2019年3月20日 (水)

名取事務所「ベッドに縛られて / ミスターマン」小劇場B1

<2019年3月14日(木)夜>

10年間ベッドに寝たきりの若い女性の元に父親を名乗る男がやってきて2人で交互に語りつくす「ベッドに縛られて」。母と2人暮しで信心深い息子が、その信心深さから孤立していく「ミスターマン」。アイルランド芝居の2本立て。

後で気がついたら昼も夜も小田島恒志の翻訳という1日。2人芝居と1人芝居(声だけの出演あり)で登場人物が少なく、セットも固定で、勢い多い台詞への比重が高くなる2本。

これでもかという早口で全編通した「ベッドに縛られて」は、早口に囚われて起伏の付け方に失敗。様子がわかってくる後半はまだしも前半はつらい。その点は時間の短い「ミスターマン」のほうが1人芝居ということもあってまだつけやすかったようだけど、これでも起伏は不足している。2本立てで時間が足りなかったか、全体に、演出がHowにこだわってWhatやWhyを掘下げきれなかった印象。「ベッドに縛られて」の寺十吾と小飯塚貴世江、「ミスターマン」の斉藤淳とも適材適所だったのにもったいない。ただ斉藤淳はこいつヤバイ感が全開の怪演で、探せば名手はいるものだ、の感を新たにした。

それにしてもネタばれだけど、2本立ての両方とも殺人が起きる。マーティン・マクドナーといい、このエンダ・ウォルシュといい、苦しい環境で精神に異常を来たして人を殺す以外のアイルランド芝居はないのか。

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加藤健一事務所「喝采」下北沢本多劇場

<2019年3月14日(木)昼>

1950年のアメリカ。初演を3週間後に控えている舞台が、契約上の手違いで主演俳優が映画撮影のため離脱してしまい、制作者、演出家、脚本家が代役に頭を悩ませている。アンダースタディのベテラン俳優の起用を主張する演出家に対し、新しい役者を手配しようとする制作者。かつて彼の舞台を観た演出家にはその実力が忘れられないが、アルコールによる失敗を懸念する制作者は反対する。不安定な契約ながらも主張を通した演出家。だが当の俳優自身が不安を抱き、その妻はそれ以上に心配する。

加藤健一事務所は初見。いまどきこんなバタ臭い芝居があるかと思いきやよくよく見ると、バタ臭いベテラン俳優の加藤健一、バタ臭さに付合うけど一線は守る演出家の小須田康人、最初からバタ臭さに付合うつもりのない妻の竹下景子、バタ臭さに付合うことで見せ場との落差を作って盛上げるプロデューサーの奥村洋治など、役者によって微妙に違うスタンスに興味をそそられる。小須田康人がとてもよい感じ。

舞台は1950年のアメリカ・・・と始まるナレーションで舞台設定を説明しながら開演するのは脚本の指示なのか演出の工夫なのか、芝居初心者へのハードルを下げる工夫として感心。ただ、最初はベテラン俳優が主役だったのが、途中からその妻が主役の話に移ってやや困惑。有料パンフレットでは、原題が「The Countory Girl」で、そこに作家の思いが込められていると演出家が文章を寄せていた。そこまで考えていてなぜこういう演出になる。それと、どこかつながりの悪さを感じる脚本で、特に演出家がそこまでベテラン俳優に拘る理由が、昔観て感激したという説明はあっても希薄だった。時間短縮のために一部場面をカットしていたのかもしれない。次回も翻訳モノだけど今回に増して文学座のエースが集結する座組なので、もう一度観たいところ。

あと細かいところで、開演前のアナウンスが、他所では「携帯電話やスマートフォンをお持ちのお客様は・・・」と流すところ、「スマートフォンや携帯電話をお持ちのお客様は・・・」と流していた。この順番で聞いたのは自分は初。今のスマホの普及率を考えると他所もこの順番に直したほうが時勢に合う。

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2019年3月15日 (金)

