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2010年5月17日 (月)

新国立劇場主催「夢の泪」新国立劇場小劇場

<2010年5月16日(日)昼>

終戦後の東京。新橋で法律事務所を営む弁護士夫婦。女癖が悪い夫に妻は腹を立てて別居している。そんなある日、妻が東京裁判で松岡元外相の弁護団の一員に選ばれる。

井上ひさし東京裁判三部作の第二部。前作が戦争責任の追求を中心においたのに対して、今回は戦争や裁判の位置づけ、それに戦争に翻弄された国民を描くことを主にしている。よくできているのは第一部と変わらないけど、熱中して観られないのも第一部と変わらず。

戦争の位置づけとか、差別の話とか、それはそれでいいんですけど、急に登場するから、第一部ほどではないにしても、脚本が説教くさいんですよね。あと音楽劇にすると上演時間が長くなるわけで、それも個人的にはマイナス。ただし、最後の10分はとても美しい。これは認める。

役者は全員上手だし、音楽劇なだけあって、みんな声がきれい。聴いていて心地よい。初見の人も多かったけど、石田圭祐と大和田美帆は別の芝居で観てみたい。

なんか意地になって観ている気がしないでもないけど、ここまできたら第三部も観ないといけない。でもどんな感じになるんだろう。

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劇団、本谷有希子「甘え」青山円形劇場

<2010年5月15日(土)夜>

父と2人暮らしの娘。母は娘を産んですぐに家を出て行った。父は娘になるべく外出しないように強要する。ある日、父が女性と再婚することを決めて、女性を家に連れてくる。

こんな粗筋で申し訳ない。事前の予想ほどエロくはない。役者は全員上手で、面白いかどうかと聞かれれば面白いけど喰い足りないと返事をする。なんか消化不良の2時間弱。

よく言えば登場人物の話に集中した脚本は、舞台や日常などの設定描写を省きすぎてなかなか入り込めず。抽象的で美しい舞台も、入退場のルールの自由度が高すぎて場面を思い描くまでに時間がかかる。

それらは認めるとしても、役者の演技の種類と脚本があまり一致しない。たぶん、広岡由里子のすごいデフォルメした(それでいて妙に台詞が自然なのは役者としての力量だと思われる)演技がこの脚本には求められていて、だけど小池栄子と大河内浩の演技が真面目すぎて、なんかテンポが悪くなったんだと思う。あと、水橋研二の演技にメリハリがなくて、そこでもテンポが悪かった。安藤玉恵はかなり頑張っていて、以前がっかりしていたので、これは収穫。

総じて、本谷有希子の演出もっと頑張れって結論になる。脚本のオチは結構面白かったけど、ここから公演後半にかけてよくなるかは、演出の問題なので、ちょっとわからない。

あと、これから当日券で観る人は、たぶん端のブロックは避けるのが吉。自分はほぼ正面の席で観たけど、前と横への演技が多いかもしれない。最後列でも舞台に近いのが青山円形劇場のいいところなので、極力正面よりの席を選びましょう。

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2010年5月10日 (月)

パルコ企画製作「裏切りの街」PARCO劇場(若干ネタばれあり)

<2010年5月9日(日)昼>

フリーターだがバイトもさぼって同棲する彼女のヒモになっている男が、テレクラでつかまった人妻に会いに行く。一回り以上も年齢差がある二人が、互いの浮気を承知で付合い始め、果てしなくだらしなくなっていく。

三浦大輔は「愛の渦」に続いて2本目の観劇。やっぱりセックス場面が出てくるんですが、それは別にどうでもよい。煮えきらない場面がひたすら続き、それがねっとりと劇場を覆ってなんとも重苦しくなるという不思議な芝居。青年団なら2本分、チェルフィッチュなら3本分の3時間20分でしたが、力作でした。

シアターガイドなんかに書いてある通り、人間のダメな部分を完結させないで描くという試みは成功しています。なんていう固い説明より、あのヒモっぷりの描き方に興味津々。いや、知人にヒモがいなかっもんで、ああいうぐだぐだな生活とか、お金をせびりもしないでもらえるとか、「明日から本気出す」とか、そこらへんの実際がわからないんですが、すばらしい。私には務まらない。あれだけヒモができるなら大抵のことはできるだろうに、やらないところがダメ人間のダメ人間たるところで、全体に卑屈な田中圭がよい。それを受けてずるずるとはまる人妻は秋山菜津子。もっとがつがつした人物描写かと思ったら、卑屈にプライドが絡まったやっぱりダメ人間、だけどいろいろな台詞や仕草がいちいちセクシー。すばらしい。この2人が絡んで、後ろめたさとか背徳感でなく、ダメさを強調しているのがいいところ。

