青年団若手公演+こまばアゴラ演劇学校"無隣館"「南へ」こまばアゴラ劇場
<2015年2月28日(土)夜>
とある客船。日本から載ってきた日本人乗客たちが、途中いろいろと島に寄りながら、南の島を目指す。南の島を目指そうとする割には落着いて高揚感が少ない。あと3日で目的地に着く日の、午後の甲板を舞台に交わされる会話。
Bチーム。これまで観てきた平田オリザの他の芝居に比べると、いろいろな情報を隠したまま(もちろんヒントは先に出している)進めて、終盤で一気に動かすというちょっと毛色の違う構成。その分、前半4分の3くらい、いつにも増して地味な舞台が進む。観終わったあとはそれなりに満足はしたけれど、脚本の密度が最近のものに比べて低いというか、正直、もう少し時間を縮めるような演出をしてほしかった。劇場を斜めに使った舞台で、思いっきり見切れの上手席だったから暇に感じた場面は多い。下手の階段を自由に使いたかったのかもしれないけど、それにしてもちょっと上手席にはスパルタすぎる。せめて「東京ノート」をやったときのような真横で抑えてほしかった。
バブル真っ只中の1990年が初演で、「バブル経済が、あのまま極限まで進んだ仮想の未来」を想定したそうだけど、今これを上演したら今の話になる物語。それがここまで世相にはまるのは、平田オリザの先見の明、ではなく、四半世紀経ってもまったく日本人が変わっていないことを嗤われているような印象。ただ、iPodを持っていたから現在(または現在から見た仮想の未来)を舞台にした上演、と断言した上で私見を書くと、たとえ乗客を金持ちと設定してもクルーの設定が理由でこの仮想の未来は仮想のままになってしまうよな、と思う。そこを書換えると脚本が成立しなくなってしまうのが残念。
倦怠感の漂う乗客、という設定の中だと働くクルーが目立って、藤松祥子がいい感じだったけど、会話から想定されるプロフィールなら訛ってはいけなかったと思う。あれだけもったいない。
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