小田尚稔の演劇「是でいいのだ」三鷹SCOOL

<2019年3月9日(土)夜>

東日本大震災が起きた日の新宿駅近く。就職活動をしていた女子学生は面接が中止になった挙句に電車が止まって家まで歩いてかえる羽目になる。喫茶店で離婚届の書類を書いていた女性は埼玉に帰れずに公園で休んでいたところを、寝過ごして地震に気がつかず中野からやってきた学生に声を掛けられてカラオケボックスで休む。スマートフォンの調子が悪い会社員は仕事で六本木に来ている最中に地震に遭う。新宿の本屋で働く女性は入社2年目にして仕事に疑問を抱く。その日の話と、だいぶ経ってからの日の話。

1年前に観た前回から、脚本はおそらく同じで、一部キャスティングが代わり、その分良くも悪くも違う雰囲気に仕上がっていた。役者のレベルは今回のほうが上で、笑える場面も増えていた。ただし声も態度も強い感じの役者が増えて、小さい人間の弱いところを絶妙のバランスで描く感じはなくなっていた。観る人によるだろうけど、個人的には前回のほうが好み。こういうことがあるから演劇は難しい。

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青年団「思い出せない夢のいくつか」こまばアゴラ劇場(若干ネタばれあり)

<2019年3月6日(水)夜>

歌手とマネージャーと付人が、営業先に移動するために夜中の電車に乗っている。煙草を吸いに行った別の車両では、妙な乗客に話しかけられて辟易とする。車中のこととてたいしたことができるわけでもなく、取りとめもなく交わされる会話の数々。

あれと言えばこれと返せるくらい話が合う付合いの長い歌手とマネージャー。別の人間と結婚数ヶ月で破綻した歌手はマネージャーにひそかに好意を寄せているが、独身のマネージャーは歌手がいないときに「夫婦が似るって本当ですか」と聞く若い付人に懸想する。それを察していながら知らん振りして若い付人を遠くへやれないか考える歌手。三角関係の事情がわかるにつれて、何気ない会話が手に汗握る牽制に見えてくるのが見所。別の車両の乗客に銀河鉄道の夜の登場人物を引いて先行きの不安を醸しだしながら、見方のわからない星座盤でこれからの混乱を暗示する手際。

静かな演劇に見えて内面は全然穏やかではない脚本は、これが新作ならさすがベテランと書くところ、初演は1994年2月で25年前。その次が「東京ノート」という初期絶好調時代の1本。なおタイトルは俵万智の短歌から無意識に引用した(気がついて後日許可をもらった)と当日パンフの弁。

ポーカーフェイスのマネージャーを演じた大竹直、付人で歌もいい藤松祥子も好演だったけど、歌手を演じて久しぶりに出番の多かった兵藤久美がいわく言いがたいけど実に良い感じ。

今回の「平田オリザ展」は観たことのない芝居ばかり3本観たけど、どれも夫婦とは何ぞや、という芝居ばかりだったのは偶然か狙ったのか単に少人数芝居を選んだらそうなったのか。あとこの大量の芝居を交代で上演するために美術は共通化して簡単に入替えられるようにしているなと思っていたけど、今回の1本はいきなりごつい美術になっていて、壁や線路をどんなパーツで構成していたのかが気になる。あの狭い劇場でそんなに簡単に入替えられるのか。

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青年団「隣にいても一人」こまばアゴラ劇場(若干ネタばれあり)

<2019年3月6日(水)夕>

ある朝、目が覚めたら、なぜかわからないけど夫婦だという認識を2人とも持って同じアパートにいた男女。双方の兄と姉が夫婦なので以前から知りあいではあったが、昨日の晩はそれぞれ自宅にいたのに、なぜこうなったのかわからない。とりあえず兄と姉に相談してみるが、どちらにも言い分が伝わらなかったり誤解されたりする。

Aチーム。夫婦だという認識をもっている2人は日常の些細なところから食い違うのに、離婚したばかりの兄姉夫婦のほうが話が合うという対比。発端となる設定こそ突拍子もないけど、それ以外は青年団らしいウェルメイド(で言葉あっているかな)な会話劇。客席から和やかな笑いの絶えない芝居。夫婦はどうやって夫婦になるのか、を描いた小さな傑作。

