2013年12月29日 (日)

2013年下半期決算

恒例の年末決算です。

(1)葛河思潮社「冒した者」神奈川芸術劇場大スタジオ

(2)シス・カンパニー企画製作「かもめ」Bunkamuraシアターコクーン

(3)M&Oplays主催・製作「悪霊-下女の恋-」下北沢本多劇場

(4)芸劇eyes「God save the Queen」東京芸術劇場シアターイースト

(5)青年団「もう風も吹かない」吉祥寺シアター

(6)イキウメ「片鱗」青山円形劇場

(7)パラドックス定数「殺戮十七音」荻窪小劇場

(8)Bunkamura主催「マクベス」Bunkamuraシアターコクーン

(9)DULL-COLORED POP「アクアリウム」シアター風姿花伝

(10)橋爪功企画製作「犯罪」東京芸術劇場シアターウエスト

以上11本、隠し観劇はなし、チケットはすべて公式ルートで購入した結果、

  • チケット総額は46900円
  • 1本あたりの単価は4690円

となりました。上半期の11本とあわせると

  • チケット総額は100300円
  • 1本あたりの単価は4776円

です。本数的には予定に収まったけど、下半期は、スケジュール的には行けたのに体調不良で見逃した芝居が多くて損した気分です。

そんな中で観に行った中にはレベルの高いものもあり、よくわからないものもあり、だいたい半々でした。当たりの芝居は甲乙つけがたいのですが、なら満足したかというと、少し違う。そういう点では「もう風も吹かない」は割と近いのだけど、やっぱり少し違う。

橋爪功が朗読したためもあるのだけど、「犯罪」の3本の小説のフォーマット、事件が解決して一件落着になるようなものではなく、その事件が起きるまでの加害者の軌跡を丹念に追って、加害者の理由があることを丁寧に説明するあの流れ、あれがとても今時だった。あれが本国で出てきたのは2009年らしいけど、あれは世の中に出るべくして、というか、世の中が求めて出てきたんじゃないか。

そして今見返してみると、ハッピーエンドの芝居がひとつもない。細かく観れば「God save the Queen」の1本がほのぼのしていた、というくらい暗い話が多い。ネタばれで書くけど、ラスト場面が自殺、自殺、殺人未遂、事件自殺その他、経済破綻、呪い、精神病院入院、討死、出頭、有罪自殺計画的無罪って、揃いすぎだろ。暗い芝居が自分を呼んだのか、自分が暗い芝居を求めたのか。今を伝えるメッセージがほしいのは自分か。とか考えると、年間では「獣の柱」がやっぱり一番だったと思う。あと、橋爪功の朗読はぜひ定番化をお願いします。

もう勢いでついでに書きますけど、仕事が忙しすぎて体調やられて心まで枯れた1年でした。病気にならないのが精一杯で、芝居を観に行く体力もない時期もあった。この決算自体、長年書いてフォーマットもある程度決まっているからいいですけど、ぼーっとしながら書いています。仕事はあとちょっとで切りあげられるので、そこから先はしばらくサボらせてもらわないと体か心が死ぬ。この激動の時代に体調不良とか、二日酔いに迎え酒してフルマラソンを走っているようなものだ。体には休息を、心には潤いを。その一環で2014年も年間24本を目標で。その本数が減っても構わない。

誰に何を宣言しているのかよくわかりませんが、これからも引続き細く長くのお付合いをよろしくお願いします。

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2013年12月23日 (月)

橋爪功企画製作「犯罪」東京芸術劇場シアターウエスト

<2013年12月23日(月)夜>

開業医として地元の尊敬を集めながらも地味に暮らしていた彼の人生における妻の件「フェーナー氏」。建設会社の創業家に生まれたが母が早くに亡くなったため抑圧的なしつけをされて育った姉弟の物語「チェロ」。質屋の強盗容疑で逮捕された兄の公判で証人に立った末弟の証言「ハリネズミ」。

シーラッハはドイツの弁護士にして作家で、この「犯罪」という短編集がベストセラーになった、とは寡聞にして知らなかったけど、その中から3編を順番に出ずっぱりで2時間朗読。当日パンフによると自分でやりたくて発作的に劇場を予約したらしく、企画製作には自分の名前をクレジットしています。多少舞台は作っていて動きもあるけど、なにしろ朗読。それでいて、元の小説が受賞多数のベストセラーとはいえ、レベル高い。こんなもの観せられたら貧弱な小劇場芝居とか吹っ飛ぶ。あと2日あるから、時間がある人にはぜひ観て(聴いて)ほしい。本当は「罪悪」も観たかったけど、駄目だったのが悔やまれる。

