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2008年1月 7日 (月)

2007年下半期決算

2007年上半期決算

2007年もつつがなく過ぎましたので、やや遅れましたが、下半期および通年の決算をしてみたいと思います。2007年下半期に観劇した一覧です。

(1)NODA・MAP番外公演「THE BEE(日本バージョン)」シアタートラム
(2)NODA・MAP番外公演「THE BEE(ロンドンバージョン)」シアタートラム
(3)Piper「ひーはー」下北沢本多劇場
(4)こまつ座&シス・カンパニー 企画製作「ロマンス」世田谷パブリックシアター
(5)劇団新感線「犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート」サンシャイン劇場
(6)松竹 + Bunkamura制作「ドラクル」Bunkamuraシアターコクーン
(7)シアターナインス「シェイクスピア・ソナタ」PARCO劇場
(8)TSP企画製作「郵便配達夫の恋」東京グローブ座
(9)THE SHAMPOO HAT「その夜の侍」ザ・スズナリ
(10)キューブ企画製作「犯さん哉」PARCO劇場
(11)パルコ企画製作「キャバレー」青山劇場
(12)メジャーリーグ主催「野鴨」シアター1010ミニシアター
(13)グリング「Get Back!」ザ・スズナリ
(14)東宝製作「恐れを知らぬ川上音二郎一座」シアタークリエ
(15)劇団、本谷有希子「偏路」紀伊国屋ホール
(16)パルコ企画製作「ビューティー・クイーン・オブ・リナーン」PARCO劇場
(17)ナイロン100℃「わが闇」下北沢本多劇場
(18)NODA・MAP「キル」Bunkamuraシアターコクーン

上記18本、他に隠し観劇はなし、チケットは全て公式ルートで購入した結果

  • チケット総額は118500円
  • 1本当たりの単価は6583円

となりました。当日券ということで一部の芝居はチケット代が高くなり、一部は立見のため安く観られたものもあります。

上半期とあわせると全34本で

  • チケット総額は214350円
  • 1本当たりの単価は6304円

です。ついにチケット単価が6000円を超えてしまいました。金額については特に年末の話題作連発が響いています。

諸事情により芝居に割ける時間が減る中、一般的な話題作に観劇が集中してしまいました。観終わった後でならなんとでも言えますが、観ていない段階で見送りを決断するには魅力的すぎるラインナップばかりです。最盛期で約50本観ていたので、時間については3割減です。その代わりチケット単価が上がっているので、チケット代の出費はそれほど変わっていません。むしろ交通費がかさむ分だけ今のほうがきつい。

その結果が2007年の特徴になりますが、「渋谷 - 青山 - 三軒茶屋」地域、および下北沢で劇場の大半を占めています。プロデュース公演を前者で、劇団モノを後者で、という傾向がものすごくはっきり出てしまいました。新宿は紀伊国屋ホールが1回、THEATER/TOPSが1回だけです。初演を観ていたとはいえ、ONEOR8の「ゼブラ」再演を見逃したのはもったいなかった。あと、本当はこまばアゴラ劇場にもう少し通いたかったのですけど、2007年は巡り合せが悪かったためそれもかないませんでした。

KERAとか長塚圭史とか野田秀樹とか、見逃せない演出家が活躍しているおかげで、新しい出会いに費やせる時間がさらに減っています。「野鴨」でタニノクロウ演出を観られたのは数少ない新規収穫です。Webやチラシからの情報で、他にも気になる名前はいくつかあるのですが、時間(とお金)と戦いつつ、それらを、あるいはもっと新しい誰かをどれだけ観ることができるかが、2008年の大きなテーマのひとつになりそうです。今年の34本という実績を基に、リソース配分を考えられればと思います。

2008年もよろしくお願いします。

2007年12月30日 (日)

NODA・MAP「キル」Bunkamuraシアターコクーン

<2007年12月30日(日)昼>

モンゴルの草原でファッションを生業とする遊牧民の息子として生まれたテムジン。ファッション戦争に敗れさった父の後を継いで勢力を拡大していく。やがて敵を討った彼は、シルクという名の美しい娘を手に入れる。

