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2008年3月24日 (月)

二兎社「歌わせたい男たち」紀伊国屋ホール(ネタばれあり)

<2008年3月22日(土)夜>

ある都立高校の卒業式当日。元シャンソン歌手で、今は臨時の音楽教師として勤務しているミチルはピアノが苦手。体調が悪い上にコンタクトレンズを落としてしまい、楽譜を読めない。今後も勤務を続けたいミチルはなんとしても卒業式での伴奏を成功させたい。同僚の社会科教師である拝島の眼鏡がぴったりであることを思い出し貸してくれるように頼むが拒否されてしまう。日の丸掲揚、君が代斉唱に反対する拝島は、自分の眼鏡で君が代の伴奏の手助けをすることに抵抗があるという。眼鏡を貸してもらうための説得が、いつのまにか校長や他の教師も巻きこんだ日の丸、君が代論争になっていく。

幸運にも初演をベニサン・ピットの通路席かぶりつきで観られた名作。役者も美術もそのままに、脚本演出に細かい手直しを入れて再演。ホームページには「今回限り」と書かれているので、少なくともこのキャストでの再演はもうないでしょう。と思って観て来ました。

感想は、うーん、初めての人が観るならよく出来ているし笑いどころもたくさんあるしで楽しめるはずの仕上がりですが、脚本演出の細かい変更が私の苦手な方向に作用してしまい、初演の感動を再びとはなりませんでした。以下ひたすら初演との比較ですので、そんな比較のいらない方はここまでで。

初演だと、日の丸君が代なんてどうでもよい、何と言われようとこの仕事を手放すわけにはいかない、というミチル(戸田恵子)の態度が他の役やテーマの中和剤となっていたのですが、今回の演出ではミチルが徐々に真剣に考え込むような印象を受けて、中和剤らしさが半減していました。

拝島(近藤芳正)を説得する他の役は初演よりも嫌らしさが強調されていて、言い分を聴く以前に嫌悪感を感じさせるような台詞や演技が目立ちました。拝島は初演とそんなに変わらないのですが、結果として
拝島は嫌な役から嫌われる役->拝島がいい役に見える->拝島の言い分が(劇中の)正義のメッセージに近づく
という流れを感じてしまいまして、初演のウェルバランスが消えてしまったのが残念。特に、臨時教員は校長の指導に従わなくてもいい、と拝島がミチルに説明する場面で、校長(大谷亮介)が契約更新しないことをちらつかせるのは、初演にはなかったと記憶していますが、決定的に芝居のバランスを悪くした、非常に残念な場面です。

初演と比べて気の毒な面もあって、校長の演説場面は、初演では小泉元総理の真似を取入れることで笑いと批判のバランスを取っていました。今回はそこを石原都知事の真似に変更して対応していましたが、いまいちでした。一部福田総理の真似もしていたかもしれませんが、最近テレビを観ていないので真似されてもわからない(これはこっちのせいですけど)。

というわけで、初演を観てしまったために粗探しになってしまってもったいなかったというのが感想です。

補足:
今のところ私は日の丸、君が代については正直どうでもよいという立場なので、それに関する突っ込みはなしで。むしろ改めてこの芝居を観て、何を教師の責務とするか、何を教師の責務としないか、教師の責務を考えるときにどのくらいの範囲で考えるべきか、そっちのほうに興味をもちました。

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2008年3月16日 (日)

緊急口コミプッシュ:赤坂RED/REVOLUTION「東京」赤坂RED/THEATER(2008年3月23日まで)

ものすごく久しぶりの緊急口コミプッシュです。公演概要はこちらのエントリを見てください。

正直プッシュしようかどうしようか迷いました。個人的には心を打たれましたが、「人生そんなものじゃない」「人生そんなものなのに今更何を」という反応をする人もそれなりに予想される内容だからです。それでもプッシュするのは

  • 万人受けするものばかりが良いものでもない。むしろこのくらい直球な舞台も最近は珍しいので観る価値はある。
  • 名前を覚えておいて損はない役者たち。
  • 劇場主導で事前準備の脚本に対して全役オーディションするというこの企画への賛同。それでどのくらいの質の舞台ができるかの参考基準としての価値。個人的には高い水準だと思う。

という観点から、このまま埋もれさせるのは惜しいと思ったからです。当日券については、一部キャンセル?の席に端と後ろを加えて相当数余裕があったので、ぜひ問合せてみてください。

こうすると悔やまれるのは、新国立劇場研修所の修了公演(これとかこれを参考)を観られなかったこと。3年間研修で育成した役者と、オーディションで集めた役者との比較をぜひしたかった。両方観た人はぜひ比較感想を書いてください。

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赤坂RED/REVOLUTION「東京」赤坂RED/THEATER

<2008年3月15日(土)夜>

高校の同級生たち。24歳になった今でも毎日のように集まって遊ぶ仲間だが、そのうちの2人が「サクセス」を求めて東京に行くことに。それを聞いた元同級生の引きこもりも一緒に行くことを主張。住込みで勤める1人の部屋に居候して始まった3人暮らし。

