葛河思潮社「冒した者」神奈川芸術劇場大スタジオ
<2013年9月8日(日)昼>
戦後数年経った東京郊外の、修復もままならない古い屋敷。持ち主の老婦人は遠くで寝たきりになっており、縁者とその関係者が空いている部屋に住んでいる。そこに妻を亡くした作家が、住人のひとりに勧められて入居する。住民とも馴染み、客も来るようになったある日、以前講演を通じて親しくなった若者が作家を訪問する。以前と違って様子がおかしい若者をもてなすうちにその理由を知った住人たちは・・・。
いろいろ悩んだのだろうと思われる脚本家の、その悩みをここまで重い台詞に落としたのはすごい。途中で直球な台詞が入るけど、個人的にはそれは脇に置く。初回、2回目公演だった「浮漂」の続きと思われるが、観ていなくても別に大丈夫。でも観ておきたかった。
今回観た印象では、完成形を目指したというより、上手下手は問わないで手探りしているような雰囲気。いつもだとそういうのは嫌いなのだけど、今回は脚本とあっていたのか、観ているこちらの状態があっていたのか、すごい好ましく、ああこういうのもありなんだと感じた。それを狙っていたのかどうかはわからないけど、この雰囲気で千秋楽までもってほしいなと思う。
ただ、脚本を御しきれていない印象も受けた。今上演しても通用するのは脚本の力だけど、やっぱり古くて、この脚本を古く感じることができなかったら現代人として敗北なので、この脚本を堪能したら駄目だと思う。ここで描かれていること、問いかけられていることを進めてそこに回答を出して振りきってこそで、もう一段手探りの雰囲気が深くなっていてほしかった。そう考えると、怪しい場面でも欲を出さずに、プレーンな演技で望んでいた長塚圭史が一番いい方向だったのかも。
個人的にはいいタイミングで観られてよかった。3時間15分の地味で重い芝居ってのもたまにはいいものです。
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