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2016年2月26日 (金)

製作環境と保険の話

映画の話ですけど、日本とアメリカとで安全に関する意識が違うため撮影を誘致できない、という話を見つけたのでご紹介。

日本では、撮影での事故に保険が掛けられるけれども
 到底、海外の映画会社やプロダクションが、俳優の安全を守れる内容ではない
と判断している。そのため
 日本の撮影保険の下で、撮影を続けるよりは、自分たちの要求水準に合致した保険契約を結べる場所で撮影をした方がベター
と考えるわけだ。
 スタッフの安全を守れない日本
での撮影は
 どうしても日本でなければ撮影できない部分のみに限定される
ことになるだろう。

で、そこで引用されているTwitterが以下。

    「日本のクルーは深夜、長時間労働が可能、おまけに残業代は入りません。エキストラも無料で用意できます」これが国のフィルムコミッションが海外に出かけて行った誘致PR(旅のお供はJTB)内閣総理大臣が閣議決定しても、日本の思考はこのレベル。税金の無駄も止まない。
    - ヒロ・マスダ / Hiro Masuda (@IchigoIchieFilm) 2016, 2月 24

    以前に紹介した『アベンジャーズ2』誘致を経験した韓国ユニットのプロデューサーのインタビュー。これを見てもいかに安全が高価で、気にしていることかが’わかる。いくら政府レベルで労働基準法無視の無償労働を宣伝しても、選考材料にはならない。https://t.co/DSijXAHHG2
    - ヒロ・マスダ / Hiro Masuda (@IchigoIchieFilm) 2016, 2月 24

そこで張られているリンク先で、安全について書かれているのが以下。消防士に看護師に専門家も待機して、現地スタッフも全員保険に加入してもらって、残業代はきっちり支払う云々。

What makes Marvel’s main shoot most different from Korean productions?
First of all, Marvel has backup plans for all shoots. They study every possible situation and make back-up plans for them. They thought much about safety beyond imagination since the film is an action blockbuster. They demanded that shooting sites always have two fire engines, firemen, special safety specialists, an ambulance and a nurse. Without such a preparation, they would not begin to shoot. They were perfect about insurance. It is fortunate that increasingly more and more staff members sign the standard labor contracts in Korea. Of course, Marvel signed all of the Korean production staff members with standard contracts and granted them the benefits of four major social insurance policies. Most of all, they made overtime payments to the nail. Their strong emphasis on safety really impressed me. They also woke up many Korean staff members who previously didn’t have much thought about safety to the importance of such matters.

何でこの話がひっかかったかというと、ついこの前「実演芸術団体のための、知らないと損する労災保険セミナー」が開催されたとfringeで見かけたから。fringeでは

フリーランスが多い舞台芸術の現場では、労災保険は関係ないと思われがちですが、本来は労働者すべてが対象で、保険の適用を広げられる可能性があります。

と説明していますけど、別に製作側で一括契約して加入してもらってもいいもののはず。というのは、キャラメルボックスはそれをやっているという記事を読んだことがあるから。その時の記事ではないけど、検索して見つけたのがこれ

特にその中で勉強になったのは、「演劇の世界では人を人と思っていない」ということでした。

現場でケガをすれば、それはケガをした本人の未熟さのせい。だから、主催者は関係ない。
(中略)
キャラメルボックスを17年やってくる中で、次々と当時のことを思い出しながら改革を進めてきました。

まず劇団員・舞台スタッフ全員を「傷害保険」に入れました。これは、なんらかのケガをした場合には全額劇団から保険で支払うことができる、 という態勢作りです。実際は、ほとんど使っていませんが、いざというときにのみ、役に立っています。 

ここで「舞台スタッフ」というのはたしか公演ごとに契約する外部スタッフも含めていて、そのために保険会社と交渉して掛捨ての保険を作ってもらった、と記憶しているのだけど、そこらへんを書いた記事が見つからないのでうろ覚え。誰か詳しい情報を知っていたら教えてください。

学生上がりの劇団で、仕込みもスタッフも後輩の学生に手伝ってもらうような状態だと保険なんて発想も出てこないけど、プロのスタッフに依頼するようになるあたりで契約すべき保険があるよ、みたいな流れが業界の常識になるとよいですね。なんといっても危ないので。

