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2015年12月11日 (金)

パルコ企画製作「ツインズ」PARCO劇場(ネタばれあり)

<2015年12月9日(水)夜>

日本の海辺の町。日本人が大勢海外に出国するような「大変なこと」が起きてから4ヶ月。兄弟とその子供が実家に呼ばれる。長男は独身で実家住まい、次男は娘と一緒に、長女は息子夫婦とその双子と一緒に来ていたはずだが行方不明になる。実家では長男と寝たきりになった父親を、謎の若い男女が世話している。兄弟を呼寄せるメールはこの女性が出したもので、敬老の日に合せて呼ぶように父親が依頼したという。もともとそりが合わない兄弟なのに、「大変なこと」で殺気立っている次男。不安定な一同が敬老の日を迎えるまでの3日間を描く。

この面子でPARCO劇場で、さすがに派手目に振ってくるだろうという事前の予想を全力で裏切る地味芝居。毎年PARCO劇場で何かは観ているけど、この劇場で過去最高に地味。冒頭の多部未華子を観て一瞬松尾スズキの「キレイ」かと思ったけど、むしろ平田オリザの「南へ」の長塚圭史バージョン。地味なら地味なりに仕上げる工夫もあるはずなのだけど、前半と後半で雰囲気が揃わず、中途半端なバランスに。地味なことを除いても、これはさすがに首をひねる仕上がり。

情報を小出しにしている(最後まで出さない情報もある)ので、前半は地味というよりも深刻かつミステリアスに進むのだけど、「大変なこと」を警戒していた古田新太演じる次男がコロッと意見を変える場面から、古田新太の笑わせ演技が出て雰囲気が崩れた。そもそもこの意見を変える展開が脚本演出の腕の見せ所なのだけど、そこを古田新太の腕力で強引に持っていくにまかせたあたりに手抜きを感じる。吉田鋼太郎演じる長男には意味ありげな過去を匂わせつつ最後までシリアスな感じを維持させただけになおさら。「ラストショウ」とかもっとぎりぎりのバランスを保っていたのだけど。

あと、絶望を描くなら、絶望に落ちるまでの経過だったり、希望を目指して結局絶望に戻る経過を描いてほしい。最初っから絶望的で、最後まで絶望のままで、そこに何を見出せというのか。

それに関連する一番の不満は、絶望を描くのであればそこに希望も描いてほしいのにそれがまったくなかったこと。描いているのが今の日本の風刺であればなおのこと。さっさとイギリスに逃げたっていいのに、絶望の多いこの日本に留まって芝居を創りながらサバイバルしているんだろ。その留まる理由に少しでも前向きなものがあったらそれも舞台に乗せて共有してくれよ。観客だってサバイバルしているんだよ。「日本という国がどうなってもいいけど日本人がそれにつきあう必要はない」って言っている平田オリザだって、「もう風も吹かない」ではもう少し背中を押すようなことを描いている。前田知大なら「(若者に向かってこんなところに留まらずに)外の世界を目指せ」というメッセージを「獣の柱」にこめた。「大変なこと」を背景に、今の日本のいびつな状態を登場人物のそれぞれに投影したことはわかるけど、海の向こうに行く船もない、「でかした」と生まれてきた子供は行方不明になる、祖父に問いかける孫は返事を得られない、そしてあのラスト。本当に何にもないのか。それとも俺が見逃したか。であれば分かっていないやつの駄文だから流してくれ。

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