青年団「ニッポン・サポート・センター」吉祥寺シアター
<2016年6月30日(木)夜>
行政から管理運営を委託された拠点でNPO団体が運営する、行政だけでは手が回りきらない様々な相談を請負う、地方都市にあるサポートセンター。運営委託先の更新時期が迫る時期に、創立メンバーの家族が事件を起こして逮捕され、委託されている拠点の継続が危ぶまれる。そんな中でも、実習生を受入れ、地域のボランティアの助けを借りながら、職員たちは持ちこまれる相談の解決に奔走する。
行われていることは実に立派な人助けでありながら、それだけに一筋縄ではいかない相談が多く、ささやかな相談がいつの間にか世界の問題につながるようなこともある状況の中、サポートセンターを運営する職員やボランティアの間に経験や立場や権限の違いはありつつも問題があれば協力して立向かう、けどその職員やボランティアが大小さまざまな問題に直面して本当に助けが必要なのは誰なんだ、と何本も伏線を張って展開する脚本は期待を裏切らない出来。
これぞ青年団というくらい主要な役者が勢揃いしていて、芝居の設定からは人をいくらでも増やせるので混乱はなかったけど、さすがに出番には長短あって、贅沢を通り越してもったいないとは思った。久しぶりにあの役者この役者が観られてうれしいなかで、車椅子の役は大塚洋でいいのかな、自然に思えていた青年団の演技も全力で演技していたんだと改めて思わされるような不思議な発声だった。
たくさん伏線を張って、最後には3つある部屋それぞれの「相談」の結果を見せないで終わるのは今までより乱暴だけど、先のわからない終わり方というのがこの芝居に向いているし、世の中の方向が見えない今っぽい。俺は誰の最後も見届けられなかった、って惑星ピスタチオの「ナイフ」を思い出した。現代の一面を確実に切取った名作。
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