、総じて十分楽しめる仕上がり。

制作に注文として、調べても上演時間が見つからなかったので昼公演での見物予定を立てられずにこの日になってしまった。アフタートーク抜きで休憩なしの2時間10分だったけど、再演なら約2時間くらいは読めるだろうからホームページでもTwitterでもどこかに描いておいてほしい。

アフタートークは長田育恵と渡辺えり。あの台詞がいいこの場面が素晴らしい元気をもらった、と渡辺えりがパワフルに褒め倒して8割方しゃべり続けたので、内容をあらかた忘れてしまった。が、女が仕事をする苦労、という渡辺りの振りに長田育恵が乗っていたので、素直にそちらが主題だったのか、でも江戸で女絵師もいたはずだし、とか余計なことを考えたのも忘れた理由のひとつ。あと主人公が「俺」というのは永井愛か、父親も画家だし、と訊かれて偶然と返していた。それで永井愛が一人称に「俺」を使う人で、父親が永井潔という画家だと初めて知った。あれで笑っていた観客は玄人。

松竹製作「菅原伝授手習鑑」歌舞伎座

<2020年2月10日(月)昼>

その優れた手跡から、弟子への筆法伝授をと帝に望まれた菅丞相。だが今の弟子は頼むに足らず、腰元と駆落ちしたため勘当していた源蔵を呼寄せ腕前を確かめると、勘当は取りやめぬが秘伝を伝授する。折りしも、家来の手引きで逢引していた菅丞相の養女と斎世親王が、菅丞相の政敵である時平の家来に見咎められてしまい、2人は逃亡方々駆落ちしてしまう。それを皇位の簒奪だと時平に逆用されて、菅丞相は蟄居となってしまう。菅丞相の若君だけでも助けなくてはと源蔵が救い出すが、菅丞相は流罪が決定する。

初段と二段目のダイジェスト、なのかな。この後に国立劇場の文楽で今やっている三段目が挟まって、四段目の寺子屋につながるはず。寺子屋で若君をかくまっていた理由まではわかったけど、その恩義の深さが現代の自分には伝わらず、薄味。仁左衛門の菅丞相はどんなものかと観に行ったけど、ほとんど動かない、超地味な役どころ。品格と言われればそれまでだけど、つらい。その分他の役者に目が行って、玉三郎の覚寿が何と言っても一番。梅玉の源蔵もよかった。

東宝主催「天保十二年のシェイクスピア」日生劇場

<2020年2月9日(日)夜>

漁師上がりの親分が治めていた宿場。引退を考えた親分は3人の娘のうち、業突張りな上の娘たちではなく、養女だが心優しい末娘に縄張全部を譲りたいと考えていたが、お互いの思い違いから末娘は家を出ることになる。やむなく長女と次女に分けて譲ることになったが、相手を蹴落とそうとする2人のために宿場は2つの勢力にわかれてしまう。もともとこの宿場の生まれだが流れ者になって戻ってきた男が、この現状を見て、うまくのし上がってやろうと算段を働かし始める。

蜷川版を観て以来2回目。最後まで堪能して満足。やっぱりこの脚本は面白い。スタッフワークで洋風な音楽と振付をつけたのに対して、木場勝己がそこにいてしゃべるだけで良い意味の土着感が出て、古今東西風味が拮抗する。オープニングの曲のノリの良さは蜷川版と甲乙付けがたい。

オープニングの曲が終わって、出だしがやや低調だったけど持ち直し。浦井健治のきじるしの王次が出てきた瞬間の華やかさがすごかった。ああこの人はミュージカルが本家だ、ストレートプレイに出るのはもったいないんじゃないのかと場違いな感想。高橋一生の佐渡の三世次だけ、メイクや衣装も込みで独特に作りこんだ不気味さを前面に出していたけど、なのにこの芝居には合う不思議。終盤は独壇場だった。

「祝祭音楽劇」と題したとおりの出来で、開演して2日目3ステージなので調整の余地のある役者も若干見受けられたけど、客としてはそんなところを気にするより楽しんだほうが得。そういう1本。木場勝己が隊長役を務めているのがバランスの要だと思うので、観られるものなら今回もう1回観たい。

2020年2月 6日 (木)