以下略。あらすじが無くても別に構わないでしょう。野田秀樹が留学から帰国して作った最初の芝居。再々演するだけのことはあって前期野田秀樹のエッセンスがすべて詰まった名作。テレビで初演は観ていました。

事前予想では妻夫木聡と広末涼子の主役2人が駄目でぶち壊しなんじゃなかろうか、特に広末涼子は「スジナシ」の収録を実際に観たので(画面で観るのと舞台で観るのとで全然違う)、起用に不安だらけだったのですが、観始めたら杞憂に終わりました。出だしこそいまいちでしたが、段々温まってきて、後半からは安心して観ていられました。堤真一と羽野晶紀のクローンっぽい演技と思わないでもなかったですけど、この芝居はそういう演技を要求するものだと考えれば、そんなに気になりません。見直したというか、悪い予想を立てて正直すまなかったと。

結髪役の勝村政信、人形役の高田聖子は実力全開で、硬軟両面で舞台を支えます。この2人がしっかりしていたおかげで、前半は安心して、後半は盛上がって観られました。あと市川しんぺーが予想以上にはまっていました。ちょっと残念だったのは小林勝也と中山祐一朗で、野田秀樹のリズムに乗れていませんでした。

そうはいっても、前半最後から客席点灯までの音楽と照明のタイミングとか、芝居全体のスピード感とか、無茶な設定なのにつじつまが合ってしまうところとか、ちょっといいことを言う最後の長台詞(笑)とか、最近こういう芝居を観ていなかったせいで新鮮な気分で観てしまった。今回は立見だったのですが、これなら来年もう一回指定席で観たいな、と素直に思いました。

2007年12月25日 (火)

ナイロン100℃「わが闇」下北沢本多劇場

<2007年12月24日(月)昼>

叔母からの遺産相続に伴って田舎に移り住んだ一家。小説家である父は執筆に専念できる環境に喜ぶが、環境になじめない母は精神を病み、それが原因で夫婦は別居する。その後も続く複雑な家庭環境で3姉妹が育っていろいろあって、移り住んでから30年後、映画の撮影スタッフが父親の取材に訪れる。

開演前の音楽からしてなんかいつもと違う久しぶりの新作は、いつも通りの笑いもありつつ、3人姉妹に焦点を当てて、タイトルが示すような陰を伴ったウェルメイド芝居。

個々のイベントはありがちと言えばありがちだけど、それをつなげてみると、何がどう違うのかわからないけど他では観ないような、ナイロン100℃の過去の公演でもあまり観た事がない(観た事がある中で強いて言えば「フローズン・ビーチ」が近い)ような仕上がり。最後に「山を(自粛)」という台詞が出るのも、いつもと違う終わり方。これは面白いです。

開演した直後は舞台美術の構造のせいもあって本谷有希子の「偏路」に似ているなと思いましたけど、描き方の深さ、広さともこちらのほうが断然上です。映像の使い方も、序盤でべったりと映すああいう方法をさらっと使うあたり、こちらのほうがこなれています。目指すところが違うし、あちらはあちらで面白いんですけど。

すでにKERA演出経験済の岡田義徳、長谷川朝晴と、舞台経験もあまりないはずの坂井真紀のゲスト3人を含めて、役者は当たりばかり。犬山イヌコと峯村り えはその中でもやっぱりすごく上手。嫌な女を演じることがものすごく上手な松永玲子とか、お前誰だ的に変身する永田奈麻とか、全体にいつもと違う感じの役 が多い。いつもみたいな役回りになってしまった大倉孝二がちょっと残念。

犬山イヌコ、峯村りえ、坂井真紀の3姉妹の性格の違いが非常に上手に描かれているのを観ながら、今まで自分が芝居を観るときは、展開は観てきたけど登場人物はきちんと観たことはなかったなと気がつきました。終盤で坂井真紀が「たまにはね(以下自粛)」という台詞を言ったときに、何かそんな感想が頭の中をぐるぐると。

