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2007年12月26日 (水)

新宿の地盤沈下

最近ほとんど新宿で芝居を観なくなった。渋谷や下北沢がほとんど。新宿の芝居はつまらなくなったなと思う。理由を考えたのだけど、たぶん制作に積極的に関わっているかどうかの違いではないかと思う。

腹が立ったら、まあ与太話だと思って読みとばしてください。

下北沢は本多劇場グループだけで6箇所。全部貸し劇場だと思うけど、どの劇場も駅から近い。ごちゃごちゃした駅前の雰囲気や、多数の庶民的飲食店や、よくわからない雑貨屋などが集まっていていかにも芝居が似合いそうな雰囲気。芝居の街と言われるくらい芝居が売りになっている。本多劇場とスズナリが圧倒的に人気劇場で、いろんな団体が繰返し上演している。駅前劇場も若い劇団に人気が高い。若い劇団が入ってきて、育っても本多劇場で上演して、健全なサイクルが回っている。これらが下北沢ブランドを形成している。でもこれは例外。むしろ本多劇場グループは本多劇場とスズナリと駅前劇場が中心で、他の劇場はこれらの劇場のためのブランドを維持するための捨駒なんじゃないかとたまに疑ったりする。

渋谷にはパルコ劇場とシアターコクーン、青山は青山劇場と青山円形劇場、三軒茶屋だと世田谷パブリックシアターにシアタートラム。これをとりあえず渋谷地域と呼ぶ。

渋谷地区の劇場は芝居の制作に深く関わっている。たまに貸し劇場もやっているけど、基本的には自分の劇場で上演する芝居は自分で作る。青山の2劇場は詳しくないけど、円形劇場ではフェスティバルを開催していたはず。で、これらの劇場で上演する人たちをどこからつれてくるかというと、他の地域から連れてくる。

たぶん、1回100人規模で自力で上演する人気劇団なら
・下北沢で駅前劇場や
・新宿でTHEATER/TOPS
・王子で王子小劇場
・芸術系ならこまばアゴラ劇場
を目指す。何でこの劇場かと訊かれても困りますけど、使い勝手とか、費用とか、立地(に基づく動員のしやすさとか便利さ)の総合でそうなったんでしょう。

200人規模の劇場はあまりないけど、
・下北沢でスズナリ
・吉祥寺で吉祥寺シアター
になると思う。

で400人規模に動員が増えたら、本多劇場とか、紀伊国屋で上演する。ここで渋谷周辺の芝居制作チームのチェックが入る。それまでもチェックはしているだろうけど、規模が大きくても上演に耐えうるかどうかをここで調べる。団体のチェックというより、脚本、演出、役者一人一人の確認だと思う。で、お眼鏡にかなったら個別に話を持ちかけて、渋谷地域の上演に参加してもらう。

渋谷地域での上演回数が増えると、他の地域での出演が減る。渋谷地域での上演が増えると人気とか知名度が上がって200人規模以上の劇場が増える。だけど紀伊国屋ホールは使い勝手が悪いのか、リピーター劇団を見かけない劇場でもある。そうすると、新宿以外の地域での上演が増える。この傾向が繰返されて、人気実力のある個人は新宿から離れていくことになる。

以前はその分若手の流入もあったと思うけど、本当の若手劇団はここ数年で王子小劇場やこまばアゴラ劇場がさらってしまった。中堅劇団についても三鷹とか吉祥寺とか、最近だと赤坂あたりの劇場ががんばって選択肢が増えた分だけ新宿での上演回数が減った。そうなると新宿はなまじ劇場の数が多いだけに、地域全体での期待度や魅力が薄まって、その結果として実力劇団には嫌われて、悪循環が始まる。

700人規模の動員が出来るようになるころには渋谷地域が放っておかない。その規模の劇団向けの劇場であるシアターアプルは、その前に育つために必要な人材が一本釣りされるため、上演候補の団体がいない。完全にシアターコクーンに負けてしまった。

全体に芝居がつまらなくなったわけではない。王子小劇場は青田買いに専念しているし、赤坂RED THEATERは魅力的なラインナップを揃えるように努力している。経営努力している特定の劇場に人材が集まって、劇場が選別されているだけ。渋谷地区の劇場は人攫いではなく、経営努力を行動に移しているだけ。

劇場は商売ではなくて趣味で経営されていると昔のブログに書いたことがあるけど、これからは企画力、制作力、ブランド化など様々な経営戦略が問われることになる。
・観客が観たい芝居を作る
・無名のものを発掘する
・フェスティバルその他で上演団体を支援する
・客層を絞る
とにかく劇場の特色を積極的に出すところから始まる。単なる貸し劇場だけやっているところは廃れていく。

観ていない芝居をつまらないと決め付けるな、という反論もあるかと思いますが、そもそも観たいと思わせる芝居がほとんどない、観たいと思わせるのも実力のうちではないかととりあえず答えておきます。

あともうひとつの見立てとして、これからは自力で一定以上の動員を増やす劇団は育たないと思う。だから上演する側の人たちはプロでやっていきたいなら、劇団を大きくするよりも、どこで観ているかわからないプロデュース公演の関係者を念頭において、上演に関わる優先順位を考えたほうがいい。どうしても劇団を育てたいなら、動員数は規模でなくてロングランで獲得するほうがいい。

なんてことを考えてみたりもするのです。

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