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2010年5月10日 (月)

パルコ企画製作「裏切りの街」PARCO劇場(若干ネタばれあり)

<2010年5月9日(日)昼>

フリーターだがバイトもさぼって同棲する彼女のヒモになっている男が、テレクラでつかまった人妻に会いに行く。一回り以上も年齢差がある二人が、互いの浮気を承知で付合い始め、果てしなくだらしなくなっていく。

三浦大輔は「愛の渦」に続いて2本目の観劇。やっぱりセックス場面が出てくるんですが、それは別にどうでもよい。煮えきらない場面がひたすら続き、それがねっとりと劇場を覆ってなんとも重苦しくなるという不思議な芝居。青年団なら2本分、チェルフィッチュなら3本分の3時間20分でしたが、力作でした。

シアターガイドなんかに書いてある通り、人間のダメな部分を完結させないで描くという試みは成功しています。なんていう固い説明より、あのヒモっぷりの描き方に興味津々。いや、知人にヒモがいなかっもんで、ああいうぐだぐだな生活とか、お金をせびりもしないでもらえるとか、「明日から本気出す」とか、そこらへんの実際がわからないんですが、すばらしい。私には務まらない。あれだけヒモができるなら大抵のことはできるだろうに、やらないところがダメ人間のダメ人間たるところで、全体に卑屈な田中圭がよい。それを受けてずるずるとはまる人妻は秋山菜津子。もっとがつがつした人物描写かと思ったら、卑屈にプライドが絡まったやっぱりダメ人間、だけどいろいろな台詞や仕草がいちいちセクシー。すばらしい。この2人が絡んで、後ろめたさとか背徳感でなく、ダメさを強調しているのがいいところ。

そんな中でやっぱり松尾スズキは特異な役で、ダメ人間には変わりないけど全体になんか狂った雰囲気が漂っている。説教する場面の穏やかな言葉遣いと一緒に出している殺気が怖い。役者松尾スズキはもっと色んなところに出演してもいいと思う。

他の登場人物もそれぞれにダメ人間で、これを脚本演出した三浦大輔は、よほどいろんなダメ人間を知っているんだろうなと推測。後半に出てくる「授業の楽な 先生」とか「顔だけだったら」というのは秀逸な台詞。スタッフワークも抜かりなく、目まぐるしい転換がお疲れな美術もよかったけど、特に衣装がよい。

でも、普通は休憩時間とか終演後のロビーはもっと賑やかなものだけど、全体に静かだったのが普段のパルコ劇場とは違ったな。1人で観に来た人が多かったのか、みんないろいろ自分のことを思い返していたのか。役者の格好よさとか筋書きの面白さについて語り合う芝居ではないのは確かで、これを「あるある」と話されても困るけど(笑)、いつもと客層が違う気がした。若い人が多かった。後ろは空席が残っていたので、ダメ人間に興味がある人は、当日券で挑戦してみては如何でしょうか。2階建ての美術の2階部分もそれなりに使うので、後ろのほうが見やすい場合もあります。

でも3時間20分はなあ。最近の芝居は「長いけど長さを感じさせない」面白さと「情報を圧縮して短い実時間で長い時間を体験させる」面白さの2種類があって、今回の芝居は前者なんだけど、いろいろな都合を考えるとやっぱり後者の芝居のほうが好ましい。そこは脚本演出の課題として挙げておく。

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