カオルノグチ現代演技「セイムタイム・ネクストイヤー」下北沢駅前劇場

<2020年2月5日(水)夜>

それぞれ出張先と旅行先であるレストランで知合って一夜を共にした男女。互いに子供の写真まで見せ合うくらい心を許し、そのまま別れるに忍びなかった2人が出したのは、毎年一晩に限って同じ場所で会うこと。そして毎年お互いの配偶者の良いところと悪いところを伝えあうこと。

初日。前回とはうってかわって、翻訳物のストレートプレイを、まさかの挟み舞台にネタ演技も含めて直球の演出。本当に駅前劇場かと疑われるくらい品位に満ちた仕上がりに驚く。役年齢に応じて丁寧に声を変えてくる野口かおると、それに対抗しながら思わぬ特技も披露する山岸門人、どちらも初日からよい仕上がりで、しかもさらに伸びしろがありそう。スタッフもよかったけど第一に衣装を挙げたい。両面客席に配慮した美術もよかったけど両面に満遍なく見せた演技もよかった。

アメリカで上演すると近代史が重なるから、もう少しシリアスな要素が強くないと片手落ちになるところ、そこを追いすぎず2人の対話に寄せたのは演出判断か。直球の仕上がりすぎて演出の手柄がどこまでかはわからないけど、明星真由美の演出は結構よいのかも。

観終わって当日パンフを読んだら、これは飲み屋のトークから立ち上がったという、別の意味で王道な企画だと知って2度驚く。こんな芝居ができるなら毎晩でも飲んでほしい。

2020年2月 4日 (火)

「イノサンmusicale」のパリ公演中止の経緯がよくわからない

ミュージカルも2.5次元も普段の守備範囲からは外れているので見落としていましたが、2月にパリ公演を予定していたのが中止になったそうです。先にそれを難じた記事から見てみます。申し訳ありませんが全文引用で日刊スポーツより「ミュージカル『イノサン』中止 担当P対応に呆れた」。

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

1月中旬、人気漫画を舞台化したミュージカル「イノサン」のパリ公演の中止が発表された。歌手の中島美嘉が主演し、宮本亜門が演出した舞台だが、中止のニュースを聞いて、「やっぱりな」と思った。

公演は東京で11月から12月にかけて行われたが、公演前の記者会見の時に渡されたリリースに「2月8日にパリ公演」と小さく書かれていた。関係者に聞くと「予定です」と言うだけで、詳細は話してくれなかった。その時、本当にパリ公演が出来るのか、半信半疑だった。

海外での公演ともなれば、出演者やスタッフの渡航費と宿泊費、さらに大道具、衣装、小道具の輸送費などでかなりのお金がかかる。しかも、たった1日だけの公演だったら、大赤字となるのは必至だ。公的な補助金や大企業などのサポートがあればいいけれど、それもなかった。「無理だろうな」と思っていた。

だから、中止の発表にも驚きはなかった。それ以上に、中止の発表直後に一部報道で、中止の遠因として「公演の千秋楽後の稽古で、プロデューサーの意向で脚本が変わった」ことなどが挙げられ、当のプロデューサーがツイッターで反論したが、公演終了直後に2カ月先の公演のために稽古する訳もないし、公式に謝罪もしていない担当プロデューサーがツイッターで堂々と反論だけはする、素人丸出しのやりとりにあきれた。主演の中島が謝罪のコメントを出したが、彼女には罪はなく、被害者でもあるだけに気の毒だった。

2・5次元ミュージカルの人気などもあって、安易に舞台制作に乗り出す傾向があるけれど、今回の騒動は大いなる警鐘になるだろう。

「2月8日にパリ公演」とありますが、後述の通り2月9日の記載ミスと思われます。この記事では資金不足を一番の理由に挙げています。実際の経緯がどうだったのか、公式サイトのお知らせで、関係ある情報を引用しながら追ってみます。

・2019.5.16 横内謙介脚本,宮本亜門演出にて2019年11月29日~12月10日東京、2020年2月パリで上演決定!

