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2014年12月29日 (月)

一日に二度も永井荷風を観たくない

タイトルだけ思いついていてずっと書けないでいたけ話を、まとまるかどうかわからないけどとりあえず年内に。

全国紙2014年演劇回顧記事」がまとめられていて、登録が必要ないものだけ3紙を読むと二兎社の「鴎外の怪談」がどれも取上げられていた。確かにあれはよく出来ていたのだけど、個人的には嫌な感じが残った。

たまたま同じ日に青年団の「暗愚小傳」も観ていて、昼は大正昭和で夜は明治、しかもどちらにも永井荷風が出てくる組合せになった。再演と新作との違いはあるけど、このご時勢に永井荷風が出てくるなら政府の弾圧的な態度を責める要素があるに決まっているし実際に「鴎外の怪談」はそういう芝居だった。

それが嫌でタイトルだけ思いついたのだけど、何が嫌かというところがずっとわからなかった。最初は、今の批判を昔の話に託しているのが嫌かと思ったのだけど、じゃあ真っ向勝負で現代批判をすればいいかというと、それでも多分同じ嫌な気分になりそう。なら演出が不適切だったかというとそんなことはなく、笑えても真面目でも感想は変わらない。

それでようやくこれかも、という感覚を見つけて、それは何かといえば、批判していることが嫌だった。もう少し細かく書くと、批判の対象が偉すぎる場合に芝居の内容で批判して、芝居中の登場人物はさておき、芝居を上演する側にこれは自分の問題、自分も関係ある、という雰囲気が漂っていなかったのが嫌だった。

単なる自分の妄想と言われればそれまでだし、ならば精魂込めた芝居に匿名のブログでケチをつけているお前は何様だという話もあるのだけど、それは一旦置いておく。

さらに細かく書くと、出てきた現象(ひどい政治と政治家)を責める脚本は、二条河原の落書と何が違うのかという話。封建時代ならいざ知らず、民主主義の21世紀の日本で、そこだけ責めてどうなるのか。そっちじゃない。この何十年間、選挙は正しく運営されてきた。解散に不意打ちはあったとしても、いつ解散してもいいと法律で決めているしそれは中学校でも習ったのだから正しい運営の範囲内。それで政治と政治家が悪ければ選んでいるほうが悪い。あるいは、もし自分がそれを悪いと思っていて、他の人が良いと思っているなら、そういう価値観が幅を利かせてきたのはなぜなのか。昔にそっくり同じことがあったなら、今またそっくりなことが起こるのはどうしてか。

問われるべきは個人で、客席のこちら側に座っているひとりひとりじゃないか、そこを無視して単に観客を笑わせてちょっと憤慨させてくすぐって、批判したつもりになられても、というのが最初に嫌だと思った感覚の正体に近い。「鴎外の怪談」では賀古鶴所の役にそういう含みを持たせたのかもしれないけど、薄い。

ちょっと前に「状況倫理と絶対倫理と説教芝居と芝居の強度について」というエントリーを書いた(今読み返したら我ながらとても読みづらい)。言いたいことは似ている。そっちのエントリーでは対象の芝居が井上ひさしだったので「庶民」という単語を使って説明しているけど、庶民という単語自体にすでに「日常の生活以上のことはお上にまかせて無罪放免」という雰囲気が込められているのでよくない。庶民禁止。庶民じゃなくて、市民、英語のcitizenで多分あっていると思うけど、社会を構成する一員として自立して適切に振舞うことが期待される市民の存在が民主主義の前提であるにも関わらずその自覚が私たち(と言っていけなければ私)に足りないのではないか。批判するなら現象としての政治や政治家でなく原因である個人の思考パターンや行動パターン(あるいは思考停止)を批判するべきではないか。

平田オリザは日本嫌いを芝居でも(これとか)当日パンフでも本でも書いていて、でも日本が没落しても自分たち個人がその没落に付合う必要はない、とも書いているからそういう問題に対する立ち位置に自覚的だと思う。もう日本と日本人の批判をして直ることを期待するのは諦めたから分かるやつだけ観てくれ、くらいか。でも「鴎外の怪談」では、申し訳ないけど、そういう個人への批判に関する立ち位置を読取れなかった。「見よ、飛行機の高く飛べるを」では、モデルはさておき、登場人物は無名な人ばかりだったのでもう少し個人への辛辣な描写が多かったのだけど。

嫌な感じだった、という中身を無理矢理言葉にするとこんな感じ。

<2015年1月7日(水)追記>

リンク先が間違っていたので修正。

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