ナイロン100℃「犬は鎖につなぐべからず~岸田國士一幕劇コレクション~」青山円形劇場
<2007年5月12日(土)夜>
岸田國士の脚本から、結婚と夫婦を扱った場面を抜出して1本に再構成した芝居。成長の遅い子供と飼っている犬が近所との騒動の種になる「犬は鎖につなぐべからず」。音楽学校の学生が実家に内緒で結婚していたら、兄が突然尋ねてきて「ここの弟あり」。隣同士で住み互いに違う気性のパートナーと結婚している夫婦が、それぞれ相手のパートナーを想う「隣の花」。不和のため新婚旅行から急遽帰宅した妻が姉夫婦を相手に愚痴をこぼす「驟雨」。百貨店の屋上で昔の友人と再会した男だが、現在の境遇の違いからなかなか素直になれない「屋上庭園」。少女時代の恋人と夢の中で出会う「ぶらんこ」。今度出かける旅行の予定を夫婦で話すうちに、旅行に出かけている気分になっていく「紙風船」。
こんなものか。なんかこちらのエントリみたいな文体になってしまった。
現代風にアレンジされた戦前の衣装と、時代不明のカラフルな美術。そこで展開される芝居は(言葉遣い以外は)現代の話と言われても違和感なし。どのくらいが岸田脚本の手柄で、どのくらいがKERAの手柄なのかは不明。結構胸に染みる芝居を、距離の近い青山円形劇場で、というのは大成功。
複数の芝居を平行して走らせるための場面転換を、踊りで振付けたり、ネタにしたりして、堅い話をほぐすあたりは演出の手腕。それぞれの話を微妙につなげるあたり(事故と新聞とか)は、きっと楽しんで考えたんだろうな、と。
ナイロン100℃の達者な役者に、昔言葉が苦手という弱点があるとは思わなかった。その点で役者ごとの差がはっきり。客演の役者はその点しっかり。
屋上庭園だけが他よりもシリアスな話だけど、メインの2人が共に客演でさらにナイロンらしくない展開。そんな中での植本潤の出来が突出していて、ナイロンの役者が霞んでみえるくらいの迫力。今まで(たぶん)観たことなかった人だけど、覚えておかないと。
他には順不同で驟雨の松永玲子、ここに弟ありの廣川三憲と安澤千草、犬は鎖に~の大河内浩、屋上庭園の植木夏十、紙風船の緒川たまきがすばらしかった。
不思議な美術は加藤ちか。円形の舞台をさらに回転させるあたりは「バージニア・ウルフなんて怖くない」の四面舞台でKERAが会得したのであろう作戦で、観る人に親切。ダンスじゃなくて踊りといいたくなる振付が新鮮。「踊れない人を踊れないなりに踊らせる名手、イデビアン・クルーの井手茂太」という紹介は笑ってしまった。なんだか着物が着たくなるような、えらい斬新な衣装は豆千代。
全体に、着物の裾捌きがもっときれいだとよかったんだけど、それよりはスピード感を優先したんだろうな、と自己解決してみる。
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