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2014年12月 7日 (日)

てがみ座「汽水域」シアタートラム

<2014年12月6日(土)昼>

日系二世の父とフィリピン人の母との間に生まれて、海に流れ込む河口の近くの村で育ち、家業と漁を手伝って暮らす兄弟。日本の援助で貿易港を建設するために立ち退きを迫られて対立する村人たち。立ち退き拒否派の筆頭である両親と、村から出て日本に行くことを考える長男、それに関わる人たちの行方。

初見のてがみ座は、フィリピン人の家族を描きつつ、そこに大なり小なり関わる日本人と日本の悪い面を描いてしかもある種の美しさの残る話。地理も時間もスケールが大きくて粗筋まとめも一苦労、描いていることは具体的なのに具体的な美術を抽象的に切替えてフィリピンと日本とを切替える手際など、力作。

必要なさそうなのに、実はかなり役者に身体能力を要求するあたりも含めて、ぱっと見では全然似ていないけど、言葉遊びのない野田秀樹を想像した。脚本と演出がかなりいい感じで噛み合ったか。最初劇場に入った瞬間にスズナリでやれよと思ったけど結局は良くできていた美術、美しさの演出に重要だった照明など、スタッフワークもよい。

初見の劇団を観る場合は知らない役者を知るのも楽しみのひとつだけど、幅広い年齢層でよく集めたとはずれなしの好印象。特に山場をひっぱった母親役の大西多摩恵と、明らかに悪人役だけどどこか気になる日本人ブローカーの笠木誠は目を引かれた。無名塾と第三エロチカの出身。まだまだ知らない名手は大勢いる。

日本人の個人の良くないところについてはだいぶ色々考えられるようになってきたけど、直近の日本の企業組織が下した決定の良くないところについてはまだ考えがまとまらない。それで「頑張った」人たちの成果を良くも悪くも享受している自覚はある。なので物語のそこについての評価は保留。でもあと何回か劇団を観たいと思わされた。

左端が切れて脚本家と演出家のコメントがまともに読めない当日パンフをよしとした制作だけは駄目だししておく。仮にも千秋楽だから直す時間はあっただろう。

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