法の裁きとは何ぞやの1本目、美しくてグロテスクな2本目、それだけじゃさすがにと思ったのでコミカルな3本目を選択、なのかな。2本目の、日本とは違ったゲルマン流の重たさは、観る(聴く)側の体力気力も試される。年末の定番を狙っているらしいけど、なのにまったく年末に相応しくない重たい小説を選んでしかもやり通してしまうあたりが、橋爪功の真骨頂、なんだろうか(個人的に一番重たいと思った2本目は内容が年末なので適切といえばその通りなのだけど)。

あと、誰かこれを映像化して、それを元に朗読の技術を解説してください。演技とは別に、緩急強弱いろいろ技術はあると思うのですけど、知りたい。

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2013年12月16日 (月)

DULL-COLORED POP「アクアリウム」シアター風姿花伝(ネタばれ少々あり)

<2013年12月15日(日)昼>

都内練馬区某所にあるシェアハウス。大家を含めて6人が住んでいるが、定職に就いているのは大家だけである。年末にクリスマスパーティーを開催しているところに刑事が訪ねてくる。予告通り魔事件の書込みがこのシェアハウスの共用PCから書きこまれたという。

シェアハウスの共用スペースを舞台に、刑事の登場をきっかけとして繰広げられる住人たちのいさかい。ウェルメイドな芝居に70年代-80年代の暑苦しい演技を入れるとか、しゃべるワニとトリとか、あれだけ自由に混ぜられるのは小劇場ならではだけど、それが仕上がりとして統一感を持つというか、やっていることに比べて違和感が少ないのが不思議。引いた存在感を出す東谷英人と、問詰める中村舞がいい感じ。ただ、あれで法務部勤めとか、設定が甘いとは突っ込んでおく。

よくも悪くも非常に感想の書きづらい芝居。なぜかと考えるに、シェアハウスの住人の問題の話から、ゲスト役者の登場する場面への展開がかなり唐突というか強引で、しかもどちらも話のウェイトが重いから(さらに言えば刑事を茶化すのも入っている)。今回、「XXで暮らしたい」「できるわけねえだろ」(大意)という場面があって、突込みタイミングが完璧すぎて笑いを誘っていたけど、あの台詞を成立させるだけで一本の芝居になるくらいの珠玉の台詞だったので、個人的にはシェアハウスの話だけで押してほしかった。後者の場面は、言いたいことも分かるのだけど、あれはあれで別の芝居にしたほうがよかったのでは。今後を暗示するラスト場面も素晴らしかっただけに、なおさらそう思う。

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2013年12月10日 (火)

Bunkamura主催「マクベス」Bunkamuraシアターコクーン

<2013年12月9日(月)夜>

いわゆるマクベス。

多少の客いじりはあるものの、囲み舞台で真っ向勝負の演出。なんだけど、個人的には非常に残念な結果に。

先に良かったところを挙げると、役者と舞台美術と照明。特に後半で出陣を説得する場面の小松和重と白井晃と、あとマクダフ母子の死を伝えたのは横田栄司でいいのかな? 吉田鋼太郎を彷彿とさせる歯切れのいい台詞は今回の役者で一番。それに魔女やマクダフ夫人。あとは市川しんぺーと福田転球も。劇場に入った瞬間にこれはと期待させた六角形の舞台とそれをシンプルに照らした照明は格好いい。

残念だったのが、毎回同じ役に見える堤真一と明らかに力不足だった常盤貴子の主人公2人、名のある役者を使い捨ててこそのシェイクスピアなのに後半で再キャスティングさせて(自分は)混乱したこと、それっぽい格好と今時のスーツを混ぜて舞台美術と喧嘩した(ように思えた)衣装、怒涛の台詞でメリハリがわからず単調に思えたこと、例のもの(観た人はわかる)まではまだしも最後のアレ(観た人はわかる)はそれまでの真っ向勝負の演出に対してさすがにやり過ぎ。で、値段を考えると、良かったところに対して残念だったところが上回った。

終盤に敵が攻めてきたことを伝えた部下は、一瞬だけど目を引いたので配役表を見ながら探しているのだけど、あれはひょっとして「使者」で配役されている常盤貴子だったのか。だとしたら、そういう所で目を引けるのに、主役であの結果とはもったいない。

自分は正面に座ったので特に問題を感じなかったけど、ベテランが何となく正面向きな演技をしていたような気がしたので、他の角度から観た人たちがどんなもんだったのかは知りたい。

