イキウメ「太陽」シアタートラム(若干ネタばれあり)
<2016年5月18日(水)夜>
地球規模のバイオテロに遭った人類は、その細菌に適合した人種を生み出した。肉体は歳を取らず、力は強く、思考は明晰になるが、太陽の光を浴びると耐えられずに死んでしまう。彼ら/彼女らはノックスと称し夜に活動し、被害に遭わずそれまでどおりだった旧人類をキュリオと呼ぶ。旧人類からノックスになる方法が確立されたため、一大経済圏を構築したノックスが、反抗した旧人類の村を経済封鎖して10年目。ようやく経済封鎖は解除されたが、人口は10分の1にまで激減。そこに元住人で、今はノックスとなった男が訪問するところから話は始まる。
映画にもなって、同時上演企画の再演モノ。劇団員は絶好調で、ゲストもハマって、劇団の好調さをうかがわせる芝居だったけど、観ているこちらが受止めきれずに消化不良気味。
明晰な言語コミュニケーションを好んで力も強くて経済も繁栄しているけど、ノックス同士のセックスで子供が出来る確率は非常に低くて、旧人類からの養子をノックスにすることで人口を維持しているあたりは、グローバル化の影響を受けて二極化しながら人口が減っている日本で、それが太陽を浴びると死ぬのは原発事故の比喩で、いろいろ批判したい精神があるとは思うけど、それがクリアすぎて、観ていてあたった。もう少しノイズがほしい。
それでいて旧人類もあまり救いはなくて、役者は絶好調だけど、思い入れできる登場人物とそうでない登場人物とがはっきり分かれすぎ。それがあのラストを引きたてるのはわかるのだけど、もう少し、感情移入が進むようなそれぞれの正義が用意されていてもよかった。そんな中で、村の見張りを勤めるノックスとそこに通う村の青年とで、お互い隣の芝生が青い状態で意見がぶつかる場面は見所のひとつ。
これだけ文句を書いておきながら次も観るとは思うけど、脚本演出も役者も売れすぎて次が来年というのがつらい。外部の仕事の経験が実力を上げるのに役立っているのはわかるけど、この調子が続いているうちにもう少し多く劇団芝居をやってほしい。それが贅沢だというなら、せめて年1回の公演は維持して解散はしないでほしい。お願いします。
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