青年団「冒険王」こまばアゴラ劇場
<2008年11月22日(土)夜>
1980年のイスタンブール。もともと西欧人が居つかない国のため、外国人向けの安宿に日本人だけが泊まっている部屋のひとつ。泊まりに来る者、旅立つ者、泊まり続ける者たちのいろいろな話。
7割が実話と当日パンフに書かれた、平田オリザ17歳の旅行時の体験談。初演は1996年らしいけど、今観ても全然古くない。笑える場面も多数あるし、前作「眠れない夜なんてない」よりもいろいろな情報がストレートに表現されていて、誰にでも勧められる、面白いと素直に言える作品です。
音響なしでも大丈夫という、あいかわらず層の厚い役者陣です。青年団の役者は個性を消すのが上手い人が多いのですが、大竹直はいい意味で妙な存在感を放っています。目立つ役だからということもないと思うのですが、青年団にしては珍しい。
以下当日パンフを読まないとわからないので申し訳ないです。
当日パンフによれば、もともとは「怠惰、退廃」を描写したが、前作の後で見直してみるととても真摯な若者たちに見えたため、今回は明るく積極的に演出してみたとのことで、実際そういう仕上がりです。何で作者がそう思ったかというと、推測ですけど、ここ10年くらいの間に
- 日本のしがらみというかシステムが世界の先進国と比べると特殊である
- 日本のシステムから脱出して暮らしている人も大勢いる
- 日本でも従来のパターン以外で成功する人が増えてきたこと
などの情報が、インターネットの普及で若者を中心に共有されてきたことが大きいと思います。逆に言えば、12年前の平田オリザは日本を脱出する若者に冷たかったけれど、今は日本以外で生活する他人への抵抗がなくなったのでしょう。ヨーロッパで仕事をして10年経って、「The World Is Flat」を実感しているのかもしれません。
ちなみに私の意見として、日本の将来は悲観的でも、日本人が国にお付合いすることはないし、実際に個人レベルで観察すると十分生きていける人たちが多いと思います(自分の事は棚に上げます)。なのでこの芝居、前作と違って、非常にポジティブに受止めました。
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