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2011年12月18日 (日)

さいたまゴールドシアター「ルート99」彩の国さいたま芸術劇場小ホール

<2011年12月17日(土)昼>

日本国内で、外国の軍隊の駐屯基地のある島。基地の隣を、かつて基地と併せて整備された国道99号線が走る。基地の敷地内には、土地の貸借を拒否して住み続ける「巫女」の老女と、その弟子である若い姉妹が住んでいる。基地が10日間だけ外部公開されたタイミングで、軍の飛行機目当ての撮影者、本土から公演のために来た劇団、そして前日に起きた問題を相談したい地元の人たちが老女の住まいに集まる。前日に起きた問題とは、地元の名物であるまんじゅうを、国道99号線にばらまいたとして、トラックの若い運転手が逮捕されたという事件だった。

1日つぶれるのを覚悟で出かけたさいたまゴールドシアター。どう観ても沖縄が舞台なんですが、架空の国道だったり、最後まで沖縄という言葉を一度も使わなかったりした脚本の努力は尊重したい。そして面白くて楽しんだ。でもちょっとひねくれた楽しみ方です。岩松了の悪意と天才を堪能した。先週の岩松芝居よりももう少し露骨な感じがするのは脚本のせいか演出のせいか、それとも役者のせいか。

ゴールドシアターなので冒頭から登場するのは老人ばかりなのですが、もう日本人の悪い面のいろいろな特徴が台詞の端々に出ている役ばかり。オープニングから「そいつら全員(高所アクティングエリアから)突き落とせ」「そこの銃(舞台に置いてあった)をよこせ」とか心の中で突っ込みを入れながら観ていました。

この心境が変わったのが、途中でさいたまネクストシアターから参加の姉妹役が出てきてから。特に、請われていきなり劇団に参加させられたのに文句を言われて、そこから劇団のメンバーが言い合いを始めるその後ろで、ものすごい嫌そうなどうでもよさそうな白けた感じで言い合いが終わるのを待っている表情。さらに細かいですけど、その場面で劇団のメンバーはお茶を飲んでいるところに、姉妹役は水(ペットボトルと水筒)を飲んでいるのを観た瞬間、何でかわからないけどもう「2人ともこいつら全員ぶんなぐっていいぞ、俺が許す」と感情移入してしまった。物語に心奪われることはあっても、役に感情移入しながら観たのは久しぶりだ。いやまあそりゃ炭酸飲んでのどに刺激を与えるわけにはいかないという上演上の都合もありますけどね。後で出てくるトラック運転手の男性役もいい感じで、後半どんどんよくなっていく。

日本人の悪い面の特徴と書いたけど、それは(別に日本以外にも)いろいろあるけど、今回一番ひっかかった悪い面が「区別がない」こと。特に、自分の考えは他人が賛同して当然、自分の目標は他人も目標、という間違った集団意識。他人には他人の考え方があるから自分の考え方をおしつけることはできないという前提意識の欠如。これが、小は家族の不和から、大は基地問題まで、いろんな考え方をこじらせている。そのしわ寄せがいろいろな形で若者に回ってくる。姉役の時々鼻血が出る設定は、怒りを我慢して限界に達した場合の現象と解釈しました。あんな年寄りばっかりだったら腹が立って当然だと自分は思う。

別に役者の個人攻撃ではないですよ。役作りが上手かったということで、"Don't take it personally."です。今回はほとんどの役者が自分の名前と同じ役名を割振られているので、誤解されないように念のために書いておきます。そういう「悪い面」は岩松了の脚本の力で、だから、岩松了がどうやってこの脚本を書いたのかが知りたい。そして当日パンフで蜷川幸雄が「若い人への違和」と書いていたけど、違和についてどこまで意識的な演出をやったんだろう。すごい興味がある。

断絶したまま終わらないように、橋渡しに演出家だったり劇中劇だったりを用意して、特に劇中劇と劇を混ぜて思いっきり清算する巧みさには、救われます。

そういうわけもあって、今回はゴールドシアター以上にネクストシアターの3人が気になった。できれば「ハムレット」を観に行きたい。深谷美歩、周本えりか、川口覚の3人の名前は覚えておく。姉役の深谷美歩と妹役の周本えりかは、こんな発声の人が若手でいたのかと思って調べたら、深谷美歩は新国立劇場演劇研修所出身者だった。

<2011年12月18日追記>

2つ追記。その1。悪い面のもうひとつの代表的なものが真面目教。どちらかというと真面目ではなくて正直教で、日本の場合はこちらのほうが問題が根深い。その2。オープニングで何か変だと思っていてわからなかったけど、あれはカメラがおかしかったのが原因だと気がついた。芝居の進行上一部の人はあれだけど、飛行機撮影に来るほどのマニアなら原則として、全員プロ並の装備をさせてほしいところ。いまどきフィルム撮影を自分で現像するならなおのこと。近所の公園を朝通るときに鳥屋の爺様たちが持ってきているフルサイズのカメラにでかいレンズにごつい三脚の組合せを見るたびに、どんだけ金持ちなんだとうらやましくなる。

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