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2010年9月26日 (日)

青年団「砂と兵隊」こまばアゴラ劇場

<2010年9月25日(土)夜>

どこかの砂漠。行軍する軍隊の小隊、軍人の夫に会いに来た妻、新婚旅行中の夫婦、失踪した母を捜す家族。いろいろと場違いな彼ら彼女らの邂逅って言っていいのか悪いのかよくわからない出会いと会話。

自分が平田オリザを実際に観る前に抱いていたイメージはこんなだったよなーというくらいど真ん中で教科書に載せたくなるような不条理劇。ここんところの物語路線とはまったく違います。

砂を一面に敷詰めた舞台で、お前その格好で砂漠は死ぬだろという登場人物がそれぞれ真剣な、そして場違いな会話をする。それぞれの会話や個々の登場人物の造詣は惹かれるところ多数で、特にひらたよーこ演じる兵隊の歌から、後で出てくる福士史麻に絡まれて別れるまでの場面のやり取りには結構好きだったんですけど、結局のところ不条理劇なので消化不良。不条理劇は苦手なもので。でもフランス人ってこういうの好きそうですよね、と勝手な先入観で思います。

砂の舞台だから気を使って、飴とマスクをもらえる心配りはうれしいところ。ただ、質の高さは保証できても、芝居素人には勧められるものではない。そんな臭いをかぎつけたかどうか、客席も空きが目立った。で、自分で素人には勧められないって書いておいてなんだけど、東京の観客だったらこの芝居も満員にしてみろって学生時代に頭でっかちに芝居を考えていた自分は思う。

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2010年9月25日 (土)

TBS・サンライズプロモーション東京主催・制作「志の輔らくご in ACT」赤坂ACTシアター

<2010年9月24日(金)夜>

大工が物知りの隠居に質問した回答を信じた男が「バールのようなもの」、罪人を護送する船の監視役が聞いた罪の話「高瀬舟」、引越したばかりの豆腐屋が近所の貧乏学者に差入れを続けていたら「徂徠豆腐」。

都合がつくのに観たいものがない、と思って探したら見つけてしまった志の輔らくご。芝居に比べたらぐっとお得な値段も、この会場の大きさで成立するのかとおっかなびっくり聴いてみたら、これが成立したので驚いた。自分でも調整は難しいと言っていた時間は、本日は休憩20分を挟んで2時間35分。

1本目は実に気楽に笑い飛ばせる話。2本目は森鴎外の有名な話ですけど、「語り下ろし」って言っていたかな? 枕なしの勝負で、そういうのも落語にあるんだとびっくり。罪人護送の話ってタイミング的にぴったりすぎて、狙ったわけじゃないですよって後で断っていた。3本目も一応人情話なのかな。3本目は一部台詞が怪しかったけど、特にそれで壊れるわけでもなく、すべて楽しめる水準の仕上がりでした。上手な落語は、聴いていて面白いというか、楽しい。

ただ、変な事件がたくさんある世の中だからってのもあるんですけど、枕がちょっと好戦的な感じで、あまり噺家に煽ってほしくないなと願っているんですが、かといって自重するほどのものでもなく、んー笑わせてくれるだけに微妙。

以下雑感。
・この劇場は何かやらないといけない気がする、って言っていましたけど、きっと劇場が立派過ぎるんでしょう。良くも悪くも。
・1階の最後列でも、距離は遠くても顔の高さが合っていたせいか結構いけました。ただこれが2階の最後列でどう見えたかはわからない。声は当然マイクで拾っているので聴こえないことはないですけど、斜め45度から見下ろすと多少印象が変わるかも。
・これ以上大きい会場ではやらないだろうとおもったら、東京国際フォーラムのホールCでの独演会が11月にあった。もう、武道館とか東京ドームまでいかないと大会場への挑戦が収まらんのではないか。
・場所と時間と値段といろいろ条件が重なったけど、背広のサラリーマンが多かったのは、芝居ではなかなか見られない客層。年齢高めだった気がするけど、それでも男女バランスはよかったです。

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2010年9月20日 (月)

ナイロン100℃ Side Session「亀の気配」サンモールスタジオ

<2010年9月19日(日)夜>

工場勤務の父親が機械に巻きこまれて大怪我をしたため、東京から実家に戻ってきた次女。心機一転を目指して一緒についてきたそのボーイフレンド。次女は近所の付合いで、ボーイフレンドは父親の働いていた工場のバイトで、あれこれ出てくる秘密の数々。

ほぼ若手公演で休憩なしの2時間20分。役者はみんな上手いしこれからまだまだ上達する気配を感じさせてくれる。全体で見ると男性陣より女性陣のほうが一枚上手に感じられるのは、KERAの眼力なんでしょうか。抑えた中にテンションを感じる女性陣に対して、テンションを表に出しても中で抑えちゃった男性陣という印象です。特に悪役2人。ちなみに、後でサイトを確認するまで菊池明香を植木夏十と間違えていましたすいません。