一度手に取ったパンを皿に戻す戻さないという流儀ひとつでまだ互いに慣れていない状況や同じ環境で育った兄弟であることを表したり、実は兄姉夫婦が離婚していたことが少しずつわかったり、最後の場面で歯磨きとパジャマで今後を想像させつつやり方は違っても噛み合っているところを見せたり、それらを不自然に思わせないように別の展開に混ぜて紹介しておいたりする構成も見事。厳選された情報を適切な順番とタイミングで出す展開は、芝居はこうやって作るんだというお手本のようだった。

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パルコ製作「世界は一人」東京芸術劇場プレイハウス

<2019年3月2日(土)夜>

小中学校の同級生だった男女3人。ろくでもない経験をしながら大人になり、そのうち2人は結婚して子供をもうける。その子供が振返る両親の子供時代は幸福だったのか。

今回は筋を細部まで追えた自信がない。誤解混じりで書くと、子供のころの本当にささいな出来事と、子供にはどうにもできない周りの環境とが巡り巡って子供に伝わっていく話。観劇後の印象はチラシのイメージそのまま。暗い話題を扱いつつ笑い飛ばすハイバイの演出と違って、笑いを挟みつつも暗くて何が悪いと開き直ったような演出。むしろ大人計画っぽい。低音多めで不吉な音楽が多くて、そこに松尾スズキと瑛太が低めの声でなお一層暗くなる舞台を、松たか子の声で支える形になっている。この舞台の半分くらいが松たか子の声の不思議な明るさで成立している。

ただ、暗いのは構わないけど、全体にスピード感に欠けた。ハイバイがいつも難しいことをやっているように感じた秘密の一端は、とにかく速いのに速さを感じさせないところにあったと気付いたのは収穫。

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2019年3月 3日 (日)

2019年3月4月のメモ

3月に比べて4月がスカスカなのは、調べ方が悪い自分のせいと、来月の予定すら公式サイトに載せてくれない劇場のせいです。こまばアゴラ劇場のように1年先の予定まで載せてくれとは言わないのでせめて3ヶ月分は載せられないものか。

・松竹製作「三月大歌舞伎」2019/03/03-03/27@歌舞伎座:昼の部の「傾城反魂香」、夜の部の仁左衛門の「盛綱陣屋」と知らざあ言って聞かせやしょうの「弁天娘女男白浪」と気になる作品多し。

・パルコ・プロデュース「母と惑星について、および自転する女たちの記録」2019/03/05-03/26@紀伊國屋ホール:初演を観たから多分見送るけど、斉藤由貴に代わってキムラ緑子なのが気になってしょうがない。

・小田尚稔の演劇「是でいいのだ」2019/03/07-03/11@三鷹SCOOL:去年に続いてこの時期に合せて再演、あと1回観ておきたいけどどうするか

・名取事務所「ベッドに縛られて / ミスターマン」2019/03/08-03/17@小劇場B1:少人数翻訳劇に活路を見出している名取事務所から、気になる役者を揃えて2本立てで

・Bunkamura企画製作「空ばかり見ていた」2019/03/09-03/31@Bunkamuraシアターコクーン:岩松了の新作

・新国立劇場こつこつプロジェクト「スペインの戯曲」「リチャード三世」「あーぶくたった、にいたった」2019/03/13-03/17@新国立劇場小劇場:将来の本公演を目指した長期計画の途中発表となるリーディング公演、公演期間は5日間でも1演目3回しか上演はないので注意

・加藤健一事務所「喝采」2019/03/13-03/17@下北沢本多劇場:そろそろ加藤健一事務所も観ていいんじゃないかという気にさせられる再演モノ

・木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」2019/03/14-03/17@神奈川芸術劇場大スタジオ:いつも期間が短くて見逃している

・ベッド&メイキングス「こそぎ落としの明け暮れ」2019/03/15-03/27@東京芸術劇場シアターイースト:よくこれだけ女優陣を集めたなという顔ぶれ

・燐光群「九月、東京の路上で」「生きのこった森の石松 / あい子の東京日記」2019/03/15-03/31@ザ・スズナリ:去年の話題作をすかさず再演する「九月」と中編ふたつをそれぞれ上演する2本立てで、「あい子の東京日記」が気になったのでメモ

