5%の差
例えば高校生が学校の企画で演劇鑑賞を行なったとして、それを観た人がどのくらいその芝居から影響を受けるか。まあ演劇でも音楽でもいいけど、それがクラス当たりでひとりかふたり、影響を与えられたのだとしたら、それは大成功だと思う。一クラス40人だとして、その中のひとりかふたりだから、5%の影響力というのはたいしたものだ、すごい。
うろ覚えで書くけど、平田オリザが、最近は東大に入る大学生でも東京出身者と地方出身者とで文化格差があって、地方出身者がガリ勉しかしていないころに、東京出身者は海外旅行に行ったり芝居を観たりして、入学後の話がかみ合わないということを書いていた。
地方にいたって旅行はできるし芝居だって上演しているし、そこらへんの経験が遅くたって、大学で4年もあれば海外旅行も芝居もはまる人ははまって、追いつけるだろうから煽るのはよくない、とそれを読んだ私は考えていた。
「炎」を観た高校生は地元だったのか、修学旅行だったのか、それはわからないけど、大学生から芝居を観始めた人が、大学生のうちにこういう芝居を観るところまでたどり着けるんだろうか。あるいはたどり着けたとして、こういう芝居を観る地理的機会に恵まれる東京の大学生と観るのがなかなか難しい地方の大学生とで、差はどうなるんだろうか。5%が4年積重なったら2割、10年なら6割以上の差になる。
歳食ったら数年の歳の差なんて誤差だけど、それはつまり、無利息で回した人と5%を複利で回して積んだ差というのが取返しのつかないすごい差になるのではないか。というか、なる。そうすると、別に芸術に限らず、5%の利息を得るための手段がたくさん用意されている場所と、少ししか用意されていない場所と、まったく用意されていない場所との、地理的なアドバンテージの差は無視してはいけないのではないか。
求めるものによって逆に東京だと都合が悪いこともあると思うけど、こと芝居に限っては、まず何より交通費がチケット代より高くつくこともたびたび、という現在進行中の体験談を持つ身としては、考えたくなることもある。
みたいなことを考えたのは、複利を回さずに歳食った側のおっさんだからです。
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コメント
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私は仰る通りだと思います。
複利とはいい喩えですね。
その辺が、文化政策の「長い目で見る」必要の、根幹だと思います。
投稿: 谷賢一 | 2014年10月21日 (火) 23時12分
>谷賢一さん
どうも。
自分で書いておいて何ですが、個人的には
「地理的アドバンテージがあるから、それを考慮して均衡ある国土の発展を目指そう」
ではなく
「それぞれ異なる地理的アドバンテージに依存した項目を伸ばそう」
または
「地理的アドバンテージに依存しない分野に突っ込んでそこだけでも均しておこう」
のほうがいいと思うのですが、「それができるのか」「差を埋めて余りあるくらい別のアドバンテージを伸ばせるのか」という点に自信がなく、結論の出ていない状態です。大げさに言えば国家百年の計ですから、難しいですね。
投稿: 六角形(管理人) | 2014年10月22日 (水) 23時53分