カーテンコールが終わったら3時間半が経過していて、すでに夜の回の当日券目当ての人たちが並んでいて、そんな長時間の芝居でも観られる時間と体力のある人には絶対お勧めの1本。この後ツアーもあるので、ツアー地近辺の皆さんもぜひどうぞ。

2007年12月17日 (月)

パルコ企画製作「ビューティー・クイーン・オブ・リナーン」PARCO劇場(ネタばれありあり)

<2007年12月16日(日)昼>

アイルランドの田舎であるリナーン地域。そのさらに外れの丘の上に住む老母と中年の娘。身体を悪くして外出もままならない母はささいな世話も娘にさせ、娘は母を無視したり詰ったりする毎日。ある日、村の近所の家で送別会が催されることになり、縁あって娘も招待されるが、留守だった娘の代わりに母が伝言を受ける。母は送別会の伝言を娘に伝えないようにするが・・・。

マーティン・マクドナー作品を長塚圭史が演出する3作品目は、黒田勇樹の降板による長塚圭史本人の役者出演になった4人芝居。悪いことが立続けにおこるのではなく、真綿で首を絞めるように悪意が襲ってくる後味の悪さ全開の物語を、白石加代子と大竹しのぶが演じきって、もっと後味が悪くなる仕上がり。

登場人物の住民ですら何もないというアイルランドの片田舎で展開されるのは、介護の問題であったり、都市と地方との格差であったり、精神病であったり、ほとんど現代に置換えられる内容ばかり。他の観客が最初から結構笑っていたのに驚いた。

恋人らしい恋人もなく40才を超えた大竹しのぶ演じる娘は、かつてはロンドンに働きに出ていたが、アイルランド出身ゆえの差別にあって気を病んでしまい、今では他人と挨拶もしない内向きな性格になってしまった。娘に嫌がらせばかりしている白石加代子演じる母親は、実は独りの場合はテレビを観るかラジオを聴くかしかない身体の弱った老人で、他の娘が結婚して家を出た今となってはこの娘が唯一の頼り。争ってはいても、依存しあっていることには変わりない。

娘にこの境遇から脱出する希望を見せる兄を真摯に演じる田中哲司。対して、長塚圭史演じるまったく悪意のない弟は絶望を突きつけます。その行為のひとつひとつが、ことごとく母娘の関係を乱す。開演前の幕に書かれている「May you be half hour in heaven afore the devil knows you're dead(調べたらアイルランドのことわざだそうです)」のThe devilはこの弟ですね。ちょっと大げさに演じることで無邪気さ(とその行動が引起す悲劇)を強調した長塚圭史はさすがです。

最後の場面で(自粛)、心中の移り変わりはいかばかりかと想像がとまりません。これがマクドナーの処女作って、やはり天才はいるもんです。

広めのパルコ劇場の舞台を、中央に家を配置することで狭く使う美術がよく出来ていて、終盤の大竹しのぶの怖すぎる独白場面は照明の勝利。

役者も上手でしたけど、演出も脚本の核をきっちりつかんでいて、非常にすばらしい座組でした。ただ、後味が悪すぎて私がまいってしまいました。衝撃の大きさだけなら「ピローマン」のほうが大きかったのですけど、こちらのほうが現実味がありすぎて、受止めるのに体力を要します。

芝居の関係者なら絶対抑えておかないといけない1本ですけど、そして営業妨害するつもりはないですけど、ちょっと普通の人に勧めるにはきつい内容です。観る前には体調を万全にして臨んでいただければ、と。

2007年12月15日 (土)

劇団、本谷有希子「偏路」紀伊国屋ホール

<2007年12月14日(金)夜>

女優を目指すために、娘が親の反対を押切って強引に上京して9年、劇団の仲間が売れていく中で自分の才能の無さに気がつき、しかも所属している劇団が解散することに。女優になることを断念して実家に戻ることを決めているが、親の反対に逆らった手前と、田舎の親切な空気に馴染めないため、踏ん切りがつかない。そんな状態で年末年始を過ごすために、お遍路参りの途中にある親戚の家にやって来た娘とその父。娘はこの機会に親に謝るのと、田舎の雰囲気に馴染むことを狙うが・・・。