<2016年3月12日(土)追記>

キャラメルボックスの保険はAIU保険のハイパー任意労災だとコメントで教えてもらいましたので興味のある人はコメント欄と併せて参考にしてください。

2016年2月11日 (木)

緊急口コミプッシュ:野田地図「逆鱗」東京芸術劇場プレイハウス

感想はこちら。こんなチケットの高い全公演前売完売の芝居に出すのもなんだけど、最後の松たか子の声にやられた。当日券情報は感想に書いておいたのでぜひ。

少し前の野田秀樹っぽさが満載な芝居で、ということは芝居を見慣れていない人にはわかりづらいことにもなる。でもこれは他では味わえない芝居なので、野田芝居を一度も観たことのない人ならなおさら観ておいたほうがよいです。これでわからん気に入らんとなったら次回以降は飛ばせばいい。野田秀樹も当たり外れはあるので、どうせ試しに観るなら当たりのときに観るべし。

少し前の野田秀樹っぽさが好きな人には言わずもがな。だけど少し前の野田秀樹といっても後半は重苦しくなるから、どこまでもフィクションの路線を期待している人にはちょっとつらいかも。

それにしても後半のテーマ。何で昔から今まで、あれが直らずに延々と続いているんだろう。いったいいつからああなったんだろう。

野田地図「逆鱗」東京芸術劇場プレイハウス(若干ネタばれあり)

<2016年2月10日(水)夜>

日本の海岸にある海中水族館。イルカのショーが名物だったが、人魚研究者である館長の娘の肝煎りで新たな目玉として人魚ショーの導入が進められる。海中に設けた大きな専用の水槽に、水族館の下に沈んでいる古代遺跡からダイバーたちが人魚を連れてくる計画。このショーの訓練中におぼれたダイバーが夢の中で人魚と出会う。一方、娘の研究を信じていない館長は人魚役のオーディションを開催するが、そこに自分は人魚と言い張る女性が応募してくる。彼女はダイバーが夢の中で会った人魚と同じ女性だった。

粗筋を書いていると一昔前のアングラ芝居と見間違えるけど、「キル」とか「パンドラの鐘」とか、あのくらいの時期の言葉遊びや複数世界の往来がとびかう、いわゆる野田秀樹っぽさが満載の芝居。だけど後半は最近の野田秀樹。そのギャップがものすごく大きいのにぴたりと合わさって、壮大な展開になった。後半で取上げていた内容が最近の自分の興味にハマったこともあり、観終わった後に全力で拍手した。

野田秀樹の芝居に満足するときは役者が少しやり過ぎなくらい前に出てくるところを演出で上手にまとめて仕上げている印象が多かった。だけど今回はこれだけ有名どころを集めたのにアンサンブルというか、池田成志や阿部サダヲがどれだけ前に出てきても、脚本の世界観を豊かにするだけになるという不思議な感覚だった。ちなみに後半の阿部サダヲは多分今まで観た中で一番献身的な演技。

唯一目立っていたのが人魚役の松たか子で、主役なだけに強い台詞や詩的な台詞が他より集まっていたけど、その強さに負けない台詞回しで芝居を牽引して、主役を張る役者はかくあるべしというのを体現していた。野田秀樹といえば最後は主役の長台詞と思っていたら、今回それはそれは美しい詩を冒頭に持ってきて、ラストは比較的短く締めていた。そのラストの松たか子の「声」が短さを気にさせない声で、演出のすべてがそこに集約するような声だった。

あと今回はコロスが美しくて、体がよく動いてぴたっと止まれるメンバーが揃っているのに加えて、振付の井出茂太、衣装のひびのこずえと、美装の柘植伊佐夫あたりが決まった感がある。人魚の衣装に限らず他の出演者の分も含めて、あの衣装はよかった。

チラシにもサイトにも「全公演、当日券を販売します!!」と明記していて、当日券も立見込みで平日夜で50枚くらいは出ている模様なので、ここは挑戦してほしい。休憩無し2時間15分だけど、立見だとぐっとチケット代は安くなるので、体力のある人はそちらを狙うのもあり。素舞台に近い美術だから、役者が後ろ向きになってしまうことはあるけど、見切れらしい見切れはないので、買えるならどの場所でもいいから買っておくのが吉。センターが当然いいのだけど、左右で選ぶことになるなら下手のほうが親切。

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