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2014年10月11日 (土)

世田谷パブリックシアター企画制作「炎」シアタートラム

<2014年10月10日(金)夜>

中東生まれで、カナダに暮らしていた女性が亡くなった。晩年の5年間、ただ一度をのぞいて一言も口をきかず、双子の子供である姉弟とは疎遠に過ごしていた。女性の依頼を請けていた公証人が、遺言として、姉には父を、弟には兄を探して封筒を渡すように伝える。父は内戦で亡くなり、他の兄弟はいないものとして育てられてきた2人は遺言に反発するが、やがて姉は父を探しに母の生まれ故郷を訪ねる。

現実に起きた中東の内戦でいかにもあったであろう出来事を背景に、その地域の習慣に立ち向かう女性の人生と、それを追いかける現在の姉弟とが並行して進む芝居。重い。とにかく重い。今の日本人にこういう芝居は書けない(書けることが幸せとも思えない)くらい重い。出てくる台詞も凄くて、翻訳は大変だったのではないか。その先に出てくる女性の言葉と、そう言えるように支えた祖母の言葉。女性の友人が吐く叫び。刃物の切れじゃない、鈍器の圧力と言ったほうが近い。最後の展開は脚本家が有名な古典劇を参照したのか、それを知らずに書いたのか、それだけは知りたい。とにかく脚本が凄い。中東がメインだけど、描かれている内容は世界どこでも伝わる。

これだけ脚本が凄いと仕上がりは脚本に負けてもおかしくないところ、演出がよかったのか(よかったのでしょう)、拮抗した。麻美れいと中嶋しゅうが引張った。さらに何役もこなす中村彰男、女性の友人として中盤を引張る那須佐代子、序盤と終盤で重要な役どころの岡本健一が固めた。姉弟の栗田桃子と小柳友がだんだん応援したくなった。役にキャスティングがはまったというよりは、役者同士の組合せがはまった印象。あと、ほとんど素舞台で現在と過去の様々な場所を上手に表現した照明と衣装がよい。観終わった直後はスタッフワークがまったく印象になくて、考え直すまで気づかなかったのは高いレベルで揃っていた証拠。

3時間10分と長くて重すぎる話なので口コミプッシュは出さないけど、今までの中では今年一番の芝居。今日の感触だと当日券も余裕あり、最悪トラムシートなら間に合うはずなので、そんなに重たいっていうなら一丁観てやるか、という人はぜひ。

<10月11日(土)追記>

観る予定のある芝居の感想は、できるだけ先入観を持ちたくないので後回しにしているのだけど、「メルマガ号外を出そうかどうか迷ったのですがやめておきました。シアタートラムで3時間15分は体力的に少々つらいのと、ある意味、ショッキングな内容なので。」とかお勧め度合いが丸かぶりだったのは苦笑。あと、高校生が観ていたらしいけど、これは高校生に見せるべきではない。事前に内容の確認もしきれないのがつらいところだろうけど、これを観た高校生の5%が人生変わってしまう。

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