こまつ座/ホリプロ主催「ムサシ」Bunkamuraシアターコクーン
<2014年3月9日(日)昼>
巌流島の決闘で勝利したものの、止めを刺さずに去った宮本武蔵。6年後、鎌倉で武蔵が建立を手伝った寺開きの最中に、怪我が癒えた佐々木小次郎が乗込んできて果合いを申し入れる。その日が修行の初日でもあったため、修行が終わる3日後に再度決闘することが決まったが、武蔵が策略を行なわないか見張るとの名目で小次郎も修行に参加して寺に泊まることになる。その3日の間に起こる、さまざまな事件、そして決闘の行方。
ロンドン・NYバージョンと銘打たれてどこが変わったのかは知らないけど、役者は馴染んだもの。主人公の2人が真面目な役の分だけ、珍しくネタが多い吉田鋼太郎や、さらにネタが多い白石加代子(反則ですよね)、ずいぶんしっかりした役にしあげた鈴木杏、安定の六平直政に、写真入でクレジットされてもよかったと思わせる大石継太など、まあ目移りが激しい。
現代が舞台だと書きづらいことが時代劇だと書きやすいと言ったのは誰だったか。笑わせて泣かせる中にテーマを含ませて、観ていても難しいことは何もなく、それでいて大きい話になる。これは蜷川演出のメリハリがいい方向に働いた結果だし、このくらい崩しても平気な井上ひさしの脚本の実力。最後の台詞がまた芝居として心憎く、テーマとしてもつながるので、スタンディングオベーションしている人もいたけど、それも納得の出来。芝居が不慣れな人にも勧められる。贅沢を言えば、ここまで安定するより前の、初演でもっと演技が固まっていない時期にも観ておきたかった。
というくらい褒めたのだけど、口コミプッシュをためらうのは、テーマに引っかかるものを感じるから。これ、井上ひさしがどの程度意識して書いたのか今となっては分からないのですけど(最後の台詞から何を想定して書いたのかは想像がつきますけど)、強者として振舞える者の立場を前提に描いた芝居なんですよね。人間は年を取れば変わるものですけど、初期に「藪原検校」みたいな脚本を書いた人が晩年にこういう脚本を書いて、何言ってんだとケチをつけたくなるのは自分がひねくれているからですかそうですか。過去と現在を観て書かれた脚本でなく、過去と現在と未来を観て書かれた脚本であったならばと思います。
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