こまつ座「水の手紙/少年口伝隊一九四五」紀伊国屋サザンシアター
<2010年11月13日(土)夜>
水に困る世界各国の実情を手紙として紹介する「水の手紙」 / ゲストによる井上ひさしへの手紙の朗読「井上ひさしさんへ」 / 広島に原爆が落とされた後、宿と食事と引換えに、印刷できない新聞を口頭で伝え歩く仕事をまかされた少年3人「少年口伝隊一九四五」
ひと言でいうと「はずれ、さすが、当たり」の3本。
「水の手紙」は、内容が政治的なのも、全体に「生命体の中で人間が一番偉い」という思想が見え隠れするのも嫌。温暖化のテーマも今となっては、とも思う。で、脚本はさておき、朗読が下手(たくさん動いていたから朗読というよりは演技といったほうが正確)。同時にしゃべったり、歌ったりは上手だけど、「群読のために」と銘打っているならもう少し聞かせてほしかった。チャドの母ちゃんとコロラドのおっちゃん、あとぎりぎりヴェネツィアの学生の計3人くらいしか及第点はやれん(チャドの母ちゃん役をやった人の名前がわからんので誰か名前を教えてください)。
そのくらいがっかりしたので「少年口伝隊一九四五」は期待しなかったんだけど、逆に相当の迫力でやってくれたのでびっくりした。脚本もすごいけど、読む側も負けていない。しっかり芝居が立上がった。朗読物は今後あまり一般上演されないと思うので、多少でも興味のある人は一度聞いておいたほうがいいです。たしか12人だったと思うけど、役者は全員「水の手紙」に出ていたのか? だとしたら、なんで「水の手紙」があんなにへなちょこだったのかがわからない。配役表を配らないこまつ座だったのが惜しまれる。
加えるとどちらもソロの生演奏(ヴィオラとギター)で、よい演奏でした。弦楽器に弱いんだ自分は。
で、「少年口伝隊一九四五」で役者を見直したんだが、それでも白石加代子の朗読にはかなわない。どこがどういいのかを言語化するだけの知識はないし、大ベテランと比べるのは酷とはいえ、聴いていてはっきりわかってしまうんだなこれが。多少つっかえたってご愛嬌です。こういう趣向なら木場勝己と大竹しのぶの回も聴きたかったがスケジュールが無理。
うろ覚えですけどメモ代わりに。
・最初の縁は「天保十二年のシェイクスピア」だけど、そのときは他の出演者がスターばかりなので静かにしていてあまり話していない。
・身毒丸もグリークスもやったからまだまだラブシーン大丈夫です、と「ムサシ」初演の記者会見で言って会場爆笑(笑)、それを聞いていた井上ひさしの反応は「ほう」(笑)。
・初演の稽古では毎日数ページずつ脚本が届く。そんな状況を楽しめるカンパニーだったのがよかった。台詞が少しずつ届く稽古もたまにはいいもんだと吉田鋼太郎「ちゃん」は言っていた(笑)。それで油断していたらラストシーンで自分に大量の台詞が割振られた。台詞覚えが悪いのに(笑)。
・「ムサシ」再演は初日から脚本があったのでたっぷり稽古できた(笑)。
・(再演は海外公演も行なって)ロンドンで通じるか、初日は心配していたが、杞憂だった。
・さらにニューヨーク公演。9・11があったあの都市で、怨みの連鎖はやめるべきという主題が誤解されないか心配したが、絶賛された。その興奮した観客の様子を井上ひさしに見てもらえないのが残念だった。取材に来ていた記者も同じ事を悔しがってくれた。
・井上ひさしが駆抜けた最後に、少しだけしがみつかせてもらった自分です。
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