TBS企画製作「真田十勇士」赤坂ACTシアター(若干ネタばれあり)
<2015年1月10日(土)夜>
大阪冬の陣を控えて豊臣方に呼出された真田幸村。途中で加わった流れの忍びを加えて十勇士とともに参戦する。大阪城の一角を守備して名を挙げたものの、家康の講和戦略の前に苦労は戦塵と化す。十勇士たちの思惑も乱れる中、情勢を一度にひっくり返す策を巡らせる。
脚本とキャスティングだけなら劇団☆新感線のところ、演出に宮田慶子が入って若干違うノリに。チャンバラはまとめてたっぷり、それ以外の台詞の場面を、ここはいのうえひでのりならボケるという箇所もドラマ優先で。そのため、若干もたつく場面もあったけど、それを差引いて余りある雄大な芝居に仕上がった。
上川隆也の真田幸村は格好良くて華があって殺陣が決まるのに台詞も届いて、誰が何と言っても文句なしの演技。1日2回公演の後半なのにあれだけ動けて今年50歳とか信じられない。その向こうを張る里見浩太朗の徳川家康は瞬間的には上川隆也も霞む迫力満点貫禄十二分で、これで大河ドラマを観たいと連想してしまうくらいの説得力。他にもいい人は大勢いたけど、挙げないわけにはいかない気品ある淀の方の賀来千香子と、忍びの頭領らしい如才なさを魅せてくれた服部半蔵の山口馬木也を挙げておく。
完全ネタばれを避けて中途半端な書き方になるけど、途中で「生きろ」と言って登場人物を逃がそうとして、その逃がそうとする先がとある遠い場所であるあたり、中島かずきがどのくらい意識して書いたのかわからないけど、すごい今っぽいメッセージで、「獣の柱」を思い出した。初演が同じくらいの時期であるところに両者の同時代のシンクロを感じる。
言うまでもなくスタッフワークも充実していたのだけど、あの3段の床をベースにした切替の早い美術は鮮やかだった。演じる側は傾斜がきつかっただろうけど、あれは見易さと格好良さにかなり寄与していた。
物語の最後は、「な、何だってー」と言いたくなるオチがついて、ここで下手をすると台無しになりそうなところ、気合でねじ伏せた演出と上川隆也の勝ち。カーテンコール2回目からほぼ全員のスタンディングオベーションで、そうしたくなる気分もわかる。
安いとはいえないチケットだけに1階後方隅と2階後方は空いていたけど、当日券でも良席が取れたのでいろいろ余裕があったらお勧めしたい。コツは、SS席(真田シート)ではなくS席の前方席を狙うこと。舞台が高いのでやや引いたほうが全体がキレイに見える。
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