ナイロン100℃「わが闇」下北沢本多劇場
<2007年12月24日(月)昼>
叔母からの遺産相続に伴って田舎に移り住んだ一家。小説家である父は執筆に専念できる環境に喜ぶが、環境になじめない母は精神を病み、それが原因で夫婦は別居する。その後も続く複雑な家庭環境で3姉妹が育っていろいろあって、移り住んでから30年後、映画の撮影スタッフが父親の取材に訪れる。
開演前の音楽からしてなんかいつもと違う久しぶりの新作は、いつも通りの笑いもありつつ、3人姉妹に焦点を当てて、タイトルが示すような陰を伴ったウェルメイド芝居。
個々のイベントはありがちと言えばありがちだけど、それをつなげてみると、何がどう違うのかわからないけど他では観ないような、ナイロン100℃の過去の公演でもあまり観た事がない(観た事がある中で強いて言えば「フローズン・ビーチ」が近い)ような仕上がり。最後に「山を(自粛)」という台詞が出るのも、いつもと違う終わり方。これは面白いです。
開演した直後は舞台美術の構造のせいもあって本谷有希子の「偏路」に似ているなと思いましたけど、描き方の深さ、広さともこちらのほうが断然上です。映像の使い方も、序盤でべったりと映すああいう方法をさらっと使うあたり、こちらのほうがこなれています。目指すところが違うし、あちらはあちらで面白いんですけど。
すでにKERA演出経験済の岡田義徳、長谷川朝晴と、舞台経験もあまりないはずの坂井真紀のゲスト3人を含めて、役者は当たりばかり。犬山イヌコと峯村り えはその中でもやっぱりすごく上手。嫌な女を演じることがものすごく上手な松永玲子とか、お前誰だ的に変身する永田奈麻とか、全体にいつもと違う感じの役 が多い。いつもみたいな役回りになってしまった大倉孝二がちょっと残念。
犬山イヌコ、峯村りえ、坂井真紀の3姉妹の性格の違いが非常に上手に描かれているのを観ながら、今まで自分が芝居を観るときは、展開は観てきたけど登場人物はきちんと観たことはなかったなと気がつきました。終盤で坂井真紀が「たまにはね(以下自粛)」という台詞を言ったときに、何かそんな感想が頭の中をぐるぐると。
カーテンコールが終わったら3時間半が経過していて、すでに夜の回の当日券目当ての人たちが並んでいて、そんな長時間の芝居でも観られる時間と体力のある人には絶対お勧めの1本。この後ツアーもあるので、ツアー地近辺の皆さんもぜひどうぞ。
« 何をひどいと思うかによる | トップページ | 新宿の地盤沈下 »
コメント