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2012年5月 5日 (土)

ロンドン・ヤングヴィック劇場「カフカの猿」シアタートラム

<2012年5月4日(金)昼>

学会で自分の体験を披露することになった猿。アフリカで密猟者にとらわれ、輸送中の船で人間の真似をするようになり、見世物小屋での学習を通じて言葉を覚えるようになるまでの5年間の経緯。

どうして昼夜でやっていないんだと恨みながら渋谷から田園都市線か井の頭線かものすごい迷って、一人芝居連続ってネタで選んだカフカ原作のキャサリン・ハンターの一人芝居。カフカ未読で臨んで、すごいよくできていたのだけど、ちょっと入りきれなかった。入りきれなかった原因は、一に自分の心持で、どうも最近調子がわるいのだけど、そればかりではなくて。

アフタートークによれば原作にないエピソードをひとつだけ足している他は原作に忠実で、移民の多いロンドンでは移民の話として受止める人が多かったらし い。自分は最初、野田秀樹の「赤鬼」を連想したけど、観ているうちにこれは「ガリバー旅行記」だと思った。馬の国の人間嫌いの話。いろんなエピソードの方向がそっちに向かっている。

前宣伝ではキャサリン・ハンターは猿の見て動きを覚えたという点が強調されていて、それは確かにすごかった。なかなか真似のできない動きをしながら台詞をしゃべって1時間出ずっぱり。あれを毎日昼夜やったら身体がもたないから普段は1公演で当然だ。あと猿の鳴声も、あれは何を思って出しているんだろう、あまりにも似ていて素直に感心した。

で、入りこめいと感じた理由のひとつが、キャサリン・ハンターが猿を上手に演じすぎたこと。この脚本はもっと抑えて演じても十分面白い、いっそ美術の演台(途中で脇によけられる)を残したままリーディングに近い形でもよかったと思うけど、猿の動きで見せてこそ効果的な場面は一部で、全体では1足す1にしか思えず、脚本との相乗効果があまりない、過剰演出に感じてしまったのがひとつ。

もうひとつが、なんか台詞が劇場に充ちないで、きっちり舞台の向こう半分にしか想像の世界がないような気がしたこと。アドリブあったし、客席にも来たし、日本語も話したし、展開の一部に客を組込む度胸はすばらしいの一言だけど、台詞が後ろに飛んでいる感じ。いままで英語で音響のほとんどない芝居を観たことがなかったけど、英語の台詞回しってあれが普通なのかな。一人芝居とはいえ、観客が学会の聴衆という設定にしては違和感。

これもアフタートークによれば(翻訳とオペレーターとアフタートークのゲストは谷賢一だ)、字幕は最小限に抑えてキャサリン・ハンターに注目がいくように狙ったらしいけど、字数の制限はあるにしても、どうも台詞を聴いていると情報量が足りなすぎる気がする。自分の語学力が足りないのが第一だけど、字数の制限を考えても削りすぎだったんじゃないのか。たとえば字幕ではあえてモンキーとエイプとチンパンジーを「猿」で統一したらしいけど、これなんか人間嫌いの意図を伝える重要なキーワードだったと思う。ついでに書くと、アドリブの多いこの芝居でのオペレーターは大変だと思うけど、ライブ感を狙いすぎて統一感のないタイミングになっていた気がする。フォントと字幕位置は見やすくてすばらしかった。直前でそこに追込みをかけた情熱は報われていたので、それは特筆しておきたい。

結論としては、英語をもっと勉強しないと世の中損するぞ俺、です。

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