ずいぶん久しぶりな気がする本谷有希子の芝居は、お得意の(?)自意識過剰な若い女性を軸にした騒動。なかなか面白かったけど、初日だったからか一部固い部分も。

自意識過剰な主人公に拮抗する登場人物として、突然切れる父親を配置して、二人の偏よった思い込みを中心に話は進行。父親役の近藤芳正が全開なのに対して、主人公役の馬渕英俚可がどうにも固い。固くなるのが役どころとはいえ、もう少し馴染んでくれば芝居が一段上がった出来になりそう。他にはすでに劇団員の感がある吉本菜穂子を筆頭に、加藤啓、池谷のぶえが緩急つけて盛上げる。江口のりこもまだ少し固かったけど、初日ならこんなものか。

脚本は楽しめたけど、途中なくても大丈夫そうな場面があったのと、最後に使われる伏線が出てきた瞬間にわかってしまったのがもったいない。

空間を上手に埋めた意味ありげな美術とそれを生かす照明、芝居の流れに沿って着替えられる衣装が非常に自然で、劇場の規模に見合ったスタッフワークの充実を感じさせる。ただし高い天井を生かした映像はオープニングこそ格好良かったが、そのあとはあまり上手に活用しきれていない感あり。あと残念なのが選曲で、これで終わりではないかと勘違いさせられる曲が3回くらい流れて、拍手のタイミングをはぐらかされた感じが残った。あの曲は確かナイロン100℃の「消失」でも使われていたような記憶があってデジャブ。

ちなみに終演後のロビーは何となく関係者だくさんな空気で、初日のためか認知度が上がったためか。

自分の自意識過剰とか偏見を突いてくれる本谷有希子の話が好きな私は満足。でも当日券狙いなら、日程後半をお勧め。

東宝製作「恐れを知らぬ川上音二郎一座」シアタークリエ

<2007年12月11日(火)夜>

紆余曲折を経て役者になり一座を旗揚した川上音二郎。日本で興行を失敗して一座が解散となった彼は、新しい座員を募集してアメリカ公演を強行する。最初に公演を行なったサンフランシスコでこそ人気を博したが、売上を持逃げされてから苦難の連続。ようやくボストンで劇場を確保したが、今度は座員がストライキを起こす。起死回生の策として隣の劇場で人気の「ベニスの商人」を、ストライキに加わらなかった座員と、役者の素人だけで上演しようとする。

派手なキャスティングと万全のスタッフで臨んだシアタークリエの柿落とし。でも結果は、面白いけど値段に見合わない仕上がりとなりました。

何しろ実力派の揃った舞台なので、三谷幸喜は全員に見せ場を作るのですが、それがかえって冗長になってしまいます。

脇が達者なのは三谷作品の特徴ですが、今回も戸田恵子、今井朋彦、堺雅人は舞台を締めます。さらに飛び道具を最大限活用した瀬戸カトリーヌと堀内敬子には笑わせていただきました。残念だったのは主役の3人で、ユースケ・サンタマリアは上手いけれど地味で疲れ気味、常盤貴子は残念ながら下手、堺正章は上手いけれど声が枯れていてしかも一人だけ遅いリズムでの演技でした。

それにしても柿落としに合わせてそれにふさわしい、劇場を舞台にした作品を出してくるところは、三谷幸喜の制作面でのサービス精神は抜群であります。劇中劇やその練習の場面が特にいいです。

役者のファンならお勧め、そうでなければお金と時間次第、といったところでしょうか。

最後に新劇場のメモを2つ。一つ目は当日券。キャンセル待ちで30枚ほど出ていたが、最後の数名はおそらく買えていない。電話予約はぴあだが、購入時に身分証明証の提示が必要。窓口は2箇所で捌くも、チケット予約はコンピュータで順番に処理するので結局は並ぶ。2つ目は劇場。客席はまったく新しさを感じ「させない」シンプルな設計だが見易さは後ろの席でも容易。パルコ劇場を横に広げたイメージ。収容人数の割にロビーが狭い。廊下に段差が多数あったり、ボックス席の一部は客席を横切らないとたどり着けない。客席にスペースを割いてロビーや廊下を犠牲にした模様。その代わり休憩時間中なら客席内で飲食可能(ロビーにいたスタッフに確認)。