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2013年11月24日 (日)

パラドックス定数「殺戮十七音」荻窪小劇場

<2013年11月22日(金)夜>

俳句の会を主催する2人。片方が相手の妻と不倫していた。関係が気まずくなるなか、片方は俳句の世界を広げようと薬物に手を出し、片方は会の運営に腐心する。

過去の事件を膨らませていたこれまでのラインナップとは違い、書いていてもこれは違うけどなんと説明するのか迷う芝居。後で当日パンフを読みながら後追いで推測したけど、世界が見えてそれを俳句で描ける才能を持つ男と、その領域を目指そうとする男の芝居。気負った前説とは裏腹に、悪い意味での小劇場感が全面に出て、正直よくわからなかった。野木萌葱ってこんなにマイナー趣味全開な人だったのか。

マイナー趣味なのは別にいいとして、舞台全体にあまりよくない印象を受けた。それは何でだろうと考えて、俳句や薬物など取上げる題材が暗かったり、劇場が狭かったり、いろいろ理由はあると思うけど、たぶん至近距離で観た役者が不健康に見えたのが一番の理由だと思う。役作りかもしれないけど、健康な役者の不健康な演技じゃなくて、単にこの人たちは不健康だ、と見えてしまった。観る側の勝手な思い込みで申し訳ないですけど。

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2013年11月22日 (金)

イキウメ「片鱗」青山円形劇場(少々ネタばれあり)

<2013年11月22日(木)夜>

とある住宅街。近所に引越してきた父娘の歓迎を兼ねたパーティーを開催していると、侵入者がきたと思しき形跡が見つかる。そういえば近頃あやしい人影を見たと話題になる。その場はそれで解散になるが、その後で植物が枯れたり、金魚が死んだり、いろいろ不思議な現象が起きる。やがて不思議な現象は住人にも・・・。

ホラー芝居なので、何を書いてもネタばれになりそうなのがつらいところ。驚かすわけではなく、少しずつ嫌な現象が積み重なって、最後にもう一回転させて、しっかりホラーしつつ、細かいネタはそのまま。ホラーの正体が今時の事情にうっすらシンクロしたメッセージ性も感じられて、現実がホラーといえばホラー。役者の「待機」は円形劇場ならではの演出。

ただ全体に密度が薄い。脚本は、個々の登場人物の味付けがいまいち。円形舞台を4つのエリアに区切った演出は、演技するエリアを満遍なく回すためかと思ったけど、順番にアクティングエリアがつぶれていってちょっと悲しい結果に(自分が観たのがDブロックで最初につぶれたエリアの前だった)。そして期待していた手塚とおるが、適役といえば適役だけど、よくいえば贅沢わるくいえば無駄遣い。今回の脚本なら娘の父をやってほしかった。

仕上がりはそれなりに高いけど、前回で俄然上がった期待値には届かず。考えるに、うっすらシンクロと書いたけど、あれはむしろシンクロさせることにこだわりすぎて芝居自体の物語性をブラッシュアップするところまで手が回らなかったのかも。

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2013年11月17日 (日)

青年団「もう風も吹かない」吉祥寺シアター

<2013年11月17日(日)夜>

近い将来、極度の円安の進行と外国の経済繁栄により、国力の衰えが目に見えている日本。その反映で、青年海外協力隊の制度が次回から中止になる。この協力隊最後の訓練生の、3ヶ月におよぶ訓練中の休日に交わされる会話を通した人間模様など。

よくこんな設定を思いついたものだと思ったら、平田オリザが実際に仕事で見学して思いついたとは当日パンフより。国力が衰える日本と、なのに援助する日本、それが巡り巡って日本の衰えに拍車をかけることにもなる協力隊という立場を選んだ訓練生たち、という表の流れ。それと表裏一体になったり、ならなかったりする個人の葛藤、という裏の流れ。観て感じる以上にいろいろ稽古しているんだろうな。「贅沢な施設」という台詞があって、実際に豪華に見えるけど、建付けとしては結構そうでもなさそうな美術がよい。やっぱり青年団は本公演は見逃してはいけない。ツアーは1月から、首都圏だと2月に2日だけ上演するので見逃した人はそちらで。

この芝居は大学の卒業公演に「卒業公演に相応しくない、夢も希望もない策本を書いてやる」といって書いたらしい。そういえば、訓練生があと1ヶ月で世界に散っていく設定が、卒業公演と重なる。けど、この5年後に書かれた「眠れない夜なんてない」に較べたら、ずっと希望のある芝居に思えた。根拠のない楽観を煽るのではなく、不安を感じる人の背中を押す要素を持つ芝居として、イキウメの「獣の柱」に近いものがある。そういう点は、やっぱり卒業公演を配慮したのか。

