青年団「カガクするココロ」「北限の猿」こまばアゴラ劇場
<2010年1月23日(土)昼/夜>
とある東京の大学の、生物の進化を研究するためのプロジェクトの研究室。そこに出入りする様々な学科出身の助手や学生が織成すある日の午後の一幕「カガクするココロ」。同じ研究室の10年後、研究は進化して猿を人為的に進化させる試みになっている。以前から残ってプロジェクトに関わっているものもあれば、新しい学生もいて、そんな研究室の午後の一幕「北限の猿」。
これに「バルカン動物園」を加えて平田オリザの科学三部作となるそうですが、今回は2本。時間の都合で同じ日に観ましたけど、いやー面白い。特に前者は、今まで観たどの平田オリザ芝居よりも、人間を生き生きと描いているように思える。
「カガクするココロ」は、惚れた腫れたの真っ只中にいる学生たちが、生物の進化という研究テーマに無自覚に関わったりなんかするあたりの匙加減が絶妙。特に、研究室の男性と付合っている女性が、その妹の友だちに生物への関心を熱心に語るサビの場面のシチュエーションと展開はたまりません。その点「北限の猿」は、10年たって進んだ研究と、10年たっても変わらない研究室のいろいろに、猿と人間の対比を絡めて描いて、もう少しクール。
登場人物は、名前が一部共通している割に、2作間のキャラクターのつながりはあったりなかったりして、しかもキャスティングが違う、それでいて同じ役者が似たような立場の役をやっていたりして、ちょっと2作続けて観たら混乱しました。そういうハンディを差引いても、私は「カガクするココロ」のほうが好みでした。次の日に予定していた芝居が観られなかったら、これだけでももう1回観ようと考えたくらいで、特に兵頭公美演じる山岡さん(前述の、研究室の男性と付合っている女性)は、観ていてうっかり惚れそうになった。危ない危ない。
これだけの芝居を上演して、まったく役者に困らない青年団の層の厚さと、平田オリザの演出の力量、再演に足る脚本の蓄積には、ほとほと感服します。もうすぐ終わるし、どうせお客さんは大勢来るでしょうから、口コミプッシュは止めておきますけど、「カガクするココロ」は口コミプッシュしたくなる仕上がりでした。上演時間は1時間半(客入れからならプラス20分)でも、感覚としては2時間以上に感じる。それくらい他の芝居と比べて情報が多い、よくできた脚本です。
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