C.I.C.T./ブッフ・デュ・ノール劇場製作総指揮「魔笛」彩の国さいたま芸術劇場大ホール(ネタばれしてもいいよね)
<2012年3月25日(日)昼>
森に迷い込んだ王子が、夜の女王から娘の救出を依頼される。魔笛を渡された王子は、森の中で蛇に襲われたところを助けてもらった鳥刺しの若者と救出に赴く。
最初に謝っておく。オペラとか歌舞伎とか、正真正銘の古典ものは、やっぱり予習しておかないと駄目だ。ピーター・ブルックの芝居をよく知らないで、きっとスピーディーな芝居に翻案しなおしたんだろうくらいの気持ちで出かけたら、超ど真ん中のオペラだった。90分だったから普通のオペラ上演に比べればはるかにスピーディーなんだろうけど。
オペラだからネタばれしてもいいと思って書くけど、娘をさらったザラストロは、実は娘の亡き父親が信頼していたどこかの神殿の長で、夜の女王が野心家で、後にはザラストロの部下を唆してなんたらかんたら、なんだけど、よくわからない。王子が娘と結ばれるのはいいとして、パパゲーナにパパゲーノができるのがよくわからない。元々が庶民向け芝居らしいから、場面ごとの歌や盛上がりを楽しむのが吉で、考えたら負けなのかも。
元に戻ると、竹(とピアノ)しかない舞台に、普通の芝居っぽい衣装の登場人物。音楽はオーケストラの代わりにピアノ一本。小道具少々。当日パンフによると、登場人物を削ったり、楽譜を書換えたり、モーツァルトのほかの曲も使っているらしい。娘の救出劇に焦点を当てて短縮したってことでいいのかな。それでも90分とは思えない内容だった。あと、夜の女王のアリアとか、パパゲーノ・パパゲーナとか、有名な曲を聴けて満足。役者ではザラストロ役のヴァンサン・パヴェジがよかった。
たぶん、このくらいシンプルに上演できるんだぜ、ってところが一番の驚きで、それはオペラに詳しい人ほど驚くところだと思うんだけど、日本の小劇場を見慣れた身としてはそこには驚かない。その源流にピーター・ブルックがいたとしても、そのさらに源流に能や狂言があるわけだし。で、予習不十分で物語がよくわからなかったのは冒頭に書いたとおり。体調不十分だったのは認めるけど、カーテンコールの絶賛振りがまったくわからなかった。あれ、オペラ好きの人がたくさんいたんだろうか。歌も役者も上手かったとは思うけど、話がわからないからついていけなかった。歌舞伎もよう知らんのに、オペラ方面もいつか勉強しないといかんとは。もう一回謝っておく。上手いとは思ったけど、今の俺にはわからなかった。
あと、C.I.C.T.というのが国際演劇研究センターでピーター・ブルックが主宰していて、その本拠地としてブッフ・デュ・ノール劇場というのがあるのかな。劇団名相当に何を書けばいいのかわからないので、製作総指揮のクレジットを採用したのであしからず。ちなみにその劇場はこれらしい。何をやっても期待してしまうという当日パンフの言葉もわかる。世田谷パブリックシアターを一度廃墟にするとこんな感じになるのかな。
<2012年3月27日(火)追記>
これを読んだ。王子による王女の救出劇という以外に、神殿の長による悪い女王をやっつける要素もあったのかな。で、通常のオペラだと勧善懲悪でやるところを、寡婦の不安感にも同情できる舞台だったと。言われてみればそうかもしれないけど、だとすると、寡婦の不安っていうテーマで3本連続観たことになる。なんだこの流れ。
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