演劇系大学共同制作「見よ、飛行機の高く飛べるを」東京芸術劇場シアターイースト
<2014年9月12日(金)夜>
明治44年の名古屋の女子師範学校。新しい時代にふさわしい女性像を探しながら学年中でも浮いてしまう2年生の杉坂は、学業運動なんでも随一の4年生の光島と、ある夜の目撃を通して意気投合する。教師から借受けた自然主義の小説や与謝野晶子発刊の雑誌に感銘を受け、他の生徒とも協力して宿舎内で回覧する雑誌の編集を目指す中、そのうちの一人が「問題」を起こしたところを目撃されてしまう。
初日Aチーム。学生演劇と一度観たかった脚本とを天秤にかけて、脚本の力を信じて観劇したら、興行に耐える水準に仕上がっていてうれしい誤算。しかも同じ学生を呼んだものか、音響の一部が生演奏。もちろん、各学校や劇場がいろいろバックアップしたことや、学校の正式イベントの一環だから参加者が集中できたはずとか、黒字を目指さなくていいはずとか、いろいろ有利な点はある。だとしても、役者も(一部文句はなくはないにしても)観るに耐えるだけの演技だったし、美術や衣装も力作で、なによりこの値段でこれだけの芝居を観られるのは観客としては非常にお得。休憩を挟んで3時間20分と長いけど、芝居初心者にも安心して勧められる。
ただしそれもこれも脚本が抜群に優れているからで、特に終盤の連続釣瓶落としにはしびれた。それは飛行機も見えるだろう。美しげな結末を目指した演出だったけど、あの展開を書いた永井愛は豪腕だ。永井愛の演出でも観てみたい。
本筋以外で注文をつけるとしたら2つ。どうせ生演奏を入れるなら、効果音以外は全部生演奏にしてしまっても良かったのでは。ピアノを入れたかったら、舞台美術を中心に集めるとか、客席と舞台をかさ上げしてオーケストラスペースを作るとか、やりようはあったはず。あと、この水準を期待していいなら公演は2週末くらいとってもいい。これは劇場側の協力次第か。
ちなみにこの共同制作公演の報告を含めたシンポジウムが10月5日にあり、脚本家と演出家と副館長が出てくるので聴いてみたいもののおそらく都合がつかない。関係者におかれましては報告書と議事録をアップしていただきたく。
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