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2025年7月 9日 (水)

劇場休演日を初日に指定する大ポカで公演日再設定

株式会社パルコ企画製作舞台「ヴォイツェック」のことです。スピード勝負っぽいのでまずは公式サイトより。日付が入っていないところに慌ただしさを感じさせます。2025年7月9日発表です。

「ヴォイツェック」9月公演スケジュール変更のお知らせ

東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕を予定しておりました「ヴォイツェック」につきまして、公演スケジュール決定時の弊社の確認が行き届かず、東京芸術劇場の休館日である9月22日(月)が含まれていることが判明いたしました。

つきましては、本公演の開幕日を9月23日(火・祝)に変更いたします。
ご来場を予定されていたお客様にはご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

当初は9月22日が初日に設定されていました。この日程がいつ発表されたかというと2025年6月12日と思われます。検索したところ、すでに日程を書換えている記事もあるところ、シアターテイメントNEWSの記事がまだ残っていました。

森田剛 主演 小川絵梨子 演出 パルコ『ヴォイツェック』秋上演。コメントも_

2025年6月12日
(中略)
概要
パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』
会期会場:
東京:2025年9月22日(月)~9月28日(日)/2025年11月7日(金)~11月16日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
(後略)

つまり6月12日に公に発表されて、本日7月9日まで、ほぼ一か月、誰も気が付かなったことになります。

東京芸術劇場のサイトには公演情報が見当たりません。一度削除されたのではないかと考えます。ただ、その日が休館日という情報は見当たらず、劇場カレンダーもその日は1つだけイベントがシンフォニースペースやリハーサルルームを使って行なわれるので、この日が休館日というのを表に見えるサイト情報からだけでは判断するのは困難です。

チケットの発売日がチケットサイトを見た限りではいまいちわからないのですが、すでに削除されたinstagramの情報だとどうも8月6日(土)がチケットサイトでの一般発売日だったように思われます。ただ、それならまだ一般発売日に余裕があったところ、公式サイトでは未定に変更されています。

一般発売日

未定

※公演日程が当初の予定から変更となりましたため、発売日も変更となります。(詳細はこちら)
※一般発売日の発表は今後の更新をお待ち下さい。

役者はファンクラブがあるから先行していたようです。主演の森田剛のファンサイトにはこのようなお知らせが掲載されています。良席を引いていたファンは残念でした。

2025.07.09 舞台『ヴォイツェック』のファンクラブ会員様限定チケット先行予約やり直しについて

森田剛主演舞台『ヴォイツェック』のファンクラブ会員様限定チケット先行販売について、主催者より下記発表がありましたのでご確認ください。

◆「ヴォイツェック」9月公演スケジュール変更のお知らせ
https://stage.parco.jp/program/woyzeck/10806#news

++
東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕を予定しておりました「ヴォイツェック」につきまして、公演スケジュール決定時の主催者の確認が行き届かず、東京芸術劇場の休館日である9月22日(月)が含まれていることが判明いたしました。

つきましては、本公演の開幕日を9月23日(火・祝)に変更いたします。
ご来場を予定されていたお客様にはご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
++

上記をふまえて、あらためて先行予約のやり直しを行わせていただきます。
詳細が決まり次第、あらためてご連絡させていただきます。
※尚、今回の抽選は全て無効になりますのでご注意ください。

公式サイトでも「弊社の確認が行き届かず」とあるので、パルコがやらかしたのは確定です。今回の公演は西日本をツアーして、最後にまた東京芸術劇場に戻ってくるという面倒な日程です。確認事項が多かったのでしょうが、一日丸ごと潰れてしまう間違いはさすがに言い訳できなかったのでしょう。

今回わかった話として、日程を決めるのはとにかく企画製作、またはプロデュースを行なう団体に決定権があるという話です。そこが決定権を持たないとチケット販売だけでなく役者スタッフ舞台道具の移動や搬出搬入の調整ができないから、それは自然なことと思われます。

反面、劇場を含めた関係各所は搬入開始から搬出完了まで日程の頭と尻尾だけ抑えてあとは任せきりというのもわかりました。もちろん劇場から該当日が休館日であることは伝えられたはずですが、仕込みやリハーサルなら使える契約ではないかと想像します。実際、1本はイベントがあるわけなので、表のスタッフが休み、警備スタッフも最小限の日だったのでしょう。

一方で、パルコの中の体制がどうなっていたのかは気になります。

・日程確認は1人に任せっぱなしで、その人がポカをした。
・日程確認は複数人で確認することになっていたが、その複数人が全員見逃した。
・元々劇場と打合せていた人が異動や退職でいなくなり、引継ぎ漏れでポカが起きた。