そんな中でやっぱり松尾スズキは特異な役で、ダメ人間には変わりないけど全体になんか狂った雰囲気が漂っている。説教する場面の穏やかな言葉遣いと一緒に出している殺気が怖い。役者松尾スズキはもっと色んなところに出演してもいいと思う。

他の登場人物もそれぞれにダメ人間で、これを脚本演出した三浦大輔は、よほどいろんなダメ人間を知っているんだろうなと推測。後半に出てくる「授業の楽な 先生」とか「顔だけだったら」というのは秀逸な台詞。スタッフワークも抜かりなく、目まぐるしい転換がお疲れな美術もよかったけど、特に衣装がよい。

でも、普通は休憩時間とか終演後のロビーはもっと賑やかなものだけど、全体に静かだったのが普段のパルコ劇場とは違ったな。1人で観に来た人が多かったのか、みんないろいろ自分のことを思い返していたのか。役者の格好よさとか筋書きの面白さについて語り合う芝居ではないのは確かで、これを「あるある」と話されても困るけど(笑)、いつもと客層が違う気がした。若い人が多かった。後ろは空席が残っていたので、ダメ人間に興味がある人は、当日券で挑戦してみては如何でしょうか。2階建ての美術の2階部分もそれなりに使うので、後ろのほうが見やすい場合もあります。

でも3時間20分はなあ。最近の芝居は「長いけど長さを感じさせない」面白さと「情報を圧縮して短い実時間で長い時間を体験させる」面白さの2種類があって、今回の芝居は前者なんだけど、いろいろな都合を考えるとやっぱり後者の芝居のほうが好ましい。そこは脚本演出の課題として挙げておく。

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2010年5月 9日 (日)

チェルフィッチュ「ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶」ラフォーレミュージアム原宿

<2010年5月8日(金)夜>

契約を切られた派遣社員の送別会を、別の派遣社員たちが幹事となって企画する「ホットペッパー」。その会社の正社員が仕事やオフィス環境についてかみ合わない会話を「クーラー」。そして契約を切られた派遣社員が最後の勤務日に皆の前で「別れの挨拶」。

すごい久しぶりのチェルフィッチュはダンスとか言われていてびっくりした。ドイツの劇場と共同製作したらしいです。外国人が撮影をしていたのもその絡みかな? せりふの繰返しを多用したり、音楽にあわせたり(完全にはあわせていないあたりがまたチェルフィッチュっぽい)していたけど、やっていることはそんなに変わらない。

派遣社員の切迫感と正社員の能天気さを対比させてそれなりに真剣な話を、あの動きと会話による方法で感情的な面を取除くと、かえって深刻さが浮き出しになる。けど、繰返しがきつくて退屈する場面もあって、もともとチェルフィッチュに熱心でない自分には、もうちょっとストーリーがないと観ていてつらかった。

3本を組合せたオムニバスなんだけど、3人、2人、1人と演者の数は減っていて、最後の1本は(細かい演技をほかの人がしていたとはいえ)ほとんど独りで演じきったのはお見事。観ている分には脱力演技なんですけど、終わったらマイクを通じて荒い呼吸が聞こえるので、負荷は相当のものなんでしょう(しかもハイヒールだし)。すっきりした舞台にはっきりした照明も格好良かったです。ただマイクトラブルが残念。

文句としては、配役表を当日パンフに載せておいてほしかった。正社員の男性と、辞める派遣社員の女性がよかったんですけど、誰だかわからん。知っている人教えてください。それと狙っているのか、会場のクーラーが上演中もきいていて、それに直撃する席に座ってしまって寒かった。70分の直撃は寒いです勘弁してください。

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2010年5月 3日 (月)

劇団四季の美術倉庫と稽古の取材記事

見かけたので載せておきます。GIGAZINEの記事です。

・広大な敷地にそびえ立つ倉庫群、劇団四季を影で支える「四季演劇資料センター」に潜入してきました(前編後編
劇団四季のバレエと発声のレッスンをじっくり見学、舞台俳優の基礎はここから生まれる

最後の記事は、写真に載っている役者のポーズが美しいですね。鍛えられた身体はうらやましい限りです。

<2010年5月5日追記>

稽古場見学レポート(前編後編)もあったので追加。

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青年団「革命日記」こまばアゴラ劇場

<2010年5月2日(日)夜>

表向きは政治思想を持って弱者救済活動を行なう団体。裏では本当のテロを計画する「革命」集団。テロ計画の最終打合せのために活動家の家に集まった構成員たちだが、様々な来訪者のためになかなか打合せができない。