・パラドックス定数「Das Orchester」2019/03/19-03/31@シアター風姿花伝:劇場提携1年7本企画の大トリは学生時代の脚本を再構成

・世界の演劇「血のつながり」2019/03/22-03/24@文学座新モリヤビル1階:文学座有志による海外脚本上演ユニットで、家族の殺人事件の話だし上演期間短いけど、演出が稲葉賀恵なのでメモ

・M&Oplaysプロデュース「クラッシャー女中」2019/03/22-04/14@下北沢本多劇場:根本宗子の脚本演出

・財団、江本純子「ドレス」2019/03/27-03/31@ギャラリールデコ6F:どんな芝居か不明だけど、木ノ下歌舞伎から間も空けずに内田慈が参加するのに注目

・KUNIO「水の駅」2019/03/27-03/31@森下スタジオ:沈黙的で有名な大田省吾の代表作なのでこの機会に観ておきたい

・松竹製作「四月大歌舞伎」2019/04/02-04/26@歌舞伎座:昼の部の「御存 鈴ヶ森」は幡随院長兵衛が吉右衛門、夜の部の「実盛物語」は仁左衛門が主役、観たい

・うさぎストライプ「ハイライト」2019/04/03-04/08@こまばアゴラ劇場:てっきりアトリエ春風舎だと思っていたらこまばアゴラ劇場だったのでメモ

・シス・カンパニー企画製作「LIFE LIFE LIFE」2019/04/06-04/30@Bunkamuraシアターコクーン:「バージニア・ウルフなんて怖くない」を再演するつもりで同じメンバーを集めたのに企画が流れて別作品になったというKERA演出

・新国立劇場主催「かもめ」2019/04/11-04/29@新国立劇場小劇場:全キャストオーディションで新国立劇場では見かけない顔ぶれのキャストに、鈴木裕美演出、翻訳は小川絵梨子だけどトム・ストッパードの英訳からの重訳

・神奈川芸術劇場プロデュース「春のめざめ」2019/04/13-04/29@神奈川芸術劇場大スタジオ:気合の入った2019年度ラインナップの第1弾

・PARCO企画「良い子はみんなご褒美がもらえる」2019/04/20-05/07@赤坂ACTシアター:これもトム・ストッパードだけど、実力キャストで1時間15分に惹かれる

他に当日券の電話がまったくつながらない世田谷パブリックシアター企画製作「熱帯樹」が03/08まで、後半戦が始まった青年団「平田オリザ・演劇展vol.6」が03/11まで、観に行くつもりが体調不良で1回パスしたブス会*「エーデルワイス」が03/10まで。劇団☆新感線が大阪北陸で長期公演を開始しているけどそれを観に行く余力はない。

<2019年3月15日(金)追記>

3本追加。

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2019年2月23日 (土)

青年団「走りながら眠れ」こまばアゴラ劇場(ネタばれあり)

<2019年2月22日(金)昼>

アナキストとして名を上げていた大杉栄と、婦人解放運動や奔放な恋愛で有名だった伊藤野枝。四男を出産する直前から関東大震災直前までの数ヶ月に、その活動からはあまり想像できない、自宅で交わされる繊細な会話の数々。

夫婦のじゃれあう場面のそこはかとないエロに初期っぽさを感じると思ったら、初演が1992年という超初期の作品。日常の夫婦の会話がただただ続く2人芝居だけど、死にまつわる話や憲兵の尾行の様子などは、間もなく憲兵に殺される史実を知っている現代の観客向けのダミーというか背景を補強する話。それらの間に、少年時代に犬や猫を殺して、長じてアナキストにまでなった男が、子供の将来を気にするいい父親に「堕落」していく様子を、翻訳中のファーブル昆虫記のオサムシの話(メスがオスを共食いする)で代弁させて、当時すでに完成された脚本の腕前を見せてくれる。

青年団歴の長い能島瑞穂と古屋隆太による会話は、実在の人物を題材に取っていることもあってか、台詞以上の密度や年月を感じさせる。あとこの2人は声が聞いていて気持ちいい。今が観ごろの完成形で、たぶん台詞を2回トチっていたけどそれも台詞かもと思わせる安定感。いかにも青年団という芝居で、日程を曲げて観ておいてよかったと満足感で一杯の1本。

