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2012年6月24日 (日)

こまつ座/世田谷パブリックシアター 企画製作「藪原検校」世田谷パブリックシアター

<2012年6月23日(土)夜>

江戸時代、東北は塩釜で生まれつき盲目の子供は、幼いうちから座頭の弟子に出される。杉の市と名前を得た男はそこで頭角を現し、悪事を犯して江戸に逃げ、座頭の最高位である検校を目指す。後の藪原検校である。

立見まで出る人気の公演は、悪事を悪事と思わない男に染まっていく主人公を野村萬斎が演じる3時間の大作。面白くもあり、もっと面白くできるだろうという思いもあり、トータルでは満足。

井上ひさしは初期のほうが目茶苦茶で面白いと思うのだけど、これはそういう1本。盲が目明きとやり合うために悪事を働いて何が悪い、と主人公の悪を肯定しつつ、目明きは盲を哀れで汚いものと思っているんだよと世間の偽善を非難する合間に、コミカルかつリズミカルなエロ描写と、いかにも井上ひさしという雰囲気が堪能できる。説教くさい井上ひさしは嫌いだけど、こういう脚本は好きです。

演出は偽善を偽善と描写するところに重点を置いていたのか、悪人賛歌だけに偏らない仕上がり。それが芝居の厚みとしてはいい方向に働いたけど、悪事をためらわない主人公の爽快感みたいなものはもうひとつ。悪事に目覚めてからの中盤以降から俄然面白くなってくる。

主人公を演じた野村萬斎よりも、狂言回しの盲太夫が圧倒的な台詞量をこなしたり、藪原検校のライバル兼友人の検校(役名失念)が屈折した共感を藪原検校(実際には検校になる前)に示すあたりが気になって、何この人たち上手い誰だろう、と思って終演後にチラシを確認したら浅野和之と小日向文世だったと気がつくのが遅くてごめんなさいごめんなさいそりゃ上手いはずだと反省した。この2人のおかげで確実に舞台のレベルが一段上がっていた。

これだけやれば普通は大満足の芝居になるはずで、実際面白かった。けど、もっといけるというのが感想。これはひとえに脚本の器が大きいため。下手な人がやると脚本負けするところなので、ここまで仕上がっただけでもすいごいんですけど。以前シアターコクーンで藪原検校を演じた古田新太がインタビューで「つまらない芝居を面白くするのは簡単だけど、面白い芝居を面白く立上げるのは至難の業」と話していたのももっともなことだと実感させられる。何がいいたいかというと浅野和之と小日向文世がもっと観たかったということです。

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