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2011年11月24日 (木)

今度は文化庁が「劇場,音楽堂等の制度的な在り方に関する中間まとめ(案)」

fringeでいきなり2本のエントリー(こちらこちら)。文化庁のPDFはこちら。fringeのエントリーの片方を書いた高崎氏と、先月のエントリーで地味にやり取りもしていて、取急ぎ読んで、取急ぎのコメント。

文化庁のPDFを読んだ第一印象は2つ。観客としての国民とか市民はどこにいるんだろう、というものと、どんだけ田中角栄思想が強いんだ、というもの。

まず観客としての国民とか市民の話し。全部で10ページのうち、たぶんこの3箇所だけ。番号を打って抜出し。

(1)音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能等の文化芸術は,人々の心の豊かさをはぐくむとともに,人々が共に生きる絆と社会基盤を形成するものであり,国民全体の社会的財産である。

(2)より多くの国民に対して,様々な文化芸術活動に触れる機会が提供され,我が国の文化芸術の水準が高まるようにしなければならない。

(3)鑑賞者を拡大させるためには,地域において音楽,舞踊,演劇,伝統芸能,大衆芸能等の文化芸術に親しむ環境を醸成するため,劇場,音楽堂等において教育普及活動を実施し,これらの文化芸術が地域社会に根付づくようにすることが求められる。

(1)は、舞台芸術は民間主導でやってきた財産であり、政治が関わった場合にろくなことになっていないというのが今の自分の認識。だから財産だとしても国が突っ込んでいいとはまだ思えない。(2)は、文字通り様々な文化芸術があるので、その中で特に舞台芸術に入れこむ理由が分からないし、今の日本の文化芸術の水準が低いとも思えない。(3)は、社会的財産と書いた(1)と矛盾する。なんか、芝居の観られない地域に芝居を観てもらって野蛮人を文明人にしてさしあげます、といったら大げさだけど、よくいっても啓蒙主義、悪く言えば上から目線を感じる。大きなお世話だろ。

それ以外は関係者をどうするこうするで、予算の取りっこにしか見えない。予算がほしいのは自分だって(会社の業務で)同じだけど、せめて元の理由をもう少しましなものにできないのか。

で、田中角栄思想。「国土の均衡ある発展」って本当に呪縛の強い魔法の言葉ですよね。PDFの隅々に、全国津々浦々で舞台芸術が同じように観られないといけないっていう思想が透けて見える。古い。個人的には反対。10年後は自治体ごとに特色を競って住民と税金を奪いあう時代。芸術に力を入れる自治体もでてくれば、教育、医療、観光、農林水産、その他いろいろに力を入れる自治体もでてくる。それで存亡が賭かっていれば、助成結果のフォローも含めて、本気になる。芸術団体も劇場も、国が成果をフォローするには小さすぎる(あるいは、国は支援元として大きすぎる)。国 - 都道府県 - 区市町村 - 住民の階層は遠い。自治体住民、その自治体、その自治体から助成を受ける団体、の直接接する三者で、階層がない三角形の間でPDCAサイクルが回るとよい。

だいたい、「国土の均衡ある発展」思想なんて、そもそもやる余裕がないでしょう。支援を劇場にするのがいいか悪いかは別として、拠点劇場が乱立したら法律が破綻すると荻野氏が書いているのは本当にその通り。法律で済めばいいけど、下手をしたら法律どころか国が破綻する。

自分の話になるけど、先週と今週で平田オリザの「『リアル』だけが生き延びる」と、米屋尚子の「演劇は仕事になるのか?」を読んだばかり。細かい感想はあらためて書くとして、多様な価値観の提示とか、アーツカウンシルでの支援団体の資格とか、そういう問題がたくさん整理されていた。支援行為が現行の法律だと引っかかるので、法律の整備が必要だとも載っていた。でもそういういろいろな問題や目的意識が今回のPDFに反映されているようには見えない。

官僚のプロレスにのるのもあり」と以前書いたこともあるけど、今回のものには乗れない。目的が違っても結論が同じならいいじゃないかというのが20世紀の日本。21世紀の日本はいかに正しく目的を設定できるかが大事。こんな目的はそもそも仕分けされたんじゃないのか。

じゃあ誰が目的を設定すべきかというと、それは支援される団体や劇場でしょう。平田オリザはそれを今まで自分でせっせとやってきた。イギリスではまず団体がそういうことをできるような教育支援から始まった。だから地域の住民がありがたがって拝見する舞台を作るために助成するくらいなら、めぼしい団体を平田オリザくらいまで鍛えるための助成予算を確保するほうがいいんじゃないか。

えーと、だから、取急ぎ何がいいたかったかというと、税金なら使い道は「国民(市民)がどんな価値を受取れるのか」を明確に説明してほしいということです。もらう側の話ばかり書かれても困ります。芝居の数が増えるだけなら業界ばらまきと同じなので別にそんな法律いりません。

追加で2つ。一つ目。資格を設けるくだりがあるけど、国の資格ビジネスにならないようにしてください。二つ目。コメント募集手段に郵送やFAXがあるけど、そんなもの真面目に募集しないで、Webに募集ページを用意して窓口一括で絞っていいです。そのほうがあとで集計するのも公開するのも楽でしょう。いまどきWebから書込みもできないやつらに発言権はない、とか煽ってみてはいかがでしょうか。

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