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2012年8月13日 (月)

Bunkamura/大人計画主催「ふくすけ」Bunkamuraシアターコクーン(ネタばれあり)

<2012年8月12日(日)昼>

14年前に失踪した妻を探して上京してきた工場経営者。アル中の風俗ライターとつきあう風俗嬢。目の見えない妻を持ちながら、勤務先の病院の看護婦と不倫する警備員。奇形児を監禁して偏愛する薬剤会社の御曹司。ある日、御曹司の監禁が発覚し、奇形児はそれぞれ別の病院に預けられる。その中のひとりが警備員の勤務先の病院に預けられる。警備員は彼を「ふくすけ」と呼ぶ。

初演は1991年の悪人会議で20年以上前のもので、日本総合悲劇協会で再演して、今回が三演目(であってます?)。それを今ごろ上演して成立させるんだから、元の脚本も、演出も、すごいもんです。

話題も登場人物も、放送コードとしてはやばいものがてんこ盛り。そして台詞の強さが他の芝居とは全然違う。インターネット的に言えば名言連発。連発しすぎて覚えていないくらい連発。若いころの松尾スズキってすごい。そして救いがない。まったくない。救いがどこにもない芝居って久しぶりに観た。

阿部サダヲが奇形児を演じていて、こういう役を含みなくできる貴重な役者だということを再認識した。かと思いきや、古田新太がすごい地味な役でネタほとんどなしで、もったいないと思いきやプレーンな古田新太もやっぱり貴重で、たまに観ると新鮮でこれはこれでいい。もう、ハズレはないから好きな人に注目してください。で、今回一番目を引いたのが平岩紙。出番とか役とかいろいろ理由はあるけど、個人的には大竹しのぶより多部未華子より圧倒的に引力を持っていた。

席が立見で見切れがひどくて、その分損した感があるので、できれば正面の席で観たかった。立見も含めて満員のシアターコクーンって久しぶりだ。でも、配役表を配っていたのはうれしい。折込チラシとは別にありますので、休憩時間にもらっておきましょう。

で、ここからネタばれ。本当に最後のネタばれまで書きますのでこれから観る人は読まないように。

それだけ褒めておいてなんだけど、脚本が全体に古い印象を受けた。盲目の妻が宗教に目覚めてヤクザに攻撃を仕掛けるという筋立ては、目の不自由な人間が教祖の宗教団体が国家中枢でサリンをまくというテロがあった。いじめっ子がいじめおよびその後の不倫に対して毒で仕返しをしていたけど、今では自殺に追込まれてそもそも大人になれない。風俗業界から都知事に立候補していたけど、社員を過労死に追込む会社の社長が普通に都知事に立候補している。監禁事件は「キレイ」初演時にちょうど実際の事件が発覚して騒ぎになっていた。先見の明は疑うべくもないし、1991年では凄いインパクトがあったと思うけど、2012年の時点では、事実は小説より奇なりだと思う。

あと、年寄りが登場しないですね。やくざの三姉妹が、たぶん50歳前。夫と、失踪した妻がやはり50歳前後の設定。個人的な印象ですが、今時の悪いやつというのは若者には似合わなくて、金も地位も持っていて体力もまだまだ残っていて退く気なんてさらさらない脂っこい70歳くらいの年寄りのほうがはまる気がする。その点で、若者が若者の興味のある範囲で書いた脚本といえなくもない。

立見で見切れがひどくて、舞台からのエネルギーがあまり受けられなかったので悪い印象になっている可能性がある。やっぱり正面席で観て確かめたかった。あ と、シアターコクーンだと上品過ぎた。ありえないけど、スズナリみたいに、劇場自体に怪しさがある劇場で観られたらよかった。

それを上演して成立させるのは、やっぱり脚本の力。失踪した妻側の家族の話と、盲目の妻の夫婦の話と、それぞれに力強さがあって、その両方の話がふくすけを介して上手に交差する。これがやっぱり基本線で、これがあるから名作と呼んでもよい。そういう脚本。悪いことも書きましたけど、観て損をするようなレベルではないのでご安心を。

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