また本公演は2019年11月29日(金)~12月10日(火)にヒューリックホール東京にて、2020年2月にはパリでの上演が決定いたしております。

・2019.6.20 パリ公演の主演情報について

2020年2月に行われるパリ公演の配役が決定いたしました。

アラン・ベルナール役を梶裕貴、また東京公演では前山剛久が演じるアンドレ・ルグリ役をパリ公演では武田航平が演じます。その他の主な配役は東京公演と同様となります。

・2019.11.01 パリ公演情報

パリ公演が2020年2月9日にパレ・デ・コングレ・ド・パリにて上演決定いたしました。

・2019.12.11 パリ公演 出演キャストに関する重要なお知らせ

平素は『イノサンmusicale』にお引き立て、お力添えを賜り誠にありがとうございます。

2020年2月9日にパレ・デ・コングレ・ド・パリで上演致します、『イノサンmusicale』パリ公演に、アンドレ役にて出演して頂く予定でございました武田航平様につきまして、主催のスケジュール調整が至らず、やむを得ず降板となりますことをご報告いたします。

武田様の出演を楽しみにされていた皆様には、ご心配、ご迷惑をお掛け致します事を深くお詫び申し上げますとともに、『イノサンmusicale』にご出演頂いております全てのキャストの皆様、関係者の皆様へ多大なるご迷惑をおかけすることを重ねてお詫び申し上げます。

なお、パリ公演は予定通り上演致します。

代役や、パリ公演ツアーにすでに申し込みをされている皆様へのキャンセル並びに払い戻し対応に関しましては追ってご案内をさせて頂きます。

今しばらくお待ち頂きますようお願い申し上げます。

2019年5月16日時点でパリ公演決定と銘打って、2019年6月20日にパリ公演キャスト発表、2019年11月1日に日程と劇場を発表、東京公演終了の翌日となる2019年12月11日に降板発表。6月に決まっていたキャスティングでスケジュール調整が至らず降板とは、いくら芸能界でもすぐには信じられません。「主催のスケジュール調整が至らず」とあるので実態はともかく落ち度は主催にあって、東京公演終了を待っての降板発表と読取れます。

そしてお知らせページに記載がありませんが、トップページに中止案内へのリンクがあります。2020年1月14日に発表です。

この度、2020年2月9日に上演を予定しておりました「イノサン musicale」のパリ公演を中止いたしますことをご案内いたします。

「イノサン musicale」は2019年11月29日から12月10日まで日本東京公演を上演いたしており、かねてからの企画通り、東京公演期間中も含めパリ公演への準備を続けてまいりま
した。

しかしながら、諸般の事情により、パリ公演を中止することとなりました。
パリ公演を楽しみにしてくださったお客様および東京公演をご観劇いただき本作品に携わってくださったお客様皆様に心より深くお詫び申し上げます。
本結論に至りますまでに時間を要し、ご案内が遅くなりましたことを重ねましてここに深
くお詫び申し上げます。

当公演のJTBオフィシャルツアーに申し込まれたお客様におかれましては、全額返金させ
ていただきます。ご返金手続きに関しまして、下記ツアーデスクより皆様へご連絡させて
いただきます。

<JTBオフィシャルツアーに関するお問合せ>
E-mail:X@jbn.jtb.jp
03-XXXX-XXXX 営業時間/10:00~17:30 (土日・祝日休業)

<公演に関するお問合せ>
公演公式HPのお問合せフォームよりお問合せください。
https://jnapi.jp/stage/innocent/index.html

またパリ公演を実施するという企画に集い準備をしてくださっていた出演者および甚大な
ご協力を賜りました関係各社にもあらためまして厚く感謝いたしますと共に、深くお詫び
申し上げます。

2020年1月14日「イノサン musicale」企画・運営 Jnapi L.L.C.

スポニチアネックス「中島美嘉、古屋敬多W主演舞台 パリ公演中止…プロデューサーと一部キャストに軋轢か」ではもう少しいろいろ書いています。冒頭の日刊スポーツで「中止の発表直後に一部報道で」と書かれていたのはこの記事だと思われます。こちらも申し訳ありませんが全文引用。

 来月9日に上演予定だった、中島美嘉(36)と「Lead」古屋敬多(31)のダブル主演舞台「イノサン musicale」のフランス・パリ公演の中止が14日、発表された。海外公演が上演まで1カ月を切って中止となるのは異例の事態だ。

 舞台は坂本眞一氏の漫画が原作で、18世紀フランスに実在した死刑執行人の人生を宮本亜門氏(62)演出で描く話題作だった。公式サイトは中止理由を「諸般の事情」と説明。複数の関係者の話を総合すると、舞台を取り仕切った女性プロデューサーと出演者に軋轢(あつれき)が生じたことが主な原因という。

