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2016年12月14日 (水)

劇団要るのか要らんのか

新国立劇場の取材レポートで面白いことが書かれていた。この取材に取材対象者のツイートをつけ加えたところがしのぶ氏のさすがのセンス。以下は谷賢一のツイート。

劇団ならまた別なんだよね。運命共同体だから周囲も必死で手を差し伸べる。しかしプロデュース制が主流の今、俳優は自力で向上・孤軍奮闘せねばならぬし、養成所の彼らもこの先は自力で役をもぎとっていくしかない。周囲を蹴落としてでも勝つしかない。そういう時代になっちまった。

それが本当にいいことなのか? と言うと、わからないんだ。プロデュース制というやり方は競争原理という観点からは合理的かもしれないが、冷たい。それだけで人は育たない。しかしそういう冷たい競争に俳優は晒されているということは厳然たる事実だ。

この話はもう少し演繹すると、日本社会に蔓延る自己責任論・新自由主義的発想に対する反論に繋がっていく。競争は必要かもしれないが、それだけで全て解決はできない。すぐ結果を出せと言い過ぎると人材はむしろ枯渇する。

この点は海外の事情と比較するとよくわかって、"Do not give other actors notes"って言われるそうな。

give notesは日本でいう ダメ出しのことで、「他の役者にダメを出してはいけない」、あるいは 「役者同士でダメ出ししてはいけない」って感じだろうか。 Keoはあくまで「このクラスでは」と限定していたけれど、 このルールはクラスだけでなく実際の芝居の稽古や撮影の現場でも常識っぽい。

ニュアンスがちょっと微妙なんだけれども、役者同士でアイディアを出し合って、 何か作っていって演出に見せる、というのは全く問題がない。 ダメなのは「こうした方が良いよ」みたいに価値判断を入れたり、 「こうしてくれると自分がやりやすいんだけど」と注文をつけること。
(中略)
日本での現場の慣習がどうなのかについては十分な知識を持たないんだけれど、 いつも一緒にやっている劇団だとか、あるいはかつての映画制作会社のように 気心のしれた監督と主要役者のチームであれば、判断基準がある程度統一されているため、 こういうことにあまりシビアでないかもしれないな、という気はする。 というのも、今、『役者は一日にしてならず』という ベテラン役者さん達のインタビュー集を読んでて、 そこにしばしば現場で役者同士稽古をつける、みたいな話が出てくるので。 その前に『Actors at Work』という、 こちらはハリウッドやブロードウェイで活躍する役者さん達のインタビュー集を読んだのだけど、 現場で他の役者から教わった、という話は無かったように思う。

自分が芝居を観始めたころはまだ劇団花盛りな時期で、今活躍している人たちのキャリアを調べるとどこかの劇団出身であることが多い。今年の大河ドラマなんて脚本家からして東京サンシャインボーイズですよ。

別に芸能界に限らず自分のことを考えても、右も左もわからない新人として会社に入ってから今に至るまで過ごせたのは会社という組織抜きではありえない。いきなりフリーで活躍とか無理。1年目から活躍するできる新人もいれば、10年経ってみたら必要不可欠なキーマンに化けたり、そうかと思えば腐って埋もれていく人もたまにいるので、本当、人材育成ってのはわけがわからない。ただ、やらかしても致命傷にならない環境、分からないときに聞いたり議論できたりする環境で何度か機会が与えられることは非常にありがたいものだとは思えるようになった。

もうひとつ、どこで読んだか忘れてしまったのだけど、「今の英語圏は母集団が大きくて代わりがいくらでもいるのでアメリカなんかではすぐにお払い箱にできるのであって、日本で同じルールで運用したら駄目になる」って意見。それにも一理あると思う。結局どのルールも一長一短あって、どの長を採ってどの短を我慢するかは自分たちで決めないといけない。

で、劇団という組織は、中の人間には弊害もあるけど、それ以上に利点もあるんじゃないかって気がしてきました。そもそも大多数の劇団が野良劇団なのですけど、それでも。

最後に笑った一言。もうちょっと多くてもいいと思う。

 宮田:上村さんや私は劇団育ちだから「まずはセリフ一言からだよ!」という思いもあります(笑)。

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