どれも考えられる話です。どれが理由でもおかしくありません。そしてどれが理由でも、さらにその裏にさらなる原因が隠れていそうです。

そしてこれ、誰が気が付いたのかも気になります。日程は任せっぱなし、表からはわかりづらい、と悪条件が揃っています。

・パルコの中の人が仕事中に気が付いた
・パルコの中の人以外の関係者が何かの拍子で東京芸術劇場の日程に気が付いた
・東京芸術劇場の関係者がたまたま日程を目にして気が付いた
・東京芸術劇場にたまたま縁のある熱心なファンが「あれ?」と気が付いて問合せた
・チケットセンターの人が準備をしていて「ん?」と気が付いて問合せた

どれが理由だとしてもまだ初日2か月以上前に気が付いてラッキーだったと思います。

2025年6月29日 (日)

2025年上半期決算

恒例の決算、上半期分です。

(1)パルコ企画制作「志の輔らくご in PARCO 2025」PARCO劇場

(2)ポウジュ「リタの教育」シアター風姿花伝

(3)東京サンシャインボーイズ「蒙古が襲来」PARCO劇場

(4)松竹制作「猿若祭二月大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

(5)新国立劇場オペラ研修所「フィガロの結婚」新国立劇場中劇場

(6)(7)松竹制作「仮名手本忠臣蔵 昼の部(Aプロ)」「夜の部(Bプロ)」歌舞伎座

(8)梅田芸術劇場/研音企画制作主催「昭和元禄落語心中」東急シアターオーブ

(9)ワタナベエンターテインメント企画制作「マスタークラス」世田谷パブリックシアター

(10)ラッパ屋公演「はなしづか」紀伊國屋ホール

(11)ケムリ研究室「ベイジルタウンの女神」世田谷パブリックシアター

(12)イキウメ「ずれる」シアタートラム

(13)悪童会議「見よ、飛行機の高く飛べるを」こくみん共済coopホール/スペース・ゼロl

(14)ニッポン放送企画制作「リプリー、あいにくの宇宙ね」本多劇場

(15)シス・カンパニー企画製作「昭和から騒ぎ」世田谷パブリックシアター

(16)劇団四季「ライオンキング」有明四季劇場

(17)劇団普通「秘密」三鷹市芸術文化センター星のホール

(18)THE ROB CARLTON「ENCOUNTERS with TOO MICHI」赤坂RED/THEATER

以上18本、隠し観劇はなし、すべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は 170450円
  • 1本あたり(チケットあたり)の単価は 9470円

となりました。なお各種手数料は含まれていません。また、上半期は映画館での芝居映像見物はありません。

チケット単価ですが、これはもう歌舞伎とミュージカルと三谷幸喜を複数本観たら高くなるのはしょうがないので諦めます。1万円を超えなかっただけでも御の字です。

寸評ですが、お馴染みで安定の(1)、古典を堪能した(4)(5)(6)(7)(15)、名作であることを確認した(9)(13)、初見にして別々の方向に完成度の高い(17)(18)でした。

そこから絞り込むと(6)(7)の忠臣蔵と(15)の三谷幸喜の一騎打ちですが、今回は劇場を出たところで雪が降っていたということで(6)(7)の忠臣蔵を上半期の1本に挙げます。チケットは午前の部と午後の部に分かれていますが、1本と見做します。チケットは高かったのですが、あれは観られてよかった。

この上半期のテーマは「一度は観たい」と「もう一度観ておきたい」でした。なので演目選びがだいぶ偏りました。一度は観たかったのが(5)(6)(7)(16)(17)(18)、演目または団体でもう一度観ておきたかったのが演目で(2)(9)(10)(13)になります。半分以上それで埋められたのは狙い通りになりました。

そんな中での発見は、勘九郎七之助の実力がよくわかった(4)、席からの距離の近さも含めてお得な企画と気が付いた(5)、望海風斗がヅカ出身らしからぬ演技がいい意味で気になった(9)、知らないところにもまだまだいい役者はいると久しぶりに思わされた(13)、あらゆる点で洗練されている(17)、もっと早くから観たかった(18)、になります。

観劇以外では、上半期も公演中止がありましたが、そちらは記録です。それよりは「『ネタバレされたい人』が昔からいる」ことがわかったことが、自分にとってはすっきりしました。もう少し観客視点の話題としては「開演時間がばらついて困るという話と芝居が長くなりすぎじゃないかという話」を書きました。割と最近困ったばかりの話題ですが、早く落着くところに落着いてほしいです。

ちなみに今期は前売でチケットを買ったものの、体調不良と用事で1本ずつ諦めました。こちらはチケット総額には含めていません。演目についても割愛します。ただ、リセール禁止縛りのある芝居だったので、こちらの支払ももったいないし、売切れていた日程だったので買いたい人には申し訳ないしで、残念でした。よく調べたらリセールできたのかもしれませんが、ちょっとそこまで調べきれませんでした。当日券派から前売券派に少しずつ移行しているのですが、こういうことがあるから迂闊に前売に頼りすぎるのも考え物です。