 同作スタッフによると、女性プロデューサーは脚本や演出の方針を一本化することに難航。昨年11月の東京公演前から1人の出演者が「この内容では、パリで公演するのは難しい」と申し出たが、改善される兆しがなかったという。12月10日の千秋楽後、パリ公演に向け稽古に入ったが、同11日に武田航平(34)が降板。代役を立てられず、公演を維持できなくなった。

 千秋楽後の稽古は海外渡航中の宮本氏に代わり女性プロデューサーが統括したが、演劇関係者によると「その間に稽古の日程管理や脚本がめちゃくちゃになったと聞く」という。

 また「女性プロデューサーが一部俳優に対し“仏公演にマネジャーは連れて行けない。行くなら実費で”と言いだし衝突を招いたようだ」(スタッフ)。

 プロデューサー側の関係者は、軋轢が生じたことは認めつつ「演出や内容への要望は受けたが、プロデューサーとしては可能な限り応える努力はしたという認識」と説明。またマネジャーの仏渡航拒否についても「確かにご遠慮願った方もいるが、限られた予算内での判断」と主張した。

 今作は最初からパリ公演を前提に計画され浅野ゆう子(59)や人気声優の梶裕貴(34)も出演。資金確保のため、チケットの販売に積極的に協力するなど尽力したスタッフ、キャストも多い。関係者は「フランスは1公演だけ。本場の舞台を心から楽しみにしていた出演者もいた。本当に残念」と話している。

読んで「脚本や演出の方針を一本化することに難航」というのがよくわからない。Wキャストで複数演出案を上演していたのを1日公演で選ばないといけなくなったのか、異なる会場に対応するために出した案が総スカンをくらったのか。ちなみに東京公演のヒューリックホール東京は通常886席、パリ公演先に上がっていたパレ・デ・コングレ・ド・パリは、Wikipediaによれば大劇場(3723席収容)と小劇場(650席)がある。普通に考えたら小劇場ですが、1日公演のために大劇場とかやらかす可能性もあるし、なんともいえない。ちなみにJTBのツアーは昼間の1ステージだけだったようです。

「12月10日の千秋楽後、パリ公演に向け稽古に入ったが」は冒頭の記事で「公演終了直後に2カ月先の公演のために稽古する訳もない」と否定されているので体裁を整えたのかもしれませんが、プロデューサー側の「確かにご遠慮願った方もいるが、限られた予算内での判断」とのコメントを取っているので、まったくの飛ばし記事でもないと思われます。

現地まで行ってから中止なら目も当てられないので、ここまでなら、内部でトラブルがあったとしても、客に迷惑をかけたとしても、死ぬ直前でよく踏ん張ったと応援したい。ところがスポーツ報知で2本記事がある。2020年1月15日分

 HPでは中止の理由を「諸般の事情により」としているが、複数の関係者によると、スケジュールの調整ミスや演出に関する連絡不足などで制作サイドに対してキャスト・スタッフ側からの不満が相次ぎ、東京公演後に数人の出演者が降板を申し出ていたという。ファンの間でも、公演DVD注文時の不備が続出するなど不信感が広まっていた。パリ公演には日本から駆けつけるファンも多く、鑑賞ツアーも組まれていた。HPではオフィシャルツアーの申込者には返金の意向を示しているが、自らチケットを手配した観客へのアナウンスはない。主催者側はこの日、スポーツ報知の取材に対応しなかった。

で翌日2020年1月16日分

 番組では主催者側がパリでストライキがあることを中止の原因の一つとしたことを伝え、さらに主催者側から番組へ送られたメールの内容を紹介。そこでは出演者と軋轢(あつれき)があったと伝えられたプロデューサーについて「女性プロデューサーは脚本にも演出にもキャストのセリフひとつを増やす希望を叶えるためにで、むしろ奮闘していました。あの宮本亞門さん相手に何度もかけあっていました」と擁護。「一部の情報を故意に流した方のために若くてこれだけの座組をつくった才能のあるプロデューサーが消えようとしています。それこそ報道すべきことではないでしょうか」と、報道に遺憾の意を示していた。
(中略)
 また、コメンテーターとして出演のフリーアナウンサーの楠田枝里子(68)は「パリでストライキなんてしょっちゅうやってるわけで、何の理由にもならない。海外で日本人が恥をかくようなことはやめてもらいたい」とバッサリ。直前で劇場をキャンセルしたことについて「なんだ日本人はってなるじゃないですか。次にやる人、後輩の足を引っ張るようなことは本当にやめてほしい」と怒りが収まらなかった。

