柿喰う客「愉快犯」東京芸術劇場小ホール2
<2011年1月9日(日)昼>
戦国時代まで遡れる名家・琴吹家。とことん運がいいのと、ありあまる財産とのおかげで、何一つ不自由のない生活を送ってきたが、代わりにストレスに極度に弱いという体質を抱えている。そんな一家だったが、クリスマスイブの夜に長女がなくなってしまう。そこから始まる家族の迷走。
新年早々目当ての芝居で当日券が蹴られて、夜に観る予定だったこの公演を昼に繰上げ。以前から評判がよかったのとチラシの手間の掛けかたに期待していたら、最初よくわからなく、そのうちこういうもんかとわかった。面白かったけど、それ以上になんかエネルギーをもらったような満足感。
登場人物が不自然なほどおおげさに話したり動いたり繰返したりするのはこの劇団の特徴ってことであっていますでしょうか。それだけかと思いきや、後で考えると脚本は案外しっかりしているし、役者もよく動き、よく話す。あのくらい大げさにやると返って納得するよねっていう水準以上に大げさにやる、というと簡単だけど、それを上演中キープするのはすごいですよ。芸劇eyesにスカウトされるだけのことはある。
役者もみんな、声は大きいし背は高いし、ビジュアル面でもキャラを立てて、こういう元気のよさは新鮮だ。新春公演ということで口上なんかも仕込まれて、なんか得した気分です。
あと何がよかったかって、上演時間1時間20分というのがよい。実際にはほぼ毎回アフタートークをやっているらしく、そこまでいれると2時間だったけど、ひたすら上演時間が延びる最近の芝居の中で、このコンパクトさは売りになる。観られるものなら次回公演も観たいぞ。
アフタートークのメモ。いつものことだが細かいことは気にするな。今回は中屋敷法仁と深谷由梨香。この人(深谷由梨香)だけ劇団員中ぶっちぎりでトークが下手らしくて、実際下手で、役者でもここまでトーク下手な人がいるのかとこっちがびっくりした。
中屋敷「自分で狙いがあってスカウトしておいてなんだが、何で劇団にいてくれるのか」
深谷「自分は芝居を観るのはあまり好きではない。でも柿喰う客でやるのは楽しい」
観客「柿喰う客という劇団名はどうやって決めたのか」
中屋敷「いろいろな命名の法則を考えている大学の先生に決めてもらった。老若男女の誰が口にしても恥ずかしくないのはいい。知合いにXXXX(伏せときます)という劇団があるが、結婚式で言われたら恥ずかしい」
「あと、早口言葉をちゃんと練習しているように(いい方向に)誤解されるのも特」
観客「繰返しが多いがどこまで脚本でどこまでアドリブか」
中屋敷「脚本にすごい細かく書いている。自分の芝居は音楽みたいなもの。繰返しを入れることで、お客さんが安心して観られる効果がある。自分は繰返しのない音楽は聴いていて不安になる」
中屋敷「自分の芝居は観客にいかにフィクションであることに納得してもらった上で入り込んでもらうかが鍵。舞台上で濃い内部空間を作るのもありだけど、自分は常に開く方向にありたい。『観客に観られていること』に対して何をどうやって返すかが大事」
中屋敷「テンパって回りが見えていない役者には怒る。『自分の役は考えるな、相手の役のことを考えろ』という。そうなることを防ぐ意味もこめて、毎公演とも役者を入替えるシャッフル回を実施する(今回は13日夜)」
観客「セットが目立ったがどうやってこのセットになったのか」
中屋敷「柿喰う客のセットは、何もないか、すごい動きづらいか、どちらかであることが多い。美術の打合せでは芝居の内容はまったく打合せず、イメージとかやりたい動きとかを伝えて、形にしてもらう。今回は新春らしく扇とか、派手な色とかを希望として伝えたらこうなった」
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