赤坂RED/REVOLUTIONは劇場主導企画の名前。戯曲先行、全キャスト別オーディションと制作課程が異様に充実した企画(こちらでオーディションの様子を紹介)。第一弾はTHE SHAMPOO HATの赤堀雅秋を脚本演出に迎えて、遅めの青春群像の直球勝負。

元々えんぶゼミの卒業公演に書下ろした脚本を修正したとのことで、上京であるとか、劇団であるとか、生活であるとか、それにふさわしい内容が一杯。THE SHAMPOO HATの「その夜の侍」をもっと直球に、もっと前向きに捉えたような脚本。地元に残った人たち、上京した人たち、働く人、役目を果たす人、断念せざるを得ない人、それぞれの立場は違うのですが、みんな生きることに一生懸命であることは共通項。そこを前向きに掬い取る力強さに今回は脱帽です。

犬や猫の使いかたの上手さだけでなく、劇団の裏事情をちりばめるあたりの職人芸も堪能できます。稽古場ルールって何ですかそれ(笑)。

役者については、申し訳ないですが名前すら聞いたことのない人がほとんどのキャスティングでした。が、全キャスト別にオーディションしただけあって、安定どころか個性の強さにを前面に出したはまり役ばかり。あえて挙げるとすれば絶妙のテンションで舞台を引張った元ひきこもり役の清水優と、直球台詞に説得力をもたせた劇団座長役の佐藤幾優でしょうか。ちょっとだけ、パチンコ屋バイト兼女優志望役(松永裕子)に二面性を感じてしまいましたが、許容範囲です。

オープニングとクライマックスでかかっていた音楽が非常に格好良かったので、ご存知の方、教えていただけると嬉しいです(オリジナルかな?)。

絶賛かと聞かれると少し違うのですが、普段悲観的、皮肉的な考え方をする私にとって、非常に胸を打つ、心に残る内容の舞台でした。

最後に雑感を2つ。
・当日パンフレットにはそれぞれの役者の所属劇団ではなく、所属事務所が併記されていた。これはこの舞台が、興行場の成功だけでなく、役者の売込も兼ねていることを制作側が明言していることと同じ。第二弾があるなら、役者の皆さんはぜひ挑戦することをお勧め。
・この劇場は初めてだったけど、「きれいなスズナリ」「すこし広いTHEATER/TOPS」「もうすこしまとまった俳優座劇場」といった趣。座りやすい椅子と合わせて、非常に好感度大。

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2008年3月14日 (金)

WOWOW野田秀樹特集

THEACONで紹介されていましたがWOWOWの特集がすごい。

  • 4月1日(火) 深夜1:50 「THE BEE」日本バージョン&ロンドンバージョン
  • 4月18日(金) 深夜0:00 「ロープ」(出演:宮沢りえ、藤原竜也ほか)
  • 4月19日(土) 午後5:30 「キル」(出演:妻夫木聡、広末涼子、勝村政信ほか
  • 4月25日(金) 深夜0:00 「キル」(出演:堤真一、深津絵里、古田新太、野田秀樹ほか)
  • 4月25日(金) 深夜2:40 「赤鬼」(出演:野田秀樹、富田靖子、段田安則、アンガス・バーネット)
  • 4月25日(金) 深夜4:20 「Right Eye.」(出演:野田秀樹、牧瀬里穂、吹越満)

特に4月25日が垂涎もの。「Right Eye」「キル(初演:放送は再演)」「贋作・罪と罰(初演)」は昔ビデオを持っていたんだけど、人にあげちゃったんですよね。もったいない。

でも「半神(野田地図版)」「パンドラの鐘」のビデオはまだ持っている。

この海原越しに呼びかけて船に警告してやる声がいる その音をつくってやろう
今までにあったどんな時間 どんな霧にも似合った声をつくってやろう
例えば 夜更けてある君のそばのからっぽのベッド 訪うて人の誰もいない家
また 葉の散ってしまった晩秋の木々に似合った そんな音をつくってやろう
鳴きながら南方に去る鳥の声 十一月の風や 寂しい浜辺に寄する波に似た音 そんな音をつくってやろう
それはあまりにも孤独な音なので誰もそれを聞き漏らすはずはなく
それを耳にしては誰もがひそかに忍び泣きをし
遠くで聴けばいっそう我が家が暖かく懐かしく思われる そんな音をつくってやろう
おれは我とわが身をひとつの音 ひとつの機械としてやろう
そうすればそれを人は霧笛と呼び
それを聴く人はみな永遠というものの悲しみと生きることのはかなさを知るだろう

当時あまりにも繰返し観たので、まだ覚えているかなと思って今なんとなくタイプしてみたら、結構覚えていた。探したところ、原作についてはこちらに、戯曲についてはこちらに掲載されていました。ビデオやこれらサイトと照らし合わせつつ、後日漢字や改行を修正しておきます。