体調を保ちながら観るべきものを的確に押さえていく、などと言うは易しで、的確に押さえたい芝居の大半は前売が早々に完売するような芝居ばかりです。そこをいかに組立てていくか、まあまあ長い観劇歴ですが当日券派が長かったので、観るべき芝居を早くから見極めて押さえて予定を立てるところは新人同然です。ここからまた勉強です。

そして芝居を観た感想を言葉にすることに長年の間に少しずつ慣れてきましたが、近頃はなるべくすぐに感想を書いて手離すことに挑戦しています。そこは体調や時間との兼合いで、引張るとよくないとの考えからです。もう少し丁寧な文章を書けるようになりたいと昔から願っているのですが、その文章の基準と優先順位を見直して、とにかく書いておくことが大事なのだと優先順位を考え直している最中です。

金にならない文章を長年書き続けて、そんなものの中で優先順位を考え直すとは、我ながら暇だなと思います。ただ、金にならないところが大事だなと思います。やっぱり不要不急なんですよ、芝居は。そしてそんな芝居の感想はもっと不要不急です。だからこそいいんです。金にもならなければ必要でも至急でもない、そういうものだから趣味なんです。コスパタイパなんて知ったこっちゃない、と言えるものがひとつでもあるのはいいことです。

引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

輸送中の事故からのショーマストゴーオンその2

無事は無事らしいのですがちょっと気になったので取上げます。

「東京リベンジャーズ」の舞台、いわゆる2.5次元ものですが、大阪公演前に輸送事故が起きたという話です。公式サイト「大阪公演についての重要なお知らせ」より。

2025.06.24
大阪公演についての重要なお知らせ

平素より舞台「東京リベンジャーズ」をご愛顧いただきありがとうございます。

この度、6月26日(木)より大阪 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて開幕を予定しております、舞台『東京リベンジャーズ ―The LAST LEAP―』につきまして、運送会社による輸送時の火災事故が発生し、衣装・メイク一式(ウィッグ含む)等が全焼、舞台美術の一部も焼失する事態となりました。なお、本事故関係者の命に別状はございません。

現在、上記損壊による影響の把握とその復旧作業を行なっておりますが、舞台のクオリティを上げるための工程と並行した急ピッチでの作業であり、見通しや代替品がどこまで確保できるか、今なお把握しきれておりません。

つきましては、製作委員会による慎重な協議の結果、本件の影響が最も大きいことが予想される6月26日(木)18:00開演公演を「プレビュー公演」とさせていただくことといたしました。
本「プレビュー公演」は、上演が途中でストップしたり、技術的、演出的な調整を行わせていただく可能性があること、ご了承いただけますようお願い申し上げます。

また、公演開始時間を以下のように変更させていただきます。
(変更前)6月26日(木)18:00 公演→(変更後)6月26日(木)18:30 公演

6月26日(木)18:00のチケットをお持ちのお客さまには、開始時間を変更させていただいた6月26日(木)18:30開演の「プレビュー公演」のご観劇いただきますようお願い申し上げます。
非常に厳しい状況ではありますが、短い時間の中でも、ベストを尽くし、困難を乗り越え、初日の幕を上げ、本公演を心待ちにしていただいているお客様のために、関係者一同全力で臨み、改めてできる限り最高のクオリティで皆様にお届けしたいと考えております。

当公演へのご来場が叶わないお客様、ご希望に沿わないお客様へは横浜公演を含めた他公演への振替、もしくは公演もご来場が叶わない方には払い戻しの対応をさせていただきます。
※完売等、状況によってお振替が難しい公演もございます。対応の詳細につきましては後日公式サイト、公式Xにて発表させていただきますので、ご案内をお待ちください。

今後とも舞台「東京リベンジャーズ」をよろしくお願い申し上げます。

舞台「東京リベンジャーズ」製作委員会

このエントリーのタイトルがその2になっているのは、2021年にも「ヘタリア」大阪公演前に似たような事故が起きていたからです。奇しくも大阪公演の会場も同じですが、それは2.5次元でよく使われる会場なのでしょう。そのときと似たようなアナウンス文言なのは、おそらく彼の業界で緊急時アナウンステンプレートのようなものが広まっているのでしょう。ひょっとしたら「ヘタリア」公演のアナウンスをベースにしたのかもしれません。それはまあいいです。

ただ、2.5次元で2度も似たような事故が起きたと聞けば気になります。前回今回の制作を確かめました。クレジット上は作者、出版社、製作委員会になるようですが、もちろん実際に受持つ会社があります。今回の団体を確実に調べきれていないのですが、調べられた限りでは別々の団体のようです。

となると運送側の事故なのはその通りなのでしょう。公式サイトのアナウンスが公開された時刻は不明なのですが、ステージナタリーでそれを紹介する記事には同日の18時04分とこれは時刻の記載があります。それよりは前の時刻に公式サイトからアナウンスされたことなります。