<2019年3月3日(日)追記>

感想を書いた後で思いついたけど、これ、結婚して子供が出来たら演劇を止めていく演劇人への当てつけで書いたんじゃないのか。

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2019年2月12日 (火)

松竹製作「二月大歌舞伎 夜の部」歌舞伎座

<2019年2月11日(月)夜>

息子の初陣を案じてあえて陣中に駆けつけ主人に様子を尋ねる妻だがそこには敵方の武将の母も現れて仇討ちを狙う「熊谷陣屋」、親の仇を討つために踊りを披露する名目で屋敷に入った兄弟が踊る「當年祝春駒」、派手好みで旦那もいれば情夫もいる芸者に入れ込んで貢いだ行商人だが袖にされ「名月八幡祭」。

幕見席の通しで観劇。熊谷陣屋は、チラシのあら筋は読んで臨んだけど、まったく不覚なことにしゃべっている台詞の1割も言葉として理解できなくて、あら筋の内容すら観て取れなかった。芝居観すぎて疲れていたのは確かだけど、あまりのわからなさにひょっとして病気かと自分でも驚いた。有名な古典だから筋も台詞も知っている人は多いだろうけど、純粋に日本語として聞き取れている人はどのくらいいたのか。

代わりに楽しんだのが名月八幡祭。わかりやすい筋立てに、歌舞伎には珍しく照明と効果音を使ったクライマックス。堅気の新助を演じる松緑の明晰な台詞と最後の笑い声、それをかばう歌六の大人振り、芸者の美代吉を演じる玉三郎の色っぽさ(相手に気を持たせるうちわの使い方が素晴らしい)、そして情夫という名のヒモ男が最高に似合う仁左衛門。見どころが多い。新歌舞伎っていいものだ。

當年祝春駒、難しいことを考えずに単に音と動きのきれいなことを追えばそれでもよいのかと思えたら、楽しめた。

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渡辺源四郎商店シェアハウス「過ぎたるは、なお」こまばアゴラ劇場(ネタばれあり)

<2019年2月11日(月)朝>

青森県の、とある施設。かつて2人の息子を育てた母が入居している。入居している人たちは、仲よく過ごす人もあり、部屋で引きこもる人たちもあり。そこに新しい入居者がやってくる。

実にあらすじの書きにくい話だけど、重い話を別の話で包んで、1時間半ないと思えない密度。さすが長年やっているだけのことはある仕上がり。

実は早くになくなった母の代わりに導入されたロボットで、プルトニウムを燃料に半永久的に動くはずだったのに、エネルギーに欠陥が見つかり処分されるところを施設に入り、という背景はそのまま原発事故の敷衍。それを、少しずつひっかかる情報を提示しながら引張り込む。そこに、他のロボットが待つ恋人の話とか、育てた息子達が思惑をもって面会にやってきてからのいきさつを混ぜて、人間とロボットの「人間らしさ」の話に一気に振る幅の広さ。さらに、災害の話とか、ロボットの扱われ方の話とか、ガリガリ君の歴史(笑)とか、情報をちら見せして世界の奥行きを広げる手腕。青森は処理場があるだけにより実感のある話題だろうけど、重い話への重い抗議も間接的に示して芝居らしさも失わないバランス感覚は、さすが長年やっているだけのことはある。

終演後の話だと、畑澤聖悟と工藤千夏が交互に書いて、相手が書いた部分も勝手に書き直して、という手法で書かれたとのこと。どこがどちらの書いたものなのか気になる。役者はひとりくらい青年団出身の人が混ざっていると思ったけど、全員地元の人らしい。大千秋楽だったとはいえ至近距離に耐える演技。凝っているようでいてシンプルな舞台を飽きさせずに使って、まったく文句なし。もっと早くから観ておけばよかった。

遠征の都合で連休のときにしか上演できないとはいえ、東京では追加含めて4日間6ステージしか上演しないのだから、贅沢な話。ただし次回はGWを使ってスズナリで6日間8ステージ。

<2019年2月13日(水)>

感想を清書。

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