M&Oplaysプロデュース「家庭内失踪」下北沢本多劇場
<2016年3月11日(金)夜>
定年の男と、再婚した年下の妻。二人暮らしの家に、前妻との間の娘が戻ってくる。夫が気に入らないための別居だという。夫は会社の部下を週末ごとに様子見によこして、今では一家が夕食の用意を考えるくらい来るのが当たり前になっているが、本人は一向に来ない。
初日観劇。「蒲団と達磨」の後日談、らしいが、これだけ単発で観ても大丈夫。台詞と真意との乖離が激しいのはいつもの岩松了脚本だけど、そこをいつもより匂わす親切演出。妻への好意がこじれて不信な行動に出る夫たちに対して、そんなことは百も承知であきれているが表面上は合せている妻たちとのすれ違いを何組も描いて、タイトルに相応しい怪しさ満載。登場しない人物を使って話の奥行きを見せるあたりは安定の脚本術。
部下を誘惑する再婚妻を演じる小泉今日子も、出戻った小野ゆり子も色っぽくて、出てくる女優みんなをいつもどうやって色っぽくさせるのか、岩松了に訊いてみたい。その分男性陣は情けない役ばかり。その中でも本当に失踪して見せた不審な男を演じる岩松了は楽しそう。ただ、登場人物全員が何かしら情けない人たちのはずだけど、風間杜夫と小泉今日子の2人はもともと貫禄がありすぎて、その分だけ芝居が立派になりすぎた感もあり。贅沢な悩み。
「蒲団と達磨」よりもさらに間接的な芝居で展開するので、派手でスカッとする芝居を求めている人には向かないけれど、このくらいネチネチして観客に積極的に想像力を要求する芝居は珍しいし、それで質が高いものはさらに貴重なので、ぜひ挑戦してみては如何。
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