演劇集団キャラメルボックス「サンタクロースが歌ってくれた」サンシャイン劇場
<2010年12月23日(木)昼>
クリスマスイブの夜に予定のないゆきみは、同じく予定のない女友達のすずこと芥川龍之介をモデルにしたミステリー映画を観る約束をする。到着が遅れるすずこを待つために先に映画館を観始めるが、映画の進行が途中でおかしくなる。劇中の犯人役がスクリーン外に逃亡したらしい。映画の継続のために連戻そうと、ゆきみが戸惑っている目の前で主人公たちがスクリーンから飛出してきて、ゆきみに協力を求める。一方、遅れて着いたすずこは、映画館から出てきた犯人役の人物から協力を求められる。
他の芝居と迷って、キャラメルボックス見納めで選んだ本作。キャラメルボックス芝居が嫌いになった私でもちょっとぐっと来てしまった。見納めにふさわしい仕上がりだった。
キャラメルボックスの芝居は劇団名通り甘ったるいものが多く、それはこの芝居も例外ではない。けど、映画中の人物とそれを演じた役者、映画設定の時代(大正時代)しかしらない人物とその将来を知っている現代の協力者、劇中の映画の上演時間(制限時間)と実際の芝居の上演時間との一致(時計の進め方についてはご愛嬌ですが)、そして映画を継続しようと奮闘する登場人物と実際の劇団、などの対比構造が上手にはまった脚本は、さすが代表作。演出家を変えれば他でも通用しそう。というか、他の演出家ならもう一度観てみたい。
そして、今がぎりぎり見納めじゃないかという初期メンバー中心でのキャスティング(若い役が多いから)。劇中でも役者の実年齢と役の年齢とのギャップが何度もネタになっていた。ただ、さすがベテランと言うか、甘ったるいなりに甘さの加減を心得ていて、それ以上は崩さない感じに好感。西川浩幸、上川隆也、近江谷太朗というトリオはたぶんもう観られないんじゃないかという予感。こういっちゃなんだけど、ピンで観ると何てことない人たちばかりなのに、3人揃うと何かバランスがとれる。最初のキャラメルボックスは「さよならノーチラス号」の初演で、このトリオを観られたんだから、めぐり合わせというのは確かにある。ついでに言えば、観た席も初演に近い席(座布団の通路席)だったのを今思い出した。
後半の、映画中の登場人物が役者・上川隆也と問答する場面や、最後の映画館での場面なんかは、あちこちですすり泣きが聞こえていて、実際自分も危なかった。キャラメルボックス名物の劇中ダンスも、今となっては劇中ダンスなんてやっている劇団を見つけるほうが難しいのですが、この芝居では「映画の宣伝広告」という形で処理されていて、違和感が少ないのもいいです。
満員御礼確実なのに、サンタクロース絡みの芝居だからなのか、26日が日曜日なのに25日の土曜日昼で千秋楽という贅沢スケジュールを組んだのは思い入れの故でしょう。まあこの仕上がりなら許す。ちなみに千秋楽は当日券がパンクしそうなので、となりのホールでの映像生中継も決まったそうです(ひょっとしたら近江谷太朗が上演中にそっちに行くかも?)。それでも構わない人は25日を狙ってみてはいかがでしょうか。
それにしても久しぶりのキャラメルボックスは当日券に驚いた。
・当日券待ちのために椅子を用意している(途中で足りなくなりましたけど)。そして販売開始と同時に回収する手際のよさ。
・販売前の販売方法説明で、販売する客席を、座席表を見せながら飛行機の離陸前のように説明。
・当日券は1時間前販売と思いきや、行列が伸びたからか、10分早めて販売。
そしてなんというか、販売する側の手際のよさは褒めるところなんですが、客の行儀のよさにもびっくりした。悪い意味で。なんて言えばいいんだろう。劇団が当日券の販売について長年努力してきたことはいいんだけど、それに唯々諾々と従うような人たちだけがファンとして残って進化したガラパゴス島というか。上にも書いた役者の実年齢と役の年齢とのギャップネタも、よくよく考えれば役者と役の年齢は一致している必要はないわけで(そんな芝居は無数にある)、劇団に馴染がない人からすれば「え、それは笑うところなの?」というネタのはずなのにドッカーンと笑いが取れるというのは、私にしてみれば不健全。まあ劇団の寿命がどこまで続くかは神のみぞ知るということで。
ただ、一番驚いたのは、帰りのロビーで見かけた、かつて前説をやっていたあの人の老けっぷり(失礼)。時間の流れを一番感じたのはここでした。ええ。
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