パルコ企画製作「SISTERS(プレビュー公演)」PARCO劇場
<2008年7月5日(土)夜>
とある田舎のホテル。料理を担当していたオーナーの妻が自殺してしまい、料理のできないオーナーが、レストランを経営している従兄弟の尾崎に料理の手ほどきを頼む。新婚の尾崎はレストランの改装時期に合わせて、妻の馨と一緒に泊り込みの指導に来る。ホテルには、作家であり亡くなった妻の兄である男とその娘が住込んでおり、娘は馨に興味を持って近づくが、その出会いが夫も知らない馨の過去に触れてしまう。
これを最後に外国へ1年間出かけてしまう長塚圭史の書下ろし。初日どころかプレビュー初日だったので、笑いを取りたそうな場面でもほとんど笑いが起きていなかったけど、このテーマ(観てのお楽しみ)ではそうなってもしょうがない。数日たって手直しされたらもっと凄いことになっているでしょう。個人的には嫌悪感を覚えて前半はむかむかしていましたが、松たか子演じる馨の後半の展開には、むしろ救われました。
幅広い役者を取揃えていますが、終始実力全開だった男性陣に比べて、女性陣がやや固めの様子。これは数日したら解決するでしょう。演出では「血を見せない」という制約を課していたようですが、その分脚本の言葉がストレート。血を見せられるよりも私にとってはグロい。
スタッフワークは、とにかく禍々しい音楽や、場面転換が見事な照明などもすごいのですが、今回プレビュー公演を必要とした美術は注目。あそこまで明示的な抽象美術?を仕込まなくても十分成立つはずなんですけど、それをやってしまうのが長塚圭史で、実現できてしまうのがパルコプロデュースのいいところです(余談ですが、終演後に美術を確かめに行って「舞台に触らないで下さい」とスタッフに言われる人多数)。
内容はいい意味で賛否両論わかれる芝居という気がしますが、役者の熱演は内容の賛否を上回る実在感を目指して、結構いい線までいっています。プレビュー初日からカーテンコールが3回おきるくらいですから、チケットを持っていない人は空いている前半に、いい席で観るとよいのではないでしょうか。
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