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2015年4月20日 (月)

再録:チラシから予想する芝居の出来について

前のエントリーでチラシの話題を挙げたので、まだ載せていなかったこれを再録します。他にも理由はあるのだけどそれは後で。

<ここから再録>
芝居を観るかどうかは、大原則として、脚本家、演出家、役者で判断します。それに勝る判断材料はありません。だけどたまには開拓精神を発揮して無名の公演を観ようかどうか迷ったとき、その芝居の出来を私が予想するための材料です。

以下は本チラシを対象としての話です。重要度は7番以降より6番以前の方を重視すること以外、順不同です。

(1)表面に必要事項が記載されている
必要事項とは、芝居のタイトル、上演団体名、会場名、公演期間、脚本家と演出家の名前(原作がある場合は原作者名も)、チケット代(複数席種ある場合は全部)。役者は必ずしも表面に載っていなくともよい。上演団体名、チケット代、会場名は両面に載っているのが好ましい。

無いほうがデザインはすっきりするが、必要事項をきれいに見せるのもデザインのうち。例外は、2つ(以上)折のチラシ。この場合は、中面や裏面に必要事項が記載されていても構わない。(9)も参照。

(2)裏面に直接の関係者が漏れなくクレジットされている
表面に書いてあっても、裏面でまとめているのが一般的かと。直接の関係者とは、脚本家(原作者がいる場合は原作者も)、演出家、役者、舞台監督、照明、音響、美術、宣伝美術(写真家がいる場合は写真家も)、制作者。他に衣装やメイクや映像などもっといる場合もあるが、とりあえずこれくらいは。ロビースタッフまでは求めない。

(3)表面か裏面に、公演事項か記載されている
公演事項とは、タイムテーブル(文字だけのものは疑ってかかる)、会場までの周辺地図、前売り開始期間と前売り購入先(の問合せ番号)、上演団体の問合せ先(電話番号)、ホームページのURL。

問合せ先電話番号が携帯電話の場合、新進劇団では致し方ないかもしれないが、警戒の対象とする。ホームページは、出来不出来に関わらず、いまどき持っていないのは対象外。個人的には当日券情報がほしいが、これは今のところ出来には関係しない。

(4)チケット代と上演劇場を見る
以前書いたエントリー「チケット代から予想する舞台の出来について」、「上演劇場から予想する芝居の出来について(そのうち再録します)」参照。

(5)制作者名を見る
個人が専任であること。兼任している、または団体名になっているところは警戒する。

(6)広告の有無を見る
フェスティバル参加作品でのフェスティバルの広告なら平気。正真正銘のスポンサー公演ならクレジットに留まっていることが条件(製品の宣伝まで入るのは好ましくない)。全く関係ない店の広告が掲載されていたら避ける。

(7)表面と裏面のバランスを見る
表面だけかっこよくて裏面は適当な文字情報のみとか、表面はお笑い系なのに裏面は重たいとか、ちぐはぐな場合は避ける。統一感を確かめる。

(8)手間、金のかけ方を見る
これは見ればわかる。わからなくても、チラシの束を何度ももらっていればわかるようになる。「とりあえず作った」雰囲気が漂う場合は避ける。(7)と密接に関係する。

(9)チラシの形を見る
定形外だったり、B5未満の小さいサイズで折っているものは警戒する。

(10)役者の顔写真が入っているか見る
ひとりひとりの顔写真が掲載されている場合、商業演劇、芸能人出演芝居なら載っているのが当り前。逆に劇団公演なら敬遠。団体写真なら構わない。

(11)劇評の有無を見る
載っていない方がいい。載っていたら警戒する。ただし海外からの来日公演に劇評が載っているのはアリ。

(12)誤字脱字を見る
無理に探すものではないが、見つけたら警戒する。シールを貼って直している場合でも警戒する。

あとは、チラシの雰囲気と自分の好みとが一致すること。惚れっぽいひとも世の中にはいますが、一目ぼれしたチラシは読み直してもいいと思います。

(1)から(5)くらいまでは、まあ警戒理由もわかってもらえると思います。(4)はいろいろ議論もありましたが、私の経験に基づくカテゴライズです。それ以下も経験則なので、理由を問われても困ります。しいて言えば、(7)(8)(12)はチラシ(宣伝)に対する姿勢からその集団の熱意を測る。(6)(11)は箔付けを良しとしない私の好み。(9)(10)はチラシのデザインに対する私の好み、です。歌舞伎以来の伝統として、商業芝居では顔写真を入れるのは当り前になっているはずですので、それは判断対象外としています。

これに一致していなくとも出来の良い芝居はあります(そもそも「出来が良い」とは何を指すのか、というのは人によって様々になってしまうわけですが)。あくまでも「予想」であり、その予想を裏切る芝居はいくらでも存在するという前提で書いています。もうひとつ、繰返しになりますが、脚本家、演出家、役者に勝る観劇判断材料はありません。以前も書きましたが、例えば野田地図なら、上記の条件など関係なく出来に期待します。

2つの前提をご理解の上、読んでいただければと思います。

<再録ここまで>

で、これを再録したのはもうひとつ、平田オリザの「幕が上がる」の中に以下のような文章があったという理由もある。

 ベッドの上に並べたチラシは、全部で四十三枚あった。
 中西さんと二人で、どれが面白そうで、どれがつまらなそうか、一枚いちまい批評しながら並べ直していく。不思議なことに、芝居の内容は分からなくても、チラシを見るだけで劇団としてのお客さんへの態度というか、何を伝えたいかみたいなものは分かる気がする。
「そうだね。何を伝えたいかが分かるっていうか、少なくとも、『この劇団、何がやりたいのよ?』ってところは、観に行きたくないよね」
 中西さんがそう言って、二人はケラケラと笑った。

平田オリザも似たようなことを感じているのかと思ったけど、このチラシを峻別してしまう観客側の感覚、「何がやりたいのよ」っていうのは、いったいどこからどうやったら出るんだろう。最近だと「見えない雲」のチラシがそうだった。上に挙げた項目を守ればいいかというと、全然そんなことはない。それはどちらかというと最低ラインとしての条件で、そのうえさらに、チラシをもらった人を読ましめて立たしめてチケットを買わせしむための魅力の込め方がわからなくて困る。わかれば苦労しないけど、「一目ぼれ」としか書きようがない。

仕事で迷走する場合、実力不足、資金不足、納期不足の3大不足を除けば、企画がぐらつくか、企画を見失うか、どちらかが理由であることが多いけど、チラシにそれが現れるんだろうか。匿名でいいから宣伝美術(受注発注どちらでも)の経験者のコメントをお待ちしています。

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