そしてこの会場は貸出しは1日単位、9時から22時までです。

ここから先は私の勝手な妄想になります。

団体側はおそらくこの日の6月24日と翌25日を仕込日として借りていたのでしょう。そして借りるなら朝9時からです。となると、朝9時から搬入を行ないたいと考えるのが自然です。すると、運送会社には朝の9時に会場にトラックを付けてくれと頼むことになります。そのために前日から持ってきて待機しておけ、その分の料金は払う、なんてことはないでしょう。

ならば他の仕事と組合せてまとめて稼いでやると考えるか、立場が弱くてそれでも引受けざるを得ないか、どちらかはさておき運送会社は引受けます。東京大阪間はどんなに速くても6時間です。休憩を入れればもっと長くなります。そして高速道路も、深夜に通行すれば割引があります。

となると、前日6月23日の夕方か夜までにスタッフ陣が荷物を預ける。それでトラックは一時待機するか、先に高速に入ってパーキングエリアで休憩するかはともかく、深夜に走って大阪に向かう。それで大阪に着くまでの間に事故に遭ったことになります。自走事故か貰い事故かが気になりますが、そこまではわかりません。

深夜に輸送トラックが高速を走るのなんて当たり前だろうと言われればその通りです。が、2.5次元の場合に割ときつい条件で運んでいるのかもしれないと妄想してしまいます。普通の芝居でも同じように運んでいるのかもしれませんが、その割に事故の話は見かけません。無事なのか、実は事故が起きているがリカバリーできる範囲で済んだので表沙汰になっていないか、どちらでしょう。

2度までは偶然、3度起きたら何かある、という言葉に従って今回までは偶然と考えたいです。3度目が起きないように気を付けてほしいです。

2025年6月22日 (日)

2025年7月8月のメモ

ピックアップした公演の期間が予想よりも散っていました。もう少し偏るかと思っていました。

・らんぶる「晩節荒らし」2025/07/02-07/09@新宿シアタートップス:福原充則脚本演出で佐藤誓と山西惇の2人芝居

・新国立劇場主催「消えていくなら朝」2025/07/10-07/27@新国立劇場小劇場:初演を観ていますが消化不良だったので脚本家自らの演出でもう一度確かめられれば

・シノフィス企画制作「志の輔らくご 真夏の大忠臣蔵 in 下北沢」2025/07/11-07/21@本多劇場:聴きたいなあと思いつつ前売り完売

・GORE GORE GIRLS「役に立たない言葉が欲しい」2025/07/16-07/20@駅前劇場:劇場のサイトに載っていた文章を読んで魅かれたのでピックアップ

・good morning N°5「執着の泡」2025/07/17-07/30@ザ・スズナリ:澤田育子が今更気になったのでピックアップ

・世田谷パブリックシアター企画制作「キャプテン・アメイジング」2025/07/26-08/03@シアタートラム:チラシを読んだ時点で粗筋とラスト場面を想像してしまったので答え合せをしに行くかどうか

・松竹主催「八月納涼歌舞伎」2025/08/03-08/26:第1部は勘九郎幸四郎の踊り、第2部は七之助染五郎の日本振袖始に玉三郎の火の鳥、第3部は勘九郎七之助以下豪華布陣で野田版研辰の討たれ、1日通しで観たいくらい

・タカハ劇団「帰還の虹」2025/08/07-08/13@座・高円寺1:また画家の話だけど粗筋を読んでラスト場面を想像してしまったので答え合せをしに行くかどうか

・東宝/キョードー東京主催招聘製作「レ・ミゼラブル」2025/08/07-08/30@東急シアターオーブ:一度も観たことがないから一度観てレミゼって呼捨てられるようになりたいけど来日公演だからチケット代がさすがに高い

・はぶ談戯「JULIO」2025/08/13-08/17@駅前劇場:後藤ひろひと脚本と聞いてピックアップ

・パルコ企画製作主催「人形ぎらい」2025/08/16-08/28@PARCO劇場:三谷幸喜の文楽第2弾はモリエールの人間ぎらいに引っかけたのかどうか

・宝石のエメラルド座「ライバルは自分自身 ANNEX」2025/08/22-08/31@ザ・スズナリ:割と贅沢な布陣で臨むおそらくコント

・エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ/NHKエンタープライズ主催企画製作「アーモンド」2025/08/30-09/14@シアタートラム:韓国の小説が原作らしいですが久世星佳の名前を見かけてピックアップ

八月歌舞伎の野田秀樹と文楽の三谷幸喜を狙いつつ、そこにどれだけ上乗せしていくかを測る夏になりそうです。

2025年6月20日 (金)