で、脚本演出ですが、もともと2本立てで用意した脚本を1本にまとめていて、十分な完成度。ただ、今回の話の起点となる父親の話がほとんど出てこなくて、お前らなんで地元に来たんだと突っ込みたくなるところは何とかしてほしかった。元の脚本にはあったのかな。あと、完成度が高いのはいいですけど、高くて発展の余地があまりなさそうなのが気になった。せっかくなので脚本演出にも将来を嘱望したくなるなにかを感じさせてほしかった。芝居がKERAっぽいのは、KERAが手伝ったから当然なんですが、当日パンフのメッセージまでKERAに似ているのは気になる。やっぱり藍より出でて藍より青くなってほしいので、もっとがんばれとあえて低めの評価にしておく。

昔を振返る場面とか、いろいろ面白い場面もあって全体に満足できたんですが、疲れてこれ以上書けないので失礼。あと1ステージだけど、当日券を狙う人は枚数が少ないので早めに並んでください。

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テアトル・エコー「日本人のへそ」恵比寿エコー劇場

<2010年9月19日(日)昼>

吃音症の患者だけを集めて、自分の吃音症の原因を物語に仕立ててミュージカルとして発表することで、吃音症を治療するという、アメリカで考案された治療法。それを本場で学んできた教授による第1回の発表会は、ストリッパーだったヘレン天津の回。岩手出身の彼女が集団就職で東京に出る前の晩から話は始まる。

テアトル・エコーはこれで3回目ですが、井上ひさしのデビューがテアトル・エコーだったとは今回の公演まで知りませんでした。その処女作の上演。作曲はずいぶんタイムリーな人が担当していたのだから、豪華なもんです。すごい軽口に仕上げた2時間40分の喜劇。

上演は、たぶん初演のときもこんな調子だったんだろうという、今となってはずいぶん素直な感じ。それを役者はきっちり上演したから何も言わない。でも、この素直な演出なのに、全体に脚本の禍々しさが浮かび上がっていました。

40年前だからなのか40年前ですらなのかわかりませんが、いまどきの脚本家には書けない毒に満ちています。ところが話の構成や展開はしっかりしていて、細かい設定や言葉遣いも詰められており、結果として荒々しさをうまく残しつつ、今上演しても面白い、古くならない脚本になっています。これに比べたら東京裁判三部作なんてつまらないもんで、自分が観た範囲では、これに対抗する出来の脚本は「天保十二年のシェイクスピア」くらいかな。でもあんなきっちりではない。率直にいって、これを書いたときの脚本家は気狂いすれすれの欲求不満だったと思います。DVで名をはせた井上ひさしのイメージと脚本がようやくつながったのと、それでいて何であんなに崇められていたのかがようやくわかった。それが一番の収穫。

これは当時の舞台設定を知る伊東四朗にもう少し巧く演出してもらうか、松尾スズキにもっとケバく演出してもらうかしてもう一度観てみたいと思ったら、来年の3月にシアターコクーンで栗山民也演出+豪華キャストで上演するという折込チラシを発見。今回観られない人はそちらで取返してください。でも栗山民也かなぁ。もっと暴力とかセックスを感じさせる人が演出するべきだと思うんだけど。

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2010年9月17日 (金)

3連休に悩む

土日は多少は芝居を観に行こうかと思うのだけど
・さいたまゴールドシアター
・青年団
・テアトル・エコー
とことごとく昼のみ。夜もやっているのを探すと
・野田地図:でもこれ、他の芝居を観てから出かけても当日券が買える気がしない、勘三郎の現代劇もどうなんだろう
・サンプル:夜もやっているのは土曜日だけ
・ナイロン100℃若手公演:夜は土日でやっているけど、微妙に遠いサンモールで18時開演
てなわけで、俺はどうすればいいんだ。あー、シアターコクーンも土曜日は夜にやっているな。

もう少し組合せの自由がほしい。さいたまが遠すぎる。

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2010年9月 6日 (月)

サンライズプロモーション東京製作「イリアス」ル・テアトル銀座

<2010年9月5日(日)昼>

古代ギリシャがトロイアの国と10年戦争を戦っていた末期。ギリシャ軍随一の勇将アキレウスは、総大将アガメムノンとの確執が原因で戦線を放棄する。その間にトロイアに総攻撃を仕掛けたギリシャ軍だが、トロイアの王子ヘクトルの活躍の前に、逆に攻め込まれ、追込まれる。

