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2011年11月12日 (土)

文学座「岸田國士傑作短編集」紀伊国屋サザンシアター

<2011年11月11日(金)夜>

休暇を取ってわざわざ海岸の旅館に避暑にやってきた、海で泳ぐのが初めての妻と、泳ぎを教えたくてたまらない夫、しかし雨続きの天気で夫は妻に語りだす「明日は天気」。新婚旅行で夫に不満を覚えた妻がひとりで向かったのは姉夫婦の自宅だが、不満をぶちまけるうちに誰が誰に文句を言っているのかわからなくなる「驟雨」。休暇中の別荘につれてこられた女中が泥棒を働いて暇乞いを願い出ると、言い出せない理由を問詰めて夫か息子が手を出したからではないかと疑う妻が考えた計画とは「秘密の代償」。

1回くらいは観ておく気になった文学座と岸田國士。都合をつけて観にいったものの、脚本負けの厳しい結果。

内容だけ言えば、ストレートな愛の台詞がむしろ新鮮な1本目、男女の仲を論じて今でも当てはまりそうな2本目、秘密が秘密を呼んでのどんでん返しがきれいに決まる3本目と、傑作短編集のタイトルは伊達ではない。けど、台詞を言える役者がほとんどいなかった。

最近読んでいる本(そのうち感想を書く)で、岸田國士が現代演劇ならではの文体の確立に気を配っていたと読んだのだけど、そしてそれは当時の口語体に基づいたものだったと思うのだけど、21世紀の日本人にはすでに古典の領域になっていた。だから、まともに台詞が言えたのは限られた役者だけだった。具体的には塩田朋子、菅生隆之、本山可久子。若松泰弘でもぎりぎり。他の役者の、上手い下手とは別の、今話している言葉に馴染みがありませんという雰囲気全開の台詞は、学生あがりの劇団ならともかく、文学座であれはいかん。

繰返して書くけど、脚本の内容はむしろよかった。だけどあれだけ明晰な指示をしていた演出家でさえこの結果はなぜかと考えるに、全体の流れとは別に、役者個々人の台詞術っていうのはやっぱり存在するのだと改めて確認した。今回の3本が入った脚本が売っているので、これは実物にあたって、どれだけ話すのが難しいか、自分で試してみたい。

重厚な舞台にシンプルだけど上等そうな家具を配して、特に背景に描いた絵が格好いい美術と、それを引立てる照明に、時代にあった衣装など、同規模の劇場で上演される芝居と比べてもビジュアルはとてもよかった。それだけにもったいない。

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