公益財団法人可児市文化芸術振興財団主催「高き彼物」吉祥寺シアター
<2012年7月8日(日)昼>
オートバイ事故で友人を亡くした高校生と、その事故現場に居合わせて救出作業に当たった近所の元教師。受験を控えた1年後に事故現場に戻ってきた高校生を、諸事情あって元教師が家に泊めることになった。元教師と高校生、そして元教師の家族や知人が織成す昭和53年の夏休みの一週間。
マキノノゾミ脚本にして初の自分演出は、岐阜県可児市の再演発掘アーラコレクションによる制作。芝居の王道が楽しめる2時間40分。
設定からしていかにも秘密がありそうで、やっぱりその秘密が物語の核心になっていて、でも笑って泣かせてすっとぼけて、こういう王道の芝居ってあんまりないですよね。秘密の内容が若干微妙ですけど、基本的には誰と観に行っても楽しめる。高き彼物ってなんとなくこういうものか、という気分になれる。
役者はみんな安定感大。中心に石丸謙二郎を据えて、周りに緩急つけさせて。出番が少ない割に存在感の大きい品川徹がいいアクセントですけど、声フェチな自分は田中美里の微妙に甘やかすトーンの混じった説教声にやられました。話している役者もいいけど、それを聴いている役者のリアクションもいい感じ。ただし、あれで2ヶ月前までMRやってたのかよとか、あれで警察官かよとか、あれで(以下略)とかのつっこみはしてはいけません。そういうのはデフォルメの範疇。
スタッフだと、高さを隠しつつ奥行きを出した美術と、ジーパンの裾の短さで微妙さを演出していた衣装に注目。というかかなり贅沢な面子ですね。4000円の芝居でこれだけのスタッフは普通揃いません。
開演直前で携帯電話を鳴らした人がいて、それが舞台上の黒電話と同じ音になっていたからか、一瞬音響が止まっていたけど、ご愛嬌ということで。客席みんな開演と間違えていましたから、開演前でよかったですよ。
4000円でこれくらいのレベルの芝居が標準になって1ヶ月公演とかしてくれると芝居見物がもっと流行ると思うんですけど、再演利用可能な脚本はさておき、演出役者スタッフともかなり贅沢なので、なかなかむずかしいところです。
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