新国立劇場主催「ヘンリー六世(第一部、第二部、第三部)」新国立劇場中劇場
<2009年10月31日(土)一日中>
王座を目指した権力欲に取付かれた馬鹿共と、その巻添えで名誉を守って死んでゆく人たち。または「お前が言うな」の繰返し。
三部作一挙上演で、しかも重厚な役者が揃っていて、これは見逃せない。いろいろ考えて、当日券で苦労の末、首尾よくチケット取得。さすがスケールの大きさは別格で、観られてよかった。
三部揃うと、ある部の喧嘩が次で戦いになったり、この部の展開は前の部の出来事のためだったりするのがよくわかります。似たような名前が多く出てくるけど、それも順番に登場してくれるので、混乱も少ないです。笑ったり失笑したりする場面もそれなりにあって、肩がこる心配はありません。
どの部も独立しているけど、つながりを観るならやはり第一部から順に観た方がよいです。ちなみに第三部の後はさらに「リチャード三世」に繋がるのが順番ですが、今回でようやくリチャード三世のバックグラウンドや家系もわかりました。というか、ここまできたら「リチャード三世」も同時上演してほしいところです。
登場する役者は、台詞回しと声の張りが命の新劇ベテラン陣が中心。演技ももちろんいいけど、台詞を聴いていて非常に心地よいです。全員は挙げられないけど、それでも挙げずにはいられません。誰がいいかは人によるだろうけど、第一部の木場勝己と鈴木慎平、第二部の村井国夫と中嶋しゅうと久野綾希子と関戸将志、第三部の今井朋彦と岡本健一、そして三部を通して浦井健治と中嶋朋子がとてもよかった。
最高に素っ気ない舞台を照明で変化させて、現代の軍服を意識した衣装を多めに投入。王位を巡る争いの不毛さに、今の戦争の不毛さを連想させるのは予想の範囲内。ところが三部連続で(チケット購入から数えて)12時間も経つと、本当にずうっと戦いばかりが続くので、最後には「まだやってんのかよ不毛だな」と心の底から思えるようになるというおまけがつきます(笑)。だから冒頭のような粗筋になったのですが。あと、フランス人を馬鹿にしすぎではないでしょうか(笑)。あれが脚本に忠実だとしたら、昔からイギリスとフランスは仲が悪かったという証拠にできるくらいです。
ただですね、殺陣が緩いのはしょうがないとしても、選曲がダメダメでした。木場勝己がさらう第一部はまだ気にならないとして、第二部全部と、第三部前半は、まったりしすぎでぜんぜん乗れません。音楽で訴えかけるセンスに関しては、いのうえひでのり(今日見かけました)とか蜷川幸雄に完敗です。もったいない。
それを差引いても観る価値があると私は思いますが、落ちている人も見かけましたので、不安な人はやはり第一部から観ると、話がわかりやすくなっていいと思います。個人的には、予備知識の無い人が第二部をいきなり観ると、経緯と名前がすんなり入らないのではないかと思われます。第三部はむしろそうでもない。
当日券ですが、第一部は完売のキャンセル待ち(遅れたもので)、第二部はZ席が昼まで残っていてその後キャンセル数枚、第三部はほぼ全席種で大丈夫でした。どうやら通しで買っても座席は同じにならないようです。あと、舞台が客席側に張出しているので、1階席ならどこからでも円形劇場状態で距離は近くなるのですが、上手に池があり、そのせいでアクティングエリアまで距離が遠くなります。センターが一番なのですが、上手と下手で選ぶ必要があるなら下手をお勧めします。
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