 タレントの薬丸裕英(53)は「発表の仕方が本当によくないと思う。諸般の事情ってなると、原因は何かといろいろ追及される。お客さんを第一に考えないと。フランスに行くっていうことは大ごとですよ。なんでもっと早く発表できなかったのか。12月には中止が決まってたんじゃないかってウワサもありますからね」と苦言を呈していた。

「女性プロデューサーは脚本にも演出にもキャストのセリフひとつを増やす希望を叶えるためにで、むしろ奮闘していました。あの宮本亞門さん相手に何度もかけあっていました」というのがひっかかる。キャストのセリフひとつ増やす減らすなんて、専門の脚本家を呼んでいる公演で普通はプロデューサーが口を挟むとは思えない。

と思ったら当の本人がTwitterでつぶやいていました。冒頭の記事で「公式に謝罪もしていない担当プロデューサーがツイッターで堂々と反論だけはする」のことです。

ある報道にございました 千秋楽後の稽古はまだ1日も実施されたこともなく、パリに向け脚本を変える話もでておりませんでした。 脚本家や演出家というそれぞれのプロが存在するなかでPが脚本を変えてしまうようなこともございません。

料金を払って予約していた客ならまず謝れよと怒るかも知れませんが、それを除けば、普通そうだよな、と思います。ただこの人が、企画運営を担当していたJnapi L.L.C.の社長でもあるんですよね。じゃ番組へメールを送ったという主催者側の人間は誰なのか。それに「パリでストライキがあることを中止の原因の一つとした」というのも、楠田枝里子のコメントどおりで、いかにも拙い。検索するとパリの劇場側には公演中止の可能性を連絡して、6日前にはキャンセルしていたという情報もある。

かれこれ突き合せると、人手が足りず(または制作能力の不足したスタッフしかおらず)、資金も足りない中でスケジュールの調整ミスや演出に関する連絡不足が相次いで、カンパニーがガタついていていた。資金については当てにしていたスポンサーから蹴られたのか、出演者やスタッフに張りすぎて足りなくなったのかは不明。ただ、11月の東京初日前にパリ公演を「予定です」としかいえないくらいの状態になっていて、6月に役まで発表されていた武田航平が降板しても発表を東京千秋楽後にするのが精一杯、主催の責任を認めるくらいガタついていた。それも氷山の一角で、他にも降板を申し出ていた出演者がいた。もともと赤字の1日1ステージだけの海外公演、出演者のマネージャーも連れて行けない資金不足のなかで、複数人の代役を探して追加稽古する余裕があるはずもない。東京千秋楽後の早いうちにパリ公演中止を決めて、予定されていた追加稽古もキャンセルした。何らかの理由で(一部関係者間での中止の調整か、あるいはストライキなどの理由をつけるためか)正式決定を遅らせていたが、まだパリ公演中止はおおっぴらにしていなかったので、事情を知らない関係者にはプロデューサーが稽古の日程管理を目茶苦茶にしたように見えた。1月になってから公演中止の手続を進めて、発表は1ヶ月を切った時期になった。

くらいが実情かなと推測しました。

2020年1月30日 (木)

新型肺炎が流行して公演中止は起こるか

国内の感染者が見つかって、「国際オリンピック委員会(IOC)が世界保健機関(WHO)と連絡を取り合っている」という話からすわオリンピックが中止か、と思ったら誤報だった、と喧しくなってきました。中国の感染状態を見ていると、本当に流行るならオリンピックより前に流行しそうです。

感染経路は空気感染はなくて飛沫感染するタイプではないかと言われていますが、役者が大声を出すときにつばが飛ぶのが見えたりする芝居はその点の印象が悪い。しかも劇場みたいな閉鎖空間で、空間の狭い小劇場ならなおさら。客席だってマスクをしていても咳やくしゃみをした瞬間に周囲の顰蹙を買いそうな雰囲気です。

