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2011年8月21日 (日)

DULL-COLORED POP「Caesiumberry Jam」シアターグリーンBox in Box

<2011年8月21日(日)昼>

2010年の都内。カメラマンの男の仕事場に、以前取材で世話になった男が尋ねてくる。カメラマンが保管している、そのときの取材記録を確認するのが目的だ。取材対象は旧ソ連のとある場所、当時すでに立入禁止地域に指定されていた村、最初の取材記録は1991年から始まる。

モリー・スウィーニー」で演出家の谷賢一に興味を持ったのと、再演モノなのに4年前すでに「セシウムベリー」というタイトルをつけていたセンスに惹かれて観劇。活動休止前の劇団の芝居は観ていなくて、活動再開後のこれが劇団としては初。そしたら、大当たりを引いてしまった。これは全力で推します。

何がいいかと言われたら脚本と演出。台詞や仕草のあちこちに、比喩やその後を暗示させるなにかが含まれる。お互いのやり取りの中に人間関係の情報を細かく仕込む。なのにそこに登場人物として「猫」とか足して何とでもいじれるように準備しておくとか、いい意味でずるいですよね。

設定としてはいかにもありそう、というか本当にある話ですが、それを実話と勘違いできるレベルまで仕立てた想像力は天晴れのひと言。実際に取材に行ったはずはないので、参考資料が多数あるはずなんですけど(そしてそれは当日パンフやカラーパンフには載っていないのですけど)、盗作を疑うレベルの出来。当日パンフで「記録には限界がある。感性にだけは限界はない」と啖呵を切るだけのことはあります。それでいて原発の是非ではなく、人間模様のほうにフォーカスを当ててくれたのも、政治芝居が嫌いな自分にとってはポイントが高い。

演出の技術については、ほぼ素舞台の中に複数の場面を取入れて、というかほとんど混ぜて、それを成立させながら話を進める辺りの技術はすでにベテランの領域。あと、場面転換のユニゾンの意味づけとか、スライドの使い方とか、タイトルロールの場面とか、やることがいちいち上手すぎる。日替わりゲストを、登場時間は短いけどかなりいい役に振るあたり、余裕がありすぎてむしろ憎たらしいですね。カラーパンフが(2日目までは)プレゼントだったので読みましたが、芝居では語られていない裏設定がたくさん書いてあって、演出家だけで考えたのか、役者 と共同で考えたのかはわからないですけど、このくらいは用意して(そしてそれを理解して)演出に臨むのだな、という参考になります。

役者は、芝居が観られるレベルには達している。他の小劇場の芝居に比べたら十分いい。むしろ一部の役者はそうとう良かった。しかも音響ゼロで押し通せただけの完成度だった。でも欲を言わせてもらえば、この芝居ならさらなる限界を目指してほしい。脚本負けとまでは言わないけど、これは数年に1本の高みを目指せる可能性があるし、それに対してはまだまだ伸びしろがある。千秋楽までどれだけ攻められるか、ぜひ試してほしい。

キャスティングでひとつ感心したのは、役者の年齢にかなりの幅があったこと。特に上側で、さいたまゴールドシアターから本当に高齢の役者を呼んできたこと。同じような年齢の役者ばかりあつまるのが小劇場の弱点のひとつだけど、これは観る側のリアリティ向上にかなり寄与している。あと、美術がよかった。ほとんど素舞台といえばそれまでですけど、土は、今となってはそれだけで大きな意味を持ちますよね。

開演前に舞台上に役者がいるとか、終わるときにカーテンコールがないとか、音響ゼロとか、そういうところは青年団に似ています(青年団演出部ですし)けど、たぶん要らないものを引いたら結果として似たのかなと思います。

強いて欠点を挙げるとすれば、個人的にはカーテンコールで拍手ができるようにして重い話から現実に戻るきっかけを作るようにしてほしいことと、上演期間があと1週間しかないことくらいでしょうか。これ、世田谷パブリックシアターが拾わないと駄目ですよ。再々演、期待しています。

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