ギリシャ悲劇(正確には詩に分類されるらしい)は粗筋を書くとそれだけで全紹介になってしまうのが悩ましい。有名な話なので知りたい人はWikipediaをどうぞ。自分は一度くらい観ておきたいという好奇心と、抜群の役者陣に惹かれて観劇。面白くてためになったし生演奏もよかったけど、時間と値段には見合わなかったな。

内野聖陽のアキレウスがすげー見栄えがよくて格好よかった。一度通路を通るときに間近で観たけど、迫力あります。池内博之のヘクトルと合わせて、絵になってます。でも、木場勝己とか平幹二朗にももっと暴れてほしかったし、馬渕英俚可と新妻聖子ももっと観たかった。終わってみればたったこれだけの人数であれだけ壮大な芝居を仕上げたのかと思うけど、そのなかでもさらに出番に差がつくからギリシャ悲劇で豪華すぎるキャスティングはもったいないのかも。

あと、劇場が悪い。これがシアターコクーンだったら、たぶんもっと好意的な感想になったと思う。ル・テアトル銀座は客席最後列までが遠すぎるし、歴史物の芝居に向いていない。経済事情とかいろいろあると思うけど、芝居に対する劇場の向き不向きには関係者はもっと敏感になってほしい。

シアターコクーンにするか、ル・テアトル銀座のままで8000円くらいだとよかったんだけどな。でも有名なギリシャ悲劇を観られて気分は豊かになったのでよしとする。

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2010年9月 5日 (日)

パルコ企画製作「ハーパー・リーガン」PARCO劇場

<2010年9月4日(土)夜>

夫は失業中、娘は高校生で、一人で家計を支えるハーパー・リーガン。父親が危篤との連絡を受けて勤務先に休暇願を出すが、繁忙期のため家庭の事情で足元を見られて、拒否される。思うところがあって、家族や職場にも内緒で実家に戻るハーパーが経験する様々な人たちとの出来事。

長塚圭史の久しぶりの翻訳劇演出、つい初日に観てしまいました。感想を端的に言えば、今の自分には観られてよかった、でも人には勧めるのをためらう、役者と、たまにやりすぎを感じるけど脚本のストレートさには好感、演出もっとがんばれ、って感じです。

小林聡美が、それぞれの場面でそれぞれの登場人物とひたすら対話する、直球ど真ん中の会話劇。血とか暴力は、昔の長塚圭史と比べるとほとんどありません。まあそれは予想通りだからいい。で、登場人物の話が、微妙な話題のときでも、というか、微妙な話題のときほど、すごい会話が明晰。このあたりが良くも悪くも、いかにも英語圏の脚本だなと思う。まったく余韻がないんだけど、こなれた翻訳と達者な役者で味わいが深まるのはいいです。ただ、喧嘩別れしたとはいえ、親の危篤の日以降ののハーパーの行動のぶっ飛び方は、芝居とはいえ、あれはイギリスならありうる展開なんでしょうか。正直どうなんだと思っているうちにハーパーがどんどん格好良くなっていくんで、だんだん気にならなくなるんですけど。

自分の人生に理不尽や疑問を感じたことがある人なら、どこかの場面が必ず心にひっかかるでしょう。そういう脚本です。それで自分は観られてよかったと感じたんですけど、ほかの人の感想、特に30歳から50歳くらいの女性の感想を聞いてみたい。

で、場面転換以外冗談抜きで出ずっぱりのハーパー小林聡美の演技が、なんていえばいいんでしょう、説得力が高いというか存在感が強いというか。失礼ながら決して美人な女優ではないんですけど、すごい凛々しくてきれいに見えて、さすが人気女優は違うと思いました。衣装の着こなしもよかったですね。ほかの役者も実力に異論はないんですけど、若者の多感な感情を表現した2役の美波と、とても馴染んだ雰囲気だった福田転球は、個人的にはかなり好感度が上がりました。

なんですが、芝居全体で観ると、もっさりしたテンポであることは否めず。厚みを出そうとして逆に緩急をつけ損ねた印象。あと、上で小林聡美の演技力を絶賛していますが、その説得力があだになった面もあり。ハーパーは行動や台詞にぶっ飛んだところがありますし、確実なのは確実なんてないことという台詞に象徴されるように、揺れ動いた結果として格好良くなるのがたぶん脚本の狙いだと思うけど、ハーパーが何をやっても正しくて必然で常識を体言しているようになっていた。そこは演出で調整してほしかったし、もし狙ってそうしたんだとしたら、稚拙じゃないかと思う。あと、コンクリートにはもう少し意味を持たせてほしかった。

これからよくなる余地も見て取れたので、血とか暴力とか目当ての人には勧めないけど、人生悩める人で、役者か脚本に興味を持った人にはいいんじゃないでしょうか。

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