まったく見落としていた青年団の芝居をなぜか初日に観るという不思議はさておき、もともと外部に書いた脚本の再演とのこと。大げさなタイトルにふさわしい設定に、似つかわしくない設定と会話(笑)が混ざって、青年団には珍しい怒鳴りあいの場面もあり、「なんとも切ない90分(当日パンフ)」を通り過ぎて、虚しくなりました。

革命を宗教や芸術に置換えてもいいと、これも当日パンフに書かれていましたけど、私は仕事に置換えました。先を考えない計画、議論のすり替え、日常の犠牲、普段とかけ離れて実体を失った言葉遣い。個人が自由意志で集団に参加するはずが、集団が個人の自由意志を無視した上に成立って、その集団の目的を絶対的な善とするごく少数の個人の意見に構成員が振回されるという点では革命も町内会も同じ。集団のあり方という言い方をされていましたが、もっとネタばれっぽく言えば、個人に無理を強いる集団はやがて歪むということ。それを描いて見事すぎるのですが、なんなんでしょうね観終わったあとのこの絶望感。

こんな魅力的な女性陣ばっかりの団体だったら入っちゃうぞーとか最初気楽に思っていたんですけど、近藤強の歪ませた口元を見ながら台詞を聞いていたら殴りたくなってきた。笑えるはずの場面でも笑えない。芝居を観てそんな風に考えることはあんまりないんですけど、ちょっと仕事に忙殺されて神経まいっていたのかな。

客席には小さい子供もいましたが、こんなシニカルな芝居を楽しむにはまだ早いぞ、とか考えたあたりがもうおっさんの証拠ですね。しかしシニカルになってしまった大人にはぜひお勧めしたい。そんな95分。

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Dart's「In The PLAYROOM」Gallery LE DECO 4

<2010年5月1日(土)夜>

リアルな描写と残酷な表現で人気を誇るミステリー小説「ザ・プレイヤー」シリーズ。その最新刊には「次の作品の登場人物になりませんか」という応募用紙が挟まれていた。応募して選ばれたのはいずれも熱心なファン。集合は渋谷駅に近い廃墟ビル。訝る彼ら彼女らの前に現れた作家と編集者は、犯人に追われる立場の登場人物となって逃げきってほしいという依頼をする。ファンが行動を伝え、作家が状況を説明するシミュレーションとして始まったはずの会話が・・・。

なんで芝居を観ていないのにこんなマイナー(失礼)な芝居を見つけたかというとCoRich手塚Blogを読んで気になったから。そこのリンクを辿ってサイトをみたら、未完成のところばかりだけど、その格好よさとチラシ画像とシナリオ説明で、これは観ても損はないという判断に。結果、正しかったです。絶賛とは言いませんが、スリリングな100分を存分に楽しみました。

冒頭に書いたあらすじ、結構説明が面倒なんですけど、芝居ではとても上手かつ格好いい導入部で、すんなり入りこませてくれます。その後の展開は、荒唐無稽といえばその通りなんですが、演技の達者な役者たちがそれを納得させてくれるので、思う存分引きこまれて、スリリングな時間が始まります。探せば名手はいるものだ。そんな役者をまとめて、鬼ごっこをこれだけのドラマに仕立てた脚本演出はすごいです。会場が狭い場所に雑といえば雑な座席を組んでいるのですが、それも設定の一部になっています(劇中の集合場所が今回の会場を想像させる設定)。

反面、オチがきれいに付きすぎてそれまでの緊迫感が若干萎んでしまった、参考のために配られた地図があまり参考にならなかった、会場から出られない場面の演出(設定)が不自然、名手と書いたけどひとりだけ名手でない役者がいた、などのもったいない面もあります。が、それらを差引いても、面白かったことには変わりない。久しぶりに小劇場のよさを堪能しました。

今回は会場の狭さが緊迫感を増していた面もありますが、この脚本は舞台がもう少し大きくてもやりようがあると思うので、新作を3本くらいやってから(ユニットなのでそれがどのくらいかかるかわかりませんけど)、また再演してほしいです。囲み舞台の似合う芝居なので、シアタートラムとか青山円形劇場とかでできるといいですね。

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本谷有希子の次の公演

最近芝居を観ていなくて気づいていなかったけど、今度の公演、なんかキャスティングからしてどうだこの肉食派実力派揃い、って感じですね。欠かさず出演していた吉本菜穂子も今回は出演せず。スタッフを確認すると照明に小川幾雄とか書かれている。次の次元に突入したんだな。

それでチケットの値段を見たら6000円で、一気に阿佐ヶ谷スパイダースを抜いていた。公演期間も1ヶ月(4週間)のロングラン。ついに本格的な劇団(公演ごとに黒字にする)の体制にするつもりなんですね。中野の劇場で初めて観たときからここまで来たことを考えてしみじみするとともに、その間の我が身の成長の至らなさを省みて考えさせられたり。

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