OFFICE SHIKA PRODUCE「山犬」座・高円寺1
<2014年8月17日(日)昼>
学校を卒業して10年ぶりの同窓会。これに合せて、特に仲のよかった男女3人宛てに「タイムカプセルを掘り返そう」という手紙が届く。が、3人とも差出人のことを覚えていない。同窓会を抜けて裏山のタイムカプセルを掘り返した3人は、そこに差出人の名札を見つける。気味が悪くなって戻ろうとする3人だが、何者かに襲われ裏山の作業小屋に監禁される。監禁される心当たりのない3人が目にしたのは「シヌキデオモイダセ」のメッセージ。
ホラーだと思っていたけど、そこまでのホラーではない。脚本がよくできていて、演劇ならではの誤解を生かした演出をしていて、これぞ演劇という派手目の音響と照明が煽って、舞台装置は簡素な割に工夫されて、ひさしぶりにいい意味で小劇場らしい芝居だった。展開は途中でネタばれ同然だったけど、それで飽きるものでもなく、むしろネタ読みから解放されて集中できた。そうは言っても筋を話すとネタばれなのがつらい。
昔の悲劇が今の悲劇につながるというジャンルを何と呼ぶのか知らないけど、いわゆる王道の悲劇の部類だと思う。観たのが東京千秋楽だったからもう終わってしまったけど(大阪ではこれから)、小劇場フリークには迷わず勧めたい一本。このレベルをコンスタントに作れるならまた観たい。気合の入った予告映像を流しているけど、映像と投稿日から察するに、劇場入りしてから撮影して大急ぎで仕上げたものなので、これを観て気になったら関西方面の人はのぞいてみては如何。
名作になれる予感の舞台だったけど、瑕疵は何箇所かある。脚本だと、インド人の料理人を出したところ。カレーが出てくる話なのでインド人、という安直な設定は21世紀では止めてくれ海外に持って行けないぞという感じで、これは工夫すれば日本人の設定でも行けたはず。演出だと、終盤のここ、という箇所でもアドリブネタを許したところ。あれは大阪のノリなんだろうか、私の感覚ではあれは蛇足。役者だと、鳥肌実に森下くるみと、どうやってインパクトのあるメンバーを連れてきたのかと思っていたけど、観たらこれが普通に上手い。普通に上手すぎて、脚本が求めるテンションにはもう一段ほしかった。展開に合せて後からテンションを上げていくオレノグラフィティとか、出番が少ない割りに気になる丸尾丸一朗とか、劇団員のほうがインパクトが強かった。
多少強引なところはある脚本だけど、なんだかんだ言ってもいい脚本で、観ていた自分は楽しんだ。小劇場が生んだ名作ライブラリーというものがあればぜひそこに入れてほしい一本で、将来はPARCO劇場あたりが発掘して、大人が全力でやると同じ脚本でもこういう面白さになるぜ、という貫禄を見せてほしい。その前にまずは再々演を。
« 大人の新感線「ラストフラワーズ」赤坂ACTシアター | トップページ | パルコプロデュース「君となら」PARCO劇場 »
« 大人の新感線「ラストフラワーズ」赤坂ACTシアター | トップページ | パルコプロデュース「君となら」PARCO劇場 »
コメント