2007年12月 3日 (月)

グリング「Get Back!」ザ・スズナリ(若干ネタばれあり)

<2007年12月2日(日)昼>

原作と作画にわかれて漫画を描いている女性コンビと、男性アシスタントの3人組。次の連載に向けた構想を練るため原作者の親類が経営する田舎の民宿に宿泊に来た。原作者の能力に心酔する作画家は原作者の提案を待つが、売れっ子の原作者は複数の仕事を抱えているため、このコンビ向けに提供できるアイディアが思いつかない。険悪な雰囲気の中、民宿の関係者が作画家に一目惚れする。

当然それだけでは終わらないグリングで、今回も期待を裏切らない出来でした。善悪とかを持込まず、たぶん折込パンフレットの通り「誠実」を描きたかったんだろうなと思わせる芝居です。いろいろな展開の割には全体ではあっさり目で、お涙頂戴に安易に持っていかないのがまた誠実といえば誠実なんでしょうけど、役者に要求するレベルが高そうな演出でした。

民宿経営夫婦(杉山文雄、高橋理恵子)の名前だけ登場する息子の、本編に絡むような絡まないような話題が何気なくてよいです。

以下、全体の出来がよいだけに気になった点が2点。

原作者役の片桐はいりが難しい表現をものすごくあっさりこなして格好よくて、格好よすぎて、中野英樹とか萩原利映とか遠藤留奈がたまに霞んでみえました。いままでグリングでそんなこと感じたことなかったんですけど。そんな中で高橋理恵子の声を聞くたびに和んでいた私は疲れていますかそうですか。

スクリーンを使った映像もあったのですが、当日券の自由席では観づらかったこともあって、場面転換のためとしか思えなかったです。それは残念。

これらは細かい話で、週明けからは席が余っているそうなので、まだグリングを観たことのない人は、この機会に挑戦してはいかがでしょうか。スズナリのサイズだと俄然はまります。

で、おまけとして、今回の芝居とは直接関係ない点で3つの注文。

その1。席が余っているのはお気の毒なのですが、芝居が終わって余韻が残るカーテンコールでの宣伝はそろそろ止めた方がいいと思います。お笑い系の芝居ならいいのですが、この手の芝居だと冷めてしまいます。

その2。スズナリのサイトには当日券は1時間前から発売と明記されているのですが、グリングのサイトだと「受付は開演の1時間前から」としか書かれていません。自由席も用意しているのだから「全公演とも当日券は開演1時間前から発売」「X日は余裕あり」と明記してもらえると、当日券派としてはありがたいです。カーテンコールで宣伝するよりそのほうが先ではないかと。

その3。今回の芝居でも占いの場面が出てくるのですが、「カリフォルニア」の占い、「虹」の交霊に続いてオカルト(悪い意味ではなく、その手のネタ全般の意)3回目です。作者におかれましては、しばらくはオカルトネタを封印してはいかがでしょうか。単発で観れば面白い場面でも、ちょっとだけ長く観ている客としては「またか」の気分になってしまいます。

2007年11月24日 (土)

メジャーリーグ主催「野鴨」シアター1010ミニシアター

<2007年11月23日(金)夜>

19世紀後半のノルウェー。裕福な事業家の息子は、事業欲の強い父に嫌悪を抱いている。事業に絡んで父が芸術家である友人の父を破滅に追いやったと思い悩む息子は、何とかして友人の活力を取戻すべく、彼の所有するアパートに居を移す。

観終わった最初の感想は「なんて邪悪な芝居」。どの程度原作を脚色したのかはわからないけれど、もう邪悪な要素満載で脇道がほとんどない。で、規模を無視した手抜き一切なしのキャスティング。うーん、誰を誉めればいいかこまる。絶賛。

いかにも公民館なスペースを通り抜けると突然現れる、噂どおり巨大な美術。客席がおまけに見える。室内が舞台なのに森を作るというその発想は凄い。で、どうも音響が妙に気になると思ったら生演奏。贅沢。