「ネタバレされたい人」が昔からいる

以前「『ネタバレされたい人』が世の中にいる」というエントリーを書きました。これを書いた時には、割と新しい現象なのだと思っていました。

ところが最近読んだ映画の本、山田宏一と和田誠の対談「定本 たかが映画じゃないか」の中に、こんなくだりを見つけました。

W (前略)いまの若い人たちは、もっとクールに好きになっているんじゃないかっていう・・・「キネマ旬報」で「オリエント急行--」は原作読んでストーリー知ってるから楽しみ方が違う、ああいうのは結末知らないで観た方がはるかに楽しい、っていうようなこと書いたらね、若い人やつから投書が来てさ、結末わかったらつまんない映画なんてのはもともとつまらない映画だ、自分は必ずストーリーを読んで、シナリオがあればそれも読んで、それから映画を観る、なんて書いてあるんだよ。そりゃ立派な意見かもしれないけどさ、映画を楽しんでないという気がするんだよ、不幸だと思うんだな、そういう映画ファンは。もっと違うじゃない、理屈じゃなく。映画館に勉強しに行くんじゃないんだから。
Y うん。勉強はいやだ。
W ワクワクするというか、金払って映画館入ってさ、ションベンなんかしたくなくても無理にションベンしてさ、待ってるとベルが鳴って、アナウンスがあって、、だんだん暗くなるとなんかドキドキしちゃって・・・ああいう感じね。(後略)

ああなるほど、昔からそういう人は一定数いたんだな、と勉強になりました。楽しみ方は人それぞれなのでネタバレを強要されない限りは文句はありません。ただ、自分は和田誠の側の人です。

一度観たものをまた観るのはいいんですよ。原作をすでに読んでいたものが舞台化映像化されたものを観るのだって構いやしません。その反対に、舞台化映像化をきっかけに原作に手を出すのも結構です。

でも原作なしの初見なら、ほどほどのあらすじにキャスト・スタッフ一覧を眺めて、チラシを観て、過去にどこかで名前を見かけていたら思い出して、それで飛込んで自分で答え合せをするのが趣味です。そこには観た芝居の良し悪しに対する一喜一憂だけでなく、自分の直感の精度を確かめたことによる一喜一憂も含まれていますから。

それでも昔と比べたら、はずれを引きたくない気分も強くなってきていて、年だなあとため息をつきたくなることもあります。

2025年6月18日 (水)

開演時間がばらついて困るという話と芝居が長くなりすぎじゃないかという話

私の昔の芝居経験は小劇場に偏っているのですが、その偏見を前提にして書きます。

芝居の開演時間は、昔なら昼は14時、夜は19時と相場が決まっていました。夜がこの時間になったのは、都内の人だと仕事が終わって晩飯を食べてから劇場に向かっても間に合ったからだ、とどこかで見かけたことがあります。それは東京の交通事情を考えると私にも納得のいくことでした。そこから逆算して、昼飯を食べ終わってから劇場に向かうことを考えると、昼が14時だったのでしょう。

それが近頃は、昼が13時、夜が18時が増えてきました。

理由の1つは、リタイアするくらいの年配の人が主要観客になってきたことでしょう。それは純粋に若い人の数が減ってきたからとも言えるし、他にも娯楽が増えた中で若い観客を掴まえることに失敗しているからとも言えるし、本気で面白い芝居を作ろうとしたらチケット代が1万円を超えるようになってさすがに若者が気楽に観に行けないこともあるでしょう。その理由はここでは本題ではないので置いておきます。

年配の人が主要観客になるとどうなるか。夜がきつくなる。それは家庭の事情もあれば、純粋に体力の問題もある。体力の問題は私も痛感しているところです。元々は夜公演が基本で土日祝日に昼公演を上演していた(平日だと水曜日だけ昼公演をやっているところが多かった)のですが、近頃の高い芝居の中では昼公演が基本で土曜日だけ夜公演を行なうようなものもあります。

道草ついでに書くと、もっと昔は1か月公演でも休演日がなかったようです。野田秀樹の夢の遊民社時代の本に、丸1日の休みがほしいと書かれていたのを読んだことがありますから。ただ、私が芝居を観たころには、長い芝居だと月曜日が休演なのは珍しくありませんでした。

そして理由がもう1つ。芝居1本当たりの上演時間が延びていることです。昔なら2時間きっちりに収めるのが普通だったのですが、近頃は3時間も珍しくない。ナイロン100℃の「ナイス・エイジ」初演は2000年9月ですが、上演時間は3時間40分と開演前アナウンスが流れてどよめいていました。私は観ていませんが同じ9月に蜷川幸雄演出の「グリークス」で土日に通し公演をやっていて、終演が22時を超えてBunkamuraの駐車場が閉まるのを関係ないと押通したとどこかで読みました。同じ2000年の6月がキレイ初演でこれが3時間超えだったはず。この前の「ベイジルタウンの女神」が3時間半超えでしたけど今時KERA芝居でこれだけ長くとも誰も驚かない。ただ2000年のころはまだ特別という感じでした。

それで2時間越えが当たり前になると、夜公演では終演時間の心配が出てくる。家がちょっと遠い人は最寄駅からの終バスに間に合わなくなったりもしますから。それで夜の開演時間を繰上げて、19時が18時半に、そして18時になる。となると昼の開演も繰上げないと間が詰まってしまいますから13時になる。

