恒例の決算、上半期分です。
(1)ヨーロッパ企画「インターネ島エクスプローラー」本多劇場
(2)松竹主催「壽初春大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座
(3)東宝製作「ピアフ」シアタークリエ
(4)Bunkamura主催企画製作「クワイエットルームにようこそ」THEATER MILANO-ZA
(5)インプレッション製作「チェーホフの奏でる物語」2026/01/23-02/02@東京芸術劇場シアターウエスト
(6)PARCOプロデュース「志の輔らくご in PARCO 2026」PARCO劇場
(7)アイオーン主催「ゴドーを待ちながらを待ちながら」赤坂RED/THEATER
(8)アイオーン主催「ゴドーを待ちながら」赤坂RED/THEATER
(9)トライストーン・エンタテイメント/ディライト・エンタテイメント企画制作「いのこりぐみ」IMM THEATER
(10)新国立劇場演劇研修所演劇研修所「社会の柱」新国立劇場小劇場
(11)新国立劇場オペラストゥディオ「ウィンザーの陽気な女房たち」新国立劇場中劇場
(12)劇団アンパサンド「歩かなくても棒に当たる」東京芸術劇場シアターイースト
(13)ACT.JT主催「第12回 立合狂言会」国立能楽堂
(14)Dialogue!「101分のペリクリーズ」シアター風姿花伝
(15)ホリプロ/東宝企画制作「メリー・ポピンズ」東急シアターオーブ
(16)ケムリ研究室「サボテンの微笑み」シアタートラム
(17)ゴーチ・ブラザーズ主催「ポルノ」本多劇場
(18)野田地図「華氏マイナス320°」東京芸術劇場プレイハウス
(19)KOKAMI@network「トランス」本多劇場
(20)松竹/梅田芸術劇場主催「ハムレット」日生劇場
(21)新国立劇場主催「エンドゲーム」新国立劇場小劇場
(22)エイジポップ/CEDAR主催企画製作「十二人の怒れる男」博品館劇場
(23)関西テレビ放送企画制作「曲がれ! スプーン」IMM THEATER
(24)青年劇場公演「Sの顛末」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
(25)梅田芸術劇場企画制作「BOOP! The MUsical」東急シアターオーブ
(26)KERA CROSS「シャープさんフラットさん」紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
(27)ミックスゾーン企画製作「コテンペスト」本多劇場
以上27本、隠し観劇はなし、すべて公式ルートで購入した結果、
- チケット総額は 265050円
- 1本あたりの単価は 9817円
- チケット購入手数料は 12595円
です。チケット購入手数料は払った芝居と払っていない芝居とが混ざっての上半期通算です。また上半期は映画館での芝居映像見物はありません。観たかったのですが時期が合いませんでした。
1本あたりの単価は1万円をぎりぎり切りましたが、購入手数料を入れれば超えています。昨今の物価高に連動したチケット代の値上がりもありますし、ミュージカルや歌舞伎を観たこともあります。でも最大の理由は、いわゆる小劇場らしい小劇場の芝居発掘を怠った結果だというのが自分なりの分析です。見覚えのある、つまり実績があってベテランの役者や脚本演出家に引張られて芝居を選んだら、それは高い芝居になるだろう、ということです。その補足は後でまた書きます。
ただし高額芝居のチケットを何本か買った経験からすると、上演する側も何とか1万円は切りたいと頑張っているのも伝わってきました。さすがに1万円を超えると熱心なファンかベテラン観劇者ばかりになって、将来の観客が育たないという判断もあるのでしょう。学生向け割引もそれなりに広まっているようです。ただし今回の決算のように、手数料を入れたら1万円を超えるという微妙なラインで頑張っている団体が多いので、これもいつまで持つか危ぶまれます。
それも有名人がそこそこ出演したらさすがに1万円では難しく、一般席は1万2000円から1万3000円、というのが昨今の(元小劇場を含む)商業演劇の相場でした。その分だけミュージカルや歌舞伎は1万8000円前後が相場になりつつあり、このまま行くと来年後半あたりには2万円が珍しくない相場になりそうです。
