NODA・MAP「パイパー」Bunkamuraシアターコクーン
<2009年1月11日(日)夜>
今から遠い将来の火星。人間が住むのもおぼつかない地域も存在するくらい荒れ果てた中で、集まって住む姉妹とその父。姉は別居中だったが、父が子連れの女と再婚すると妹に聞かされて戻ってくる。訊けば、その子供が自分の仕事の後継者に欲しいのだという。
あらすじを書けば書くほどネタばれになるのでこの辺で。もうなんか、脚本がいろいろ露骨なんですがそれでも比較的落着いて観られるのは、火星という設定が現実と芝居の境目を明確に分けているおかげと思われます。ロープとかオイルなどの最近の日本語新作に比べても強いメッセージが、物語部分の言葉の強さや役者の力で、高いレベルでつり合っています。観る側の想像力をあてにした演出がまたよいです。ボケて笑いを取れそうな場面は結構あったんですけど、紳士淑女の役者が多かったのかそれともあえて演出で禁止したのか、笑いで客席を沸かせるようなことはありませんでした。でもそんなことは関係ないくらい面白い。新年1本目からいい芝居を観られました。
宮沢りえと松たか子のダブル主演で上手くないわけがないのですが、特に終盤の掛合いは吸いこまれます。詩人・野田秀樹の台詞のリズムをあれだけ生かせた2人の実力は確かです。でも実はもっと危険なのが橋爪功で、その終盤でみせる怪演は、一瞬だけですけど、2人を軽く超えてしまいます。あれを観ると、好演していた大倉孝二ですらまだ若手に見えてしまいます。役名のネーミングルールにも何か意味を込めていそうなんだけど、それはそのうち気が向いたら調べます。
スタッフワークは言うに及ばず。なのでひとつだけ、メインの衣装がよかったです。
当日券はこのご時世に2階まで並んでいましたので、これから当日券で観に行く人はそれなりの覚悟でどうぞ。
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