青年団「眠れない夜なんてない」吉祥寺シアター(ネタばれあり)
<2008年7月6日(日)昼>
マレーシアのとある高原にあるコテージ型高級リゾート。移住して長期滞在する者、別荘代わりに所有して自宅と行き来するもの、短期滞在で訪れるもの、働くもの、それぞれが抱える滞在の理由と日本に対する思いについて。
できるだけ観ようと思って見逃しつづけた久しぶりの青年団は新作。観ていて「S高原から」に似ているなと思ったら、当日パンフに「続編のようなものだ」と本当に書いてあった。「S高原から」は思わせぶりの連続だったけど、今回はもっと直接的で、問題続きで、その割に乾いた雰囲気の芝居だった。口コミプッシュを出してもいいと思えるくらい楽しくて毒のある芝居だったけど、すでに公演は終了しているのでそれは省略。
それにしても青年団は役者の層が厚い。あれだけバリエーションのある15人の役者のうち、客演が2人だけでこなしていたことをあとで確認して驚いた。あとみんな美声で、感情の載った声を話せる。文句ないですね。山村崇子のどこかつかれた演技を見所に挙げておきます。
音楽なし、照明はほとんど変化なしの青年団ではスタッフワークの見所が美術になりがちですが、今回の美術は広い空間を広く見せたまま狭く使うお手本みたいな美術でした。
難点としては芝居の出来にくらべて、当日券の受付がお粗末だったこと。いつもはもっとスムーズだったはずだけど、今回は予約券や正体券をさばくのが遅れて、そのまま当日券まで影響がでて、開演がたしか10分くらい押した。平田オリザ本人が受付にまで出てくるほど心配だったのかもしれませんが、そのとおりでした。人手が足りていないわけではないはずなのに。立見の私は当日パンフ(座席に事前配布)ももらえなかったので、余っていたパンフを失敬してしまいました。次回は改善を求む。
で、内容ですが、率直すぎて一番ショックを受けたのが、ラスト前で長期滞在者の三橋が語る「日本が嫌いなんですよ」という台詞。何がショックといって、最近私がいろいろ考えている身のまわりの現象とか、報道される事件とかを突詰めると、同じような感想にたどり着いただろうというそんな自分に気がついてショック。それを一言で言い切ったところがこの芝居の凄いところ。いや、個別的具体的事象ではいろいろ改善を試みてもがいているので今の私がそこまで絶望しているわけではないですけど、でもそう言いたくなる気持ちが最近少しわかってきた。
で、芝居の中にいろいろ込められていた日本の現象をメモ代わりに羅列しておきます。間違っているかもしれませんけど。
- 早期退職
- 古いものを大事にしない、できない
- 出産に対する不安
- いじめと同調圧力
- 結婚しない、できない人たち
- 古いパターンの経済成長を是とする雰囲気
- 引きこもりと、引きこもりに立向かえない家族
- 派遣社員の切替(一定年数以上継続契約すると正社員雇用を打診しないといけないのでその前に契約を切ること)
- 自分の知らないことを話題にできない人
- 日本でなく外国で働く日本人の医者
- 不公平な宣伝
- 経済格差
- 仕事や家族関係に関する男尊女卑
- 新しすぎる恋愛関係
- 自国の歴史を伝えない教育
- 外国人に接することに慣れていない
- 日本のニュースはインターネットで海外でも読める
当日パンフに載っていた「日本を降りる若者たち」は読んだことがないのであとで読む。
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