こうやって全ての芝居が素直に決まってくれるならそれはそれで慣れるのですが、問題はまだそこまで徹底されていないこと。平日だと高額の芝居は貴重な勤め人のシアターゴーアーを狙ったり、都内の小劇場は近場の観客狙いかつ相対的に観客も若い人が多いですから、夜が19時開演が残る。

この前の自分の話です。三谷幸喜の「昭和から騒ぎ」のチケットがたまたま取れたのが、土曜日の夜公演。これが2時間を切る芝居なのですが、夜の開演が極端にも17時半。せっかくだから昼にも何か観ようかと考えたけれどもこれが難しい。

劇団普通「秘密」を考えたのですがこれが土曜日は14時開演。上演時間を探したら2時間10分というものを見つけて、実際それくらいの上演時間でしたが、三鷹のあの駅から遠い劇場を16時10分に出て三軒茶屋に17時半に間に合うか。私は上演時間の微妙な延長を含めて何かあったらアウトと判断してこの日は見送りました。それなら劇団四季「ライオンキング」はどうだと考えたらこれは土曜日は13時開演(平日だと昼は13時半開演)の代わりに上演時間が2時間40分。間に合わなくもなかったでしょうが有明に土地勘がなかったのといつもカーテンコールが長いのは少ない観劇数でも知っていたので悩んで見送り。結局この日は夜の「昭和から騒ぎ」だけを観ました。

それで見送った2本を同じ日に観たのですが、「秘密」は三鷹が会場なこともあって平日夜は開演が19時半。まあ帰りが遅くなって大変でした。

そんな経験をした後にTHE ROB CARLTON「ENCOUNTERS with TOO MICHI」を観たらこれが1時間20分公演。快適でした。そもそも「昭和から騒ぎ」の2時間切りも快適でした。長すぎるんです、近頃の芝居は。

歌舞伎あたりは独自のタイムスケジュールですし、ミュージカルは歌の分だけ長くなりますから、突詰めるときりがない話題です。とりあえず小劇場に近いところのストレートプレイを考えると、昼は13時、夜は18時、上演時間は2時間以内、がありがたいです。平日夜なら勤め人狙いの19時でも仕方ありませんが、もう少しスタンダードなタイムスケジュールが固まってくれると観客にはありがたいなという話でした。

2025年6月15日 (日)

THE ROB CARLTON「ENCOUNTERS with TOO MICHI」赤坂RED/THEATER

<2025年6月14日(土)昼>

とある島国に、国土と同じ大きさの未確認飛行物体がやってきた。時のプレジデントは国民に平静を呼びかけて対応を誓う。それから1年半、未確認飛行物体は何もしない。何もしなさすぎて国民どころか世界中が慣れてくる。プレジデントから備えを任されているジェネラルとセクレタリーは1年半何もないままの備えに対して意見が割れてくる。会議が終わったプレジデントがやって来て今後の備えについて相談を始める。

初見の相手に笑ってやるものかと斜に構えていたけど、うっかり吹き出すこと多数。非常にくだらない、この上なく「無駄」な芝居(褒め言葉)をここまで一生懸命やる団体が現代日本にあるとは思わなかった。

作演出の村角太洋がふざけた前振りから一転してジェネラルもやっていたましたけど(役者名義はボブ・マーサム)、この芝居でずっと厳しい顔を貫き通した役者としての能力も買いたい。プレジデントの森下亮は、舞台でありながらそのまま撮影すれば映画にもできるのではという雰囲気はまさにプレジデント。そしてセクレタリーの高阪勝之は顔の作りがもうふざけていて真面目にやるほどに嘘くさくなる。ちょうど劇団員が減ったところだったようですが、ゲストの役者選びからしてきっちりと選んでいました。

簡単なりにスタッフワークもしっかりしていて、特に音の質が高いのは体感的に芝居の高級感につながっていました。近頃はこういう芝居なのに安っぽくなりませんよね。

これだけくだらないのに芝居全体に品がありました。笑えれば何でもいいとは考えない、きっちりと作りこんだ話で笑わせる、それが当然だろうという古き良き職人魂を感じました。公式1時間20分、劇場を出た時間実測で1時間半という詰込み方も素晴らしいです。何となく応援したくなる雰囲気を出していました。

劇場を出てから考えましたが、今時ゲスト紹介から物販案内まで行なう最後の挨拶も含めて、ヨーロッパ企画に一脈通じるものがあります。どちらも京都が拠点のようですが、熟成する余裕というか隙間というか、そういうものがまだ京都にはあるのでしょうか。

2025年6月 7日 (土)

劇団普通「秘密」三鷹市芸術文化センター星のホール(若干ネタバレあり)

