Bunkamura企画・製作「わが魂は輝く水なり-源平北越流誌-」Bunkamuraシアターコクーン(ネタばれあり)
<2008年5月10日(土)夜>
平安末期の源平合戦。木曽義仲軍と戦って敗れた平家の武将である斎藤実盛は、息子の五郎も失ってしまう。が、五郎は父にのみ見える幽霊として父に付添う。そんな状態で故郷に逃延びた実盛だが、そこでは出兵を避けていた息子の六郎が、義仲軍に出奔してしまう。かつて縁あって実盛と五郎が過ごした木曽の軍勢にあこがれての行動だったが、出奔先で六郎が見た現実は、想像とはまったく違ったものだった。
狂気が正気を支配する戦国時代劇に名を借りた硬派な脚本を、予想に反して格好いい仕上がりで。
強いように見える実盛が、弱音を吐く代わりに五郎を呼び文句をつけるという設定が、終盤の実盛と巴の会話の基になる。この場面の会話がしびれさせる。「私たちの間にはなんと大勢の若者が立ちふさがるのか」「そう言うべきではない、その若者たちこそ私たちの未来ではないか」(大意)。このご時世にこの台詞が持つ意味の重さったらないです。狂気だらけの進行を一度にひっくり返す最高の場面です。
一番すごかったのは巴を演じる秋山奈津子で、強い女と弱い女の切換があざやか。それに回想場面で素直な巴を見せるのが、とても新鮮だった。観るたびに期待を上回るものを観せてくれる女優です。
珍しく笑いもそこそこ投入しつつ、前にも見かけた例の馬も出てきますが、全体としては野蛮さよりも素直さを優先させた蜷川演出が、何か遺言のように感じられます(失礼)。父と息子の確執、老いと若さの関係で、何か考えるところでもあったんでしょうか。
当日券でもコクーンシートが残っていましたので、お金を気にする人はそちらを検討しては如何。
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