このブログでも台風(自然災害)の公演中止やインフルエンザについては何度か取上げました。本当に小規模な公演の場合は1ステージの中止でも死活問題なのですが、これらが原因の公演中止は数日、数ステージの中止で再開されていました。そこに、まさか外出禁止令はないと思いますが、外出自粛令でも出たらどうなるか。あるいはもっとありそうなシナリオとして、新型肺炎にかかった役者がひとりでもいたらどうなるか。

観察期間が14日間と言われているので、2週末10日間くらいまでの規模なら公演直前、小屋入り前くらいに発覚したらアウト、その役者と一緒に稽古していた他の役者や演出家たちも事実上アウトです。代役も立てられませんし、症状や受診結果を隠して出演する役者もいるかもしれませんが、それが発覚したら仕事どころか事務所ともども社会的に干されかねません(これは流行の程度によって左右されるところで、むしろおもいっきり流行して感染者数が一定割合を越えたら一転、同情票が集まる可能性はあります)。

そして丸ごととは言わなくとも、公演期間ほぼ全部が中止になるくらいなら、中途半端に上演せず丸ごと中止にしたほうがいいと制作者の算盤が出ることもありうる。そうなると今度は公演に関係する予定だった役者だけでなくスタッフまで影響が出る。

生舞台復権の可能性も考えられます」なんて昨日書いた筆でこんなことを書きますが、考えるだけならタダなので、関係者は公演中止になる可能性や条件や算盤を、頭の体操のつもりで一度考えてみてはいかがでしょうか。

2020年1月29日 (水)

CG(かもしれない)映画対生舞台

「キャッツ」は長年上演されているのにまだ観に行ったことがありません。ミュージカルと劇団四季と、両方への偏見が理由です。そうしたら映画の「CATS」が公開されて、舞台も観ていないのに映画版を観てたまるか、と思っていたらこちらは不評の嵐。不評すぎてむしろ気になってくるほどです。

で、面白い感想を見つけたので紹介です。なお引用元ブログにはネタばれがあるので気になる人はご注意を。

ただ重要なことは、欧米の人たちはそういうツッコミを「もちろん『CATS』という物語そのものは最高なのだが」という前提のもとにやっているのではないかということである。あの人たちはたぶん、CATSがどういう話なのかを知っている。僕らが「ドラえもん」のストーリーを知っているように。これはいわば日本における鋼の錬金術師やジョジョのような「人気漫画の実写化」の時に起きた現象に近いのではないかと思う。
(中略)
もちろん、跡形もないほどに原作をアレしてしまって、原作を知らない一般人が見てもつまらないというケースはある。でも少なくとも、この映画『CATS』は、舞台の本質的なところ、魂みたいなものはちゃんと受け継いで映画になっていると思う。
(中略)
もっと言えば「CGの普及によって、映画はむしろ舞台にかなわなくなった」という興味深いジレンマも感じた。例えば劇中で猫たちが見事なタップダンスを披露するシーンがある。一糸乱れぬ見事なパフォーマンスで、これを舞台で生で見たなら拍手喝采だろう。ただ映画の観客はもはや不幸なことに「これCGや編集でいくらでも後から綺麗に揃えられるよね」と心の中で思ってしまう。実際にそうである。たとえそのタップダンスが加工なしの本物だとしても、生の舞台で目の前で見たら感動するものに、映画の観客は感動できなくなっている。それがCGという万能の魔法が「万能の代償として感動を奪い去る」という形で映画から奪っていったものなのだろう。まるで良く出来たおとぎ話の苦い結末のように。

観客は作り手のエネルギーに反応するところがあって、その時代の粋を尽くしたものには反応してしまいます。今でも楽しめる昔の映画は、やっぱりある種のエネルギーが詰まっています。技術もそのエネルギーが欲する表現を実現するための手段のはずなのに、それが進化した挙句に「万能の代償として感動を奪い去る」ように作用するのだとしたら、やっぱり皮肉です。

そして見方を変えると、生舞台復権の可能性も考えられます。モノよりコトと言われてはや数年、原則同時には1箇所でしか上演できない、生身の人間が演ずるがゆえに表現にも制限がある、だけど生身の人間が同じ場所で演ずるがゆえのエネルギーや、制限が刺激する想像力が、映画を越えると広く認知される日が来るかもしれません。

ま、適当なんですけど。

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