舞台版の訳は、萩尾望都が自分の作品用に自分で訳したものを採用した読んだ記憶がある。それが小説の翻訳家の訳よりもよいとどこかのサイトで褒めていた。上記2つを比べるなら私もそう思う。戯曲を買っておけばよかったと今でもたまに悔やむ。戯曲は再版してくれないかな。

で、野田秀樹特集は観たいが、どうしたものか。

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2008年3月 2日 (日)

結局観に行けなかった修了公演

仕事が忙しすぎた。なのでせめてこんなリンクでも貼っておきます。
アレーシャ日記
しのぶの演劇レビュー
他に検索する気力もない。無念。

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世田谷パブリックシアター + コンプリシテ共同制作「春琴」世田谷パブリックシアター(ネタばれあり)

<2008年3月1日(土)夜>

富裕な商家の娘に生まれるも、9歳で失明した春琴。丁稚奉公に来ていた佐助を気に入り、手引きをさせるようになる。失明した春琴は三味線の稽古に励み、それに触発された佐助も主人に内緒で三味線を始める。やがて春琴の知るところとなり、春琴が稽古をつけるようになるが、それ以来、春琴のきつい性格と、佐助の羨望が合わった稽古が通じて2人の奇妙な関係が始まる。

谷崎潤一郎の「春琴抄」「陰影礼賛」を舞台化。内容は(読んだことはないけど)まるっきり「春琴抄」で、演出(これは読んだことがある)に「陰影礼賛」を採用。思いっきり地味なんだけど、妙な力強さを持った仕上がりに。

いろんな人がいろんな役を演じ、子供時代の春琴に到っては人形で登場(笑)。棒と畳を駆使した場面転換でいろいろな和様の舞台を作っていくあたりはさすがサイモン・マクバーニー。何でこれで和式舞台が成立するのかわからないけどやっぱり成立しているんだなこれが。

原作の小説の内容がエロティックなんだろうけど、何と言うか、叫んだり走ったりしない点では地味でも、全体にねっとりした雰囲気で、飽きませんでした。逆に特定の役者の活躍を期待するとがっかりします。深津絵里をあそこまで地味に使うというのは、日本の芸能界では許されないのでは(笑)。

スタッフでは陰影を強調した照明と三味線の生演奏(本條秀太郎)が一層怪しさを増幅。映像は控えめで、その点は肩透かしだけど、得意の映像をあえて自重したのもなんとなく伝わる。

この舞台を成立させて絶賛ものなのが、立石涼子の朗読。小説の地の文のほとんどを朗読していたのだけど、やっぱりプロはすごい。あまりにも心地よかったため、聞きほれていたことに終わるまで気がつかなかった。

立見で接したスタッフの接客内容(立見案内の手際の悪さと、声の小ささによる説明不足(聞こえないんだってば))に一部不満があり。こんなにレベルは低くなかったと思っていたんだけどな。

ポストパフォーマンストークは野村萬斎、本條秀太郎(三味線)、野田学(制作時の通訳)の3名。以下覚えている範囲で大意。間違っていたら勘弁。

  • 演出家にいろいろ聞けるといいんでしょうけど、2月末に帰国してしまった(笑<昨日ってことです)。忙しい人なので。
  • サイモン・マクバーニーのワークショップに参加したのは10年前から。そのころは「陰影礼賛」をやりたいと言っていた。
  • 三味線をばらすと、組立てて弦を張りなおすのは大変なこと。最初に三味線の説明を求められたときにうっかりばらせることを見せてしまったのが失敗。毎公演とも失敗しないか命がけ(笑)。
  • 具体的にスポットライトを当てたりしないでも、想像力を刺激できれば、観客が自分でスポットライトを当てた気分になる。
  • すべてお客さんに見せるというのが演出の方針のひとつ。陰になって見えない部分もあったとは思うが、基本的には役者は出ずっぱり。
  • (野村萬斎が「畳の裏にカタカナが見えて気になった」ので確認したところ)それもわざと残している。現代日本でラジオ収録するという設定だから、それを残して、むしろ見せてしまっている。
  • 畳は重さやすべりやすさに非常に気をつけて、たくさんの候補の中から選んだ。
  • ラジオ収録の設定についてサイモン・マクバーニーは「Radio4(イギリスの国営放送のラジオ)」と言ったので、通訳として「NHK第2」と提案した(笑)。
  • 「よくわからない」というのも演出の方針のひとつ。なのでいろいろな人がいろいろな役を演じて、誰が誰だかはっきりしなかったりする。
  • 日本では建物は幾何学できっちり作られている。逆に物事は曖昧だったりする。「見計らい」や「程よく」という言葉にもそれが表れている。
  • 観客からの質問「人形はオリジナルなのか」回答「オリジナル。人形は幼少期と少女期で2種類用意しているが、少女期の人形の頭のサイズと、その直後に入替わった宮本裕子の頭のサイズがほとんど同じ。実に小さい(笑)」

たまたま別のポストパフォーマンストークを記録した記事を見つけたのでそれも貼っておきます。

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