これらを生かしきった演出もすごい。今までの評判だとタニノクロウってもっとアングラな芝居を創る人かと思っていたんだけど。休憩時間にロビーに掲示されている記事を読んだら、この芝居は今までと全然違うものみたい。

ただし、思いっきり見切れの席を引いてしまった。選択の余地はあったんだけど、最初に勧められた席を選んだら見切れるし、役者やスタッフの通り道に近すぎて姿勢も縮めないといけないし、あれはいかん。あと3連休の初日とは言え、あれしきの座席数も埋まらないようでは、スカスカ感は免れない(ちょうど近くの席が空いていたので)。だからといって役者の演技に手抜きはありませんでしたけど。

もうひとつ言うと、当日券の発売は30分前って聞いたはずなんだけど、それより早く買えた。なんか連携というか連絡が行届いていない運営だ。

ただし11月の丸一ヶ月公演のおかげで、観ることができたことには感謝。まだ1週間あるので、邪悪な芝居の好きな人とか、正義病が嫌いな人(笑)はぜひどうぞ。当日券で観るつもりなら発売の有無は事前に確認した方がいいです。

2007年10月 8日 (月)

パルコ企画製作「キャバレー」青山劇場

2007年10月7日(日)夜

第二次世界大戦前のベルリンのキャバレー「キット・カット・クラブ」は連日大賑わい。そこの歌姫サリーは、客のアメリカ人クリフと恋に落ちる。幸せな生活を誓った2人だが、近づく戦争が2人の周囲に忍び寄る。

なんかいろいろと有名なミュージカル。来日公演で過去に観たことがあるけど、それよりもずっと面白い。翻訳臭を取除き、不自然な場面は小ネタで馴染ませ、さらに松尾スズキのオリジナリティーに最強の出演陣が加わって出色の出来。ひょっとして日本のミュージカル史上もっとも自然で違和感のない出来なのでは。

とにかく主要な出演者の仕上がりが素晴らしい。松雪泰子の歌とか、阿部サダヲのMCとか、小松和重の貫禄とか、平岩紙の無邪気さとか、森山未來の素直さとか、村杉蝉之介の怪しさとか。秋山菜津子はもはや別格の域。ダンサーも奏者も、上手な人を集めています。曲がいいのは元からですけど、演奏は特に気に入りました。上手いですよね?(<観てきた人)

あと訳詞が、適度に英語を残したりいまどきの口語を混ぜたりしつつ、音符の数からそれほど離れないように言葉を選んで、とにかく不自然さを感じない。クラブやパーティーの場面が多いので歌う場面自体に不自然を感じないで済むのも大きい。

その上で脚本本来の暗い部分がはっきり浮び上がるような、メリハリを持たせている。洋モノのミュージカルに対して松尾スズキの演出力が圧倒的に上回った感あり。

ミュージカルが好きな人はもちろん、ミュージカルが苦手で敬遠している人にこそ勧めます。これで無理ならミュージカルは当分諦めた方がいいくらい。高いですし、チケット取りづらいですけど、そこを何とか工面して一度キット・カット・クラブに行って御覧なさいな。

と絶賛して終わってみる。いやほんと、ミュージカル苦手の私が言うのですから。

2007年10月 7日 (日)

キューブ企画製作「犯さん哉」PARCO劇場

2007年10月7日(日)昼

古田少年が成長していく過程を描くナンセンスコメディー。

筋らしい筋がない話。超がつくほどナンセンスなコメディー。チラシにもPARCO劇場のサイトにも内容については何も書かれていなかったことがその証拠。観終わってから本屋でシアターガイドを立読みしたら、そのことが書かれていて・・・。

劇中でも「PARCO劇場で8500円」と言っていたけど、うーん、劇場はさておき、5000円ならよかったのに。犬顔家の一族の陰謀は高くても納得できたけど。

というか、劇団健康再結成の「トーキョーあたり」が駄目だったのに、こういうのを観てはいけなかったな。役者は良い人ばかりなので、ナンセンスコメディーが好きという人は、挑戦してみては。