二兎社「鷗外の怪談」東京芸術劇場シアターウエスト
<2014年10月25日(土)夜>
明治43年に起きた大逆事件。陸軍軍医総監として時の権力者である山県有朋から事件の扱いについて諮問を受けつつ、文学者として逮捕者の弁護に当たる平出修に裁判の進め方の相談にのる森鴎外。家庭では妊娠中の後添のしげが母との諍いが耐えない中、事件を裁く側と裁かれる側と両方に関わる森鴎外の苦悩。
江戸時代に育った母の台詞を借りて、逆説的に政府の言論弾圧やそれに対する反論の沈黙など、冒頭から露骨な現代批判。その展開に個人的には言いたい事があるけどそれについてはまた改めて書く。
ところがそういう芝居に限ってというべきか、永井愛の腕というべきか、役者が熱演して興味を引く仕上がりに仕上がる。鴎外を演じた金田明夫もいいのだけれど、後添の妻を演じた水崎綾女の気合もよい。鴎外を政府寄りに引きたてる友人賀古鶴所の若松武史の嫌味な声がいい感じで、出て行こうとする鴎外をあの手この手で説得する場面で、世のため人のため自分のためという感じのやり取りは見事。
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