<2025年6月6日(金)夜>

コロナになって間もないころ、茨城のとある一軒家。年老いた両親が二人暮らししていたが、母が入院したため父の面倒を見るために子供のいない娘が戻ってくる。母のいない暮らしに慣れない父がいつもの調子で娘に頼むが、夫を置いて手伝いに来ている娘も疲れる。息子夫婦も様子を見に来るが、子供のこともあるためいつもは見に来られない。隣の家の夫婦も何かあったら手伝うと言ってはくれるものの両親と同じくらいの年齢のためしょっちゅうは頼れない。疎遠な従弟夫婦は妻の母の介護で妻が仕事を辞めている。そんな家族の物語。

年老いた両親の面倒を見る話と、今の高齢者の男性と女性の典型的な調子とを組合せて、それらの日常を茨城弁で淡々と娘を中心に描く1本。これを演劇用語で格好よく言えば現代口語演劇もここまで来たかとなりますが、緊張感の高い場面を淡々と描きすぎて、観ていていたたまれなくなる1本。

介護の話で最近観たものでは、ほろびての「音埜淳の凄まじくボンヤリした人生」がありましたが、こちらは認知症の始まった父の話とはいえ、その描き方にはまだ演劇らしい工夫があり、それがまたよく出来ていました。ところがこちらは演劇らしい組立にはしてあるものの、場面場面はまったくもって日常そのもの。コロナの時期を舞台にしてはいますが、それは手伝いや面会を遠慮する理由の1つとして機能しているくらいで、本編自体はとことんあり得る話を突詰めていました。笑えるような場面も少しはあって客席は笑っていましたが、それはこの話をロングショットで観られる人のための笑いで、クローズアップで観ざるを得ない自分にとっては本当に他人事ではない。

その淡々とした裏側で表に出てこない話があります。出てくる家族それぞれに秘密があって、そこに引っかかる人が観たらいたたまれなくなる妄想をいくらでもあてはめられます。

ネタバレというかなんというか、差支えない範囲で書くと、従弟夫婦は揉める場面を一番はっきりと描きますがその家族問題は曖昧に話されます。兄夫婦は共働きで子供がいるものの兄がそれ以上に非常に疲れて見えてその理由が描かれません。両親は互いの関係は後半で描かれるものの、父親の様子をあの年代の男性の典型で片づけていいのか実はXXXではないかという疑いが終わっても晴れません。そして娘は東京に暮らして夫がいて働いているものの、そちらがどうなっているかがさっぱり描かれません。にもかかわらず登場する家族が、当たり前から頼りにするところまで幅はありますが、娘が面倒を見れば両親の話は解決すると考えている。兄夫婦だけはいろいろ考えて妹と相談しますが、自分が引取って面倒を見られないのでいろいろ頼もうと考えることははっきりしている。

ちなみに現代勤め人だと兄夫婦の考えが正しいとなります。従弟の妻が母の面倒を見るために仕事を辞めていますが、それはなし。介護のセンターも地域ごとにだいぶ整備されてきており、そこに頼んで、買物なり掃除なりなんなり、いろいろな手伝いを頼めます。本当に体調や怪我がまずければ役所で認定してもらえれば補助金も出ます。そういう話は病院か役所で相談先を教えてもらえます。その手配のために会社の休日を取って休みます。自分は仕事を続けて、そのお金で手伝いを頼みつつ、会える範囲で休日に顔を出すことになります。そうしないと介護で潰れるから。一番貴重なのは人手で、そのためにお金を払うことになります。

みたいな話を少しでも書けるようになってしまった人間としては、本当に他人事ではない。この淡々とした話で役者の緊張感がまったく途切れない。本当に近頃の役者は上手で、今回も全員上手だったのですが、娘役を演じた安川まりを挙げておきます。脚本演出の石黒麻衣は近所の妻役で、小劇場界は脚本演出出演を普通にこなす人ばかりで恐れ入ります。しいて言えば両親以外の人たちの見た目がもう少し年上に見えるとよかった。引算の極みのような舞台と照明がこの淡々としたところと地続きで、そしてこの手の話らしく音楽なしなのはさすがです。

三鷹の公演ですが、金曜日の夜に観たにも関わらず満員御礼なのはさすがでした。あと二日間公演はありますし、出来だけなら緊急口コミプッシュを出せる出来ですが、よくできていてお勧めしたい気持ちと、よくできすぎていたたまれなくなる気持ちと、両方あるのでそれは止めておきます。日常は演劇並みの緊張感に満ちているのだという芝居だったので、ぼくのおもしろいしばいがうれないのはみんなのみるめがないからだ、みたいな人がいたらこの登場人物たちにお金を払って足を運んで楽しんでもらえるかどうかは基準のひとつにいいかもしれませんから観ておくといいです。今時はそんな人はもう淘汰されていなくなったかな。

劇団四季「ライオンキング」有明四季劇場

<2025年6月6日(金)昼>

サバンナの百獣の王の頂点に立ち一帯を治めるライオンの王ムファサ。いずれ息子のシンバが王を継ぐことになっており、ムファサの弟のスカーは面白くない。スカーは自分が王の座を継ぐべく、ハイエナたちと手を組んで一計を案じる。