チケット代の値上がり自体は物価高、ひいては表方裏方まで含めての稼ぎを手当てしないといけないからしょうがないですが、その分だけ観客として脚本演出役者に求めるものも上がってしまうのは許してほしいです。これも後で補足を書きます。
寸評です。笑わせてもらった(1)(12)(27)、歌って踊ってを楽しんだ(4)(15)(25)、古典の力を考えさせられた(6)(10)(11)(14)(21)(22)、近年作の再演もいいものだと楽しめた(19)(26)、新作も気を吐いている(16)(24)です。重なる芝居もありますがとりあえずどこか1つのカテゴリーとします。
これをひと搾りして(8)(12)(14)(15)(16)(21)(22)(24)(25)(26)(27)、さらにもうひと搾りして(12)(14)(24)(26)になります。上半期で一番笑った(12)、上半期で一番健全な熱気に充ちていた(14)、上半期の新作で一番力作として残しておきたい(24)、上半期で個人的に一番染みた(26)、とそれぞれ異なる理由があって選び難いところですが、上半期の1本は(12)とします。あの時期へろへろだった自分をあれだけ笑わせてくれた腕前は認めなくてはいけない。ちなみに(26)はもう一度観ようとした日程が台風で予定が狂い、7月再挑戦を迷っているところです。
この上半期も、演目なり団体なりを「一度は観たい」と「もう一度観ておきたい」がテーマでした。(3)(8)(10)(11)(12)(13)(14)(15)(17)(19)(21)(22)(26)です。裏テーマの「まだ行ったことのない劇場にも行っておきたい」も(22)でひとつ潰せたのはよかったです。ビルの形状のため客席が変形なのとエレベーター必須っぽい構造とがやや難ですが、あんなところにあの規模の劇場があるとは知りませんでした。
ここから上半期の振返りです。観たい芝居を見逃して、飛びついた芝居がいまいちで、チグハグな半年でした。が、そんな中でも収穫はあります。
まずはベケットの(8)(21)を短い間にまとめて観られたこと。どちらも素直な演出だったおかげで、脚本を見定められました。別に不条理劇というほど不条理劇ではなく、戦争明けで将来への展望が定まらない当時の社会情勢を、少ない登場人物の芝居に仕上げただけです。主張と構成がはっきりしている西洋芝居よりは、むしろ日本の芝居の「見立て」に近いと感じました。だからそういう時代である今、立続けに上演されたのでしょうし、今後も似た時代になれば上演されるでしょう。そこまで見定められたので、ベケットは当分いいです。「一度は観たい」「もう一度観ておきたい」が上手く嵌まったケースです。
次にミュージカル。新しいミュージカルは歌い手(役者)と踊り(ダンサー)が分かれている演出が多いです。その方が個々のパートを磨けますし、不足の事態があったときの代役代案も立てやすいでしょう。ただ自分は、同じ役者が歌って踊るミュージカルが好きなのだと気が付きました。そう言えば劇団四季を気にしたきっかけの「キャッツ」もそういう演目でした。だから(15)や(25)は満足度が高くて、(4)はムービング以上の振付がもっとあったらよかったのになと考えます。
そしてシェイクスピア。今年は何故かシェイクスピアの上演が目白押しで、上半期で観られた範囲だとオペラ化も含めて(11)(14)(20)(27)です。古典と呼ばれる芝居を一度は観ておきたいと思うようになってからもシェイクスピアは別にいいやと考えていたのですが、(14)を観て考えを改めました。やっぱり一度は観ておいたほうがいい。蜷川幸雄がいればシェイクスピアシリーズに付いていけばよかったのですが、吉田鋼太郎に移ってからはホリプロ役者の人気者を遠慮なく引張り出すからチケットが手に入りません。この上半期も「リア王」は観られませんでした。小さい公演まで目を配ってなるべく見落とさないように拾うことを心掛けたいです。
あとは数少ない小劇場で当たりを引いた、寸評でも最後まで残っていた(12)(14)(24)の3本。腕前と、腕前以上の熱意が噛合った芝居は観ていて本当に気持ちがいいです。そして小劇場と呼ぶかは微妙ですが、いい歳のおっさんおばさんたちが馬鹿をやり切った(27)もこのカテゴリーに入れてもいいかもしれません。もちろん熱意だけでは足りなくて、たとえば(10)は古典の厚みと社会を構成する一員としての視点の両方から攻める必要があって、及んでいませんでしたが、及ばないなりに全力を出して歯が立たないのも、それはそれでありだと思います。
再演もののうち、古典ではなく小劇場芝居では(12)(17)(19)(23)(26)が当てはまります。これが出来が千差万別で、脚本演出役者までオリジナルと同じ(12)は今回の1本に選んだくらいの上出来。脚本演出は本人が行なっても役者の異なる(19)は良し悪し半々。脚本のみで演出も役者も(一部を除いて)異なるのが(17)(23)(26)ですが、脚本の完成度がどれだけ高くとも魂を籠め損ねた(23)、脚本だけでなく演出と役者も込みで完成する作品だが未完成に終わった(17)、オリジナルと若干異なるも高い完成度を見た(26)でした。この辺が小劇場脚本の難しいところで、脚本演出役者の全てを気にしないと当たりを引けません。
おおまかに言えば、小劇場芝居は脚本単体での完成度は低いことが多いのだなと気が付きました。脚本に含まれるものを引出すだけでなく、演出と役者で足していく必要のある脚本が多いです。翻訳物だと、芝居の出来がいまいちだった場合に構成の壁に跳ね返されて失敗が見えるようなことがままあって、この上半期だと(10)がそういう1本でした。でも日本の小劇場芝居だとなんとなくぐずぐずになる。個人的に出来に不満があった(17)(23)ですが、(一部パートは堪えつつも)ぐずぐずに崩れた(17)に対し、構成の壁を超えて立ち上げられなかった(23)との違いは、興味深いです。そう考えるとやはり(26)の成功が目立ちます。
芝居の話はここまで。業界的な話題は、この上半期はほとんど追えていません。公演中止の話で気が付いたものを残しましたが、割愛します。
あとは個人の話。
去年の年末から続いた体調不良が、今でこそ回復気味であるものの、年を越して特に前半はアカン状態が続きました。ブログに書く暇ネタが少なかったことと、各芝居の感想がごく短いものになったのはそれが理由です。その割に本数が多いのは、前売券を買うことが増えてきたからです。手元のチケットを出かける理由に使うようなところがありました。そんなだったので長い文章を書くのが面倒で、昔の1行レビュー時代を思い出しながら書いていました。
この体調不良が何を引起したかというと、新しいものへの挑戦活力が弱まって、見覚えのある要素のある芝居に偏ることになりました。芝居見物は個人の趣味なので、別に悪い事ではありません。チケットも高くなるのですが、不遜ながら、金なら払うから楽しませてくれ何とか自分を元気にしてくれと割と考えていました。
ところがと言うべきか、そういう了見で選んだ芝居はどうにもいまいちな物が多くなります。不思議な話なのですが、選び、観る、こちら側の熱意が結果に表れがちです。オカルトですが。
そしてそういうオカルトな因果関係を一人納得する一方で、つまらない芝居への遠慮がやや欠けていました。感想の文章を短くしたため。短いと八方考慮する余裕がないので、面白かったかつまらなかったかをはっきりさせることが必要になります。が、それだけではありません。
値上がりしたチケット代の芝居。それを選んだのは自分ですが、体調がすぐれないところを押して高い芝居を観るからにはそれなりに大きい期待値があるところ、下回る仕上がりの芝居を観てしまうと、がっかりを通り過ぎて腹が立ってしまうこともありました。それが感想の文章に表れてばっさり書いてしまう。所詮素人の感想なのだから文章だけは丁寧に書きたいと願っていたのに。
気付いたのなら直せばいいのですが、体力が落ちているためそれに気付いて止める力が足りない。しばらく後で読返すと、これは老化の初期現象ではないかと考え込んでしまいます。
ただし、です。久しぶりに短い文章で感想を書くのはそれはそれで気分転換になりました。去年まではひたすら感想が長くなっていたので、短い感想にして書きたいことをはっきりさせるのは、かならずしも悪いことではないなとも考えています。なので下半期も感想は短いスタイルで書くことにします。
まとめると、芝居は昔も今も玉石混合ですが、自分の好みをはっきりさせて熱心に探せば、面白い芝居は今のところはまだまだたくさん上演されています。それを掴めるかどうかはやっぱり、時間とお金と運と、何より体力次第です。年間50本ペースでも足りないのですが、それを超えると体力勝負になってくる。そして数を撃たないで楽に当たりばかり引こうとする図々しい了見ではかえって外れを掴むことになる。そこはあらためて思い知らされました。がっつりした料理を味わうために体力が必要なように、がっつりした芝居を味わうためには体調を万全にして臨まないといけません。
引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。