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2015年5月17日 (日)

イキウメ「聖地 X」シアタートラム

<2015年5月16日(土)夜>

夫が自分の実家の金を使い込み風俗に入れあげたのを見つけた妻が、離婚を決意して実家に戻る。そのまま1か月が過ぎたある日、近所で夫を見かけた妻が追いかけて改装中の店舗内まで入ると、管理者が出てきて人違いで他には誰もいないと言い張る。その直後に夫が店舗の奥から出てくる。が、財布も携帯電話も持たない夫はなぜここにいるのか全く分からないと言い張り、自分の携帯電話に掛けると自分と同じ名前の男が出る。妻の兄はドッペルゲンガーを疑うが・・・。

いかにもイキウメらしいSF芝居。細かいことを言えば過去の他の作品とネタが重なっているけど、そんなことは気にせずに、笑いにまぶされて少しずつ明かされていく情報を、どきどきしながら楽しむのがよい快作。

以前は公演のたびに演技が安定していなかった劇団員だけど、今回は前作に続いて高いレベルで揃った。そしてイキウメを観るたびに何度でも書くけど、安井順平の切れが素晴らしい。一周していっそすがすがしい駄目男を演じさせたら当代一じゃないかと思う。これと、眉を八の字にひそめるのが似合う伊勢佳代との序盤の兄妹のやり取りは、ここだけもう一回観たくなる。自分が普段は芝居を観るときはあまり笑わないようにしているのだけど、イキウメの展開ではつい笑ってしまう。段ボールだけであそこまで笑わせるのがすごい。そして終始笑いを取りながら、朗らかに終わったように錯覚するけど、実はどうなったかわからないあたり、観る側の想像力が問われるところ。

さらに、このずっと後にどうなるかも、想像力が問われるところ。芝居中でも触れられていたしネタばれということもないから書くけど、たぶん、忘れられる、って言いたいのだと思う。オープニングで出てくる石としめ縄は、先人が残した石碑が忘れられた津波被害の話につなげていると推測したけど如何。

充実のスタッフワークはさらに充実して、何年も同じ劇場で上演してきているけど、以前よりも舞台美術が豪華になっていたのはとても好印象。あと、昼に観た芝居と比べると、こっちの音響のほうが舞台っぽい。

イキウメを観たことがない人にも自信を持って勧められる。芝居慣れしていない人には高く感じるかもしれないけど、このクオリティでまだチケット4000円台というのは非常にお買得。イキウメを観たことがない人にはぜひ観てほしい1本。ちなみに次回はカタルシツ名義で中島朋子をゲストに迎えて秋に公演、ますます見逃せない。

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