私が劇団四季と聞けば言えばこれという演目でしたがようやく観劇。日本上演は今で27年目。現地上演から1年で引っ張ってきたのだから劇団四季の行動力には恐れ入ります。

粗筋はしごく単純なものの、音楽のよさと、それと動物を表す衣装というか仮面というか人形のインパクトで印象に残る1本でした。現地っぽい音楽多めにしつつ打楽器だけは手前で生演奏させて観客の興奮を煽るのはなかなかよいアイディアです。あと今時のミュージカルと比べると、舞台美術でが映像を使っていません。初演がだいぶ昔なこともあるでしょうが、照明でサバンナの朝焼け夕焼けを出すところが、このミュージカルの原始的な舞台設定とテーマにはしっくりきました。

出ていた役者は慣れたものですが、よくぞまあ吹替えみたいな声の役者を脇にここまで揃えたものです。普通の芝居なら浮くところですが、この舞台だと動物を人間が演じる違和感との掛算でむしろプラスになっていました。

もう少し踊りが多いほうが好みですが、気になっていた演目を観られてすっきりしました。

2025年6月 1日 (日)

シス・カンパニー企画製作「昭和から騒ぎ」世田谷パブリックシアター

<2025年5月31日(土)夜>

昭和の落着いた時期の鎌倉。芝居好きの教授の家に、贔屓の旅芸人一座から以前も相手をした役者たちが訪ねてくる。人気役者の木偶太郎は教授の長女のいい口喧嘩仲間だが、弟弟子の定九郎は次女に一目惚れしてしまい次女も満更ではない。次女の気持ちを確かめるのを手伝ってほしいと兄弟子に無理やり頼み込むところに見回りの巡査がやってきて、いい案を思いついたからと木偶太郎は協力することになってしまう。

本家の「から騒ぎ」は観たことがありませんが、昔ながらの芝居のだいぶ強引なところは多数あって、そこを大泉洋を中心とした手練れに突っ込みを入れさせつつの力技で乗り切って大笑いという仕上がりでした。

巡査がどうしてそこまで他人の家の話に深く関わってしかも引っ掻き回すのかと現代劇なら通じないところ、こいつがすべての元凶だと芝居の中で突っ込ませつつ、昭和もまだ五輪前くらいなら馴れ馴れしいくらい入り込むのもぎりぎりあるかなというあたりを狙って翻案するのはさすがでした。日本家屋も女中も旅芸人も、ぎりぎり残っていたでしょう。これはこの時代を選んだ三谷幸喜の慧眼です。

それでもシェイクスピア原作で、しかもあの時代の喜劇ですから、話の進め方は強引の一言に尽きるのですが、その強引を納得させる主役に大泉洋を選んだ三谷幸喜のキャスティングはさすがとしか言えません。出て来るだけで拍手をもらう大泉洋はずるいのですが、この荒唐無稽な話を観客に納得させられるイメージと見た目と腕前のすべてを兼ね備えた当代の一人です。その相手役の宮沢りえが芝居を引張るのではなく馴染むのも久しぶりに見ましたが、そういうときでもいい役者ですよね。シス・カンパニー所属とはいえ脇に小劇場で揉まれたベテランを当てるところの確かさ。だから全員役に徹しつつ、熱海五郎一座よりもよほど東京軽演劇ではないかという仕上がりでした。

ちなみにこの日は巡査役の山崎一が名手らしからず二度もトチって、二度目は客席が笑いつつ役者が笑わないようにこらえる中、後ろを向いてごまかしたところから一気に引き戻した松本穂香の根性は見事でした。

それにしても大泉洋と宮沢りえが、年齢不詳でした。芝居上は特に年齢は触れられていませんが、途中で身体を使って入替る場面もあったりして、三十代前半と二十代後半くらいかなあ、というつもりで最後まで観られました。これが売れっ子役者というものかと帰り道でしみじみ思い返していました。

日本家屋の一間が舞台なので蛍を除けば動きの少ないスタッフワークですが、全体に色が少ないところが、狙っていたのでしょうけどよかったですね。一人を除いて衣装は白またはかなり白に近いグレー、日本家屋も余計な色のついた置物は置かずに、庭の隅の緑は照明を隠して目立たせず。花火映えするのもありますが、全体にすっきりして、昔の日本の家はこんな感じだったよなと祖母の家を思い出しました。

役者良し、スタッフ良しですが、それらをひっくるめてさすが三谷幸喜とこれはシャッポを脱ぐしかない芝居でした。カーテンコールで大泉洋が「こんなくだらない芝居を皆様よくぞ」と話すような芝居です。そもそも元の題名からして「から騒ぎ」なのですが、ここまで真面目にくだらない話に徹した喜劇は昨今貴重なので、無事に千秋楽まで完走してほしいです。

<2025年6月18日(水)追記>

文章を少し調整。

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