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2013年9月16日 (月)

芸劇eyes「God save the Queen」東京芸術劇場シアターイースト

<2013年9月15日(日)夜>

地下鉄に乗っている乗客のささやかなバックグラウンド「うさぎストライプ『メトロ』」。2ちゃんねるに書きこまれた自殺予告に対して書込みをする人々「タカハ劇団『クイズ君、最後の2日間』」。双眼鏡で隣人の生活をのぞく女性と、同居しているその友人の会話「鳥公園『蒸発』」。唐突で取りとめのない会話と出来事「ワワフラミンゴ『どこ立ってる』」。寿司屋で店長として働く女性とその店員の2人の関係「Q『シースーQ』」。

東京芸術劇場企画の芸劇eyes番外編第2弾は、決まった持ち時間で女性演出家の5つの劇団を紹介するショーケース。一言でいうとどれもシュールすぎる。「かもめ」の第一幕の劇中劇よりシュール。よく言えば枠にはまっていないけれど、これが10年後に主流とは言わないまでも、ある種の表現団体として認知されるのか。自分は案外オーソドックスで保守的な芝居が好きなんだなと思い知らされる。それと、描く範囲は狭くても何らかの永遠に触れるようなスケールの大きさを希望。

それだとあんまりなので考え直す。スケールの大きさなら鳥公園、ただし一番キていたのもここ。観ていて接点を見つけやすいという点でタカハ劇団、ただし非常に殺伐として救いのない話。残る、伸びる可能性という点ではこの2劇団と上から目線でメモしておきます。

あと、次の公演時期はそれぞれなようだけど、こういうショーケースの上演後に、あまり間を空けずに上演して気になったファンを次につなげる制作の作戦も必要なんじゃないかと。

アフタートークは体力の都合でスキップ。

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M&Oplays主催・製作「悪霊-下女の恋-」下北沢本多劇場

<2013年9月15日(日)昼>

幼馴染のお笑いコンビの片方の、関西にある実家。相方を連れてきて婚約者を紹介している。すでに父は亡くなっており、母は婚約者と息が合っている。ようやくテレビのレギュラー番組も決まった。が、同級生の撮影を頼まれたと出かけたときから人生が狂い始める。

最近企画の多い、松尾スズキの再演の1本(これは3演目)。勢いといい構成といい場面転換のときに出てくる字幕の切れといい、代表作といっても問題ないくらいの出来。ギャグはいくつか加筆しているみたいだけど、すごい狭い範囲を描いているのに、あっという間に話が進んで、いつのまにかスケールが大きくなっている。これを書いたときの松尾スズキが35歳くらいなのか。すごい。

なんだけど、これは演出と役者が合ってこそよくなる脚本で、その点今回は絶妙のキャスティング。三宅弘城も賀来賢人もよくて、それ以上に平岩紙がよくて、でもやっぱり広岡由里子がはずせない。小劇場の芝居の楽しさと実力を味わえる、小劇場って面白いよと勧められる1本。

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シス・カンパニー企画製作「かもめ」Bunkamuraシアターコクーン

<2013年9月14日(土)夜>

ある女優が所有する湖畔の別荘。夫がなくなった後も愛人を連れまわす奔放な女優と、芸術に打込むが仕事もなく母に放置されて暮らすその息子。息子は近所に住む女性に好意をよせて一緒に新しい演劇を目指すが、その女性は女優の愛人で著名な作家に憧れる。

チェーホフの中でも初見。恋愛や母子の愛憎をメインに据えて、芸術や創作に打込む人間の苦悩や覚悟を描いた悲劇、だと思うのだけど、喜劇らしい。多少の笑いはあるけれど、全体に真摯な雰囲気で進行する、とても丁寧な仕上がり。華も実力もあるキャストがそろっているので、「かもめ」を観たことのない人にはお勧め、と初見の一人としてすすめてみる。

三幕の大竹しのぶの喧嘩上手みたいに楽しめるところもあれば、二幕終わりで野村萬斎演じる作家の、嫌味だけど切実な創作の苦しみや、四幕最後の蒼井優の長台詞など、はまっていて心動かされる場面がいくつもあった。ついでにいうと一幕の劇中劇も結構いいんじゃないかと感じさせられて、蒼井優は今後舞台女優として大成すると思った。けど、それより今回気になったのは、浅野和之の使い勝手のよさ。何をやっても馴染むんだなこの人は。

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