劇団、本谷有希子「偏路」紀伊国屋ホール
<2007年12月14日(金)夜>
女優を目指すために、娘が親の反対を押切って強引に上京して9年、劇団の仲間が売れていく中で自分の才能の無さに気がつき、しかも所属している劇団が解散することに。女優になることを断念して実家に戻ることを決めているが、親の反対に逆らった手前と、田舎の親切な空気に馴染めないため、踏ん切りがつかない。そんな状態で年末年始を過ごすために、お遍路参りの途中にある親戚の家にやって来た娘とその父。娘はこの機会に親に謝るのと、田舎の雰囲気に馴染むことを狙うが・・・。
ずいぶん久しぶりな気がする本谷有希子の芝居は、お得意の(?)自意識過剰な若い女性を軸にした騒動。なかなか面白かったけど、初日だったからか一部固い部分も。
自意識過剰な主人公に拮抗する登場人物として、突然切れる父親を配置して、二人の偏よった思い込みを中心に話は進行。父親役の近藤芳正が全開なのに対して、主人公役の馬渕英俚可がどうにも固い。固くなるのが役どころとはいえ、もう少し馴染んでくれば芝居が一段上がった出来になりそう。他にはすでに劇団員の感がある吉本菜穂子を筆頭に、加藤啓、池谷のぶえが緩急つけて盛上げる。江口のりこもまだ少し固かったけど、初日ならこんなものか。
脚本は楽しめたけど、途中なくても大丈夫そうな場面があったのと、最後に使われる伏線が出てきた瞬間にわかってしまったのがもったいない。
空間を上手に埋めた意味ありげな美術とそれを生かす照明、芝居の流れに沿って着替えられる衣装が非常に自然で、劇場の規模に見合ったスタッフワークの充実を感じさせる。ただし高い天井を生かした映像はオープニングこそ格好良かったが、そのあとはあまり上手に活用しきれていない感あり。あと残念なのが選曲で、これで終わりではないかと勘違いさせられる曲が3回くらい流れて、拍手のタイミングをはぐらかされた感じが残った。あの曲は確かナイロン100℃の「消失」でも使われていたような記憶があってデジャブ。
ちなみに終演後のロビーは何となく関係者だくさんな空気で、初日のためか認知度が上がったためか。
自分の自意識過剰とか偏見を突いてくれる本谷有希子の話が好きな私は満足。でも当